12月14日、東京モノレール「ご乗車20億人達成記念」セレモニー、HKT48のメンバーと東京モノレールの小栗彰社長(中央、尾形文繁撮影)

12月14日(木)、東京モノレール羽田空港第2ビル駅の一角で「ご乗車20億人達成記念」の感謝セレモニーが行われた。

イベント内ではイメージキャラクターを務めるHKT48・AKB48兼任の宮脇咲良と兒玉遥、HKT48メンバーの矢吹奈子と松岡はなが登壇。東京モノレールの小栗彰社長や来賓とともにくす玉を割り、11月24日に達成した累計乗車人数20億人を祝った。

”独特な”川柳を披露

くす玉割り直後には、ビデオメッセージでHKT48支配人の指原莉乃が登場。「20歳限定!東京モノレール 無料デー」を成人の日に絡めた来年1月6日から1月8日の各日で実施することを発表した。

壇上のHKT48メンバーの1人、宮脇咲良は来年新成人。この発表に対し、「新成人を代表して、ありがとうございます。新成人の皆さんは無料と聞くとすごくうれしいと思うので、これをきっかけに地方の方も東京に遊びに来てもらえるとうれしいです」とコメント。一方昨年成人を迎えた"先輩"の兒玉遥は「(成人は)去年だったのに」と少し悔しそうだった。


矢吹奈子が東京モノレールへの想いを込めて詠んだ川柳(撮影:尾形文繁)

無料デーのほかには「東京モノレール 20億人達成!ありがとうキャンペーン」が実施される。第1弾は早速12月15日から「東京モノレールよいとこ川柳」を募集する(来年1月8日まで)。川柳の募集は「モノレール部門」と「思い出部門」に分かれ、「モノレール部門」は「モノレール」の文字を入れて五・七・五を作るもの、「思い出部門」は東京モノレールとの思い出や好きなところを句の中に入れるものとなっている。

登壇したイメージガールの4人も早速川柳を発表。東京モノレールのPRを思い思いに行った。中でも矢吹奈子は「東京の自宅に帰るときもモノレールが使いやすいし速いのでよく使います」と言い、「20億 その中の奈子 50人」という独特な川柳を作っていた。

さて、累計乗車人数20億人を達成した東京モノレールだが、これまでの道のりは決して平坦ではなかった。

東京モノレールはもともと、東京オリンピックを目的にやってくる羽田空港利用者の輸送のために1964年に開業した。はじめこそ物珍しさもあって1日あたり約5.5万人を輸送していたものの、オリンピック終了とともに乗客は大きく減り、1日あたりの利用者は少ない日で約2000人まで落ち込んでしまう。


乗車20億人を達成した東京モノレール(撮影:尾形文繁)

これにより経営が行き詰まりかけ、モノレール建設に大きく携わった日立製作所グループ傘下に入り、日立運輸(現:日立物流)・西部日立運輸と3社合併をした。その後1970年代にようやく経営が軌道にのり、1981年には日立運輸から子会社として分離独立した。1993年に現在の羽田空港第1ターミナルが開業すると、1日平均で約18万人が利用するようになった。それに合わせて年々輸送力を増強していった。

しかし、1998年に京急電鉄が羽田空港(現:羽田空港国内線ターミナル)駅まで乗り入れると状況は一変。京急に羽田空港輸送のシェアをじわりじわりと奪われ、逆転されていった。さらに2000年代になって空港連絡高速バスの路線が大幅に増えると、さらに羽田空港への輸送シェアは落ち、2005年にかけて年々乗客数を減らした。

そして経営面でも再び危機を迎える。1993年のターミナル移設に伴う路線延伸に際して発生した建設費の利子返済が重くのしかかり、親会社の日立物流にとって中核事業と直接関係のない東京モノレールの存在は重荷になっていた。

日立からJR東日本の傘下に

2002年に日立物流は東京モノレールの株式をJR東日本などに売却。東京モノレールはJR東日本の子会社になった。JR東日本は京浜東北線で昼間運行される「快速」の停車駅に浜松町を加えたのを契機に、同駅の乗り換え通路の改善や金融面からの支援を行った。東京モノレールでも運行列車のワンマン化をはじめ、JRと連携した企画乗車券の発売、快速の運行開始をはじめとした速達化などの施策を講じた。


HKT48がモノレールの乗り場を案内する(撮影:尾形文繁)

広告・宣伝活動では2004年頃から有名タレントを起用した広告を作っていた京急に対し、東京モノレールは後れをとっていた。そこで2007年には「空港快速」運行開始に際して大々的な広告・宣伝活動を行い、「待たずに乗れるモノレール」をPRした。

このPRによって一時は乗客が増えたものの、京急空港線の輸送力の大幅な増強も相まってその後は横ばいとなり、現在の利用者数は1日あたり約13万人にとどまる。京急やバスに奪われたシェアを回復するまでには至っていない。

こうした厳しい状況下だが、幸いなことに、東京モノレールでは今後あまり大きな投資を伴う事業が予定されていない。インフラ部分も耐震補強がちょうど終わり、現在は浜松町駅周辺の再開発と乗り換え通路の改良工事が行われている程度だ。全体の4割を占める定期客は天王洲アイルを中心にしっかりついている。残る大きな課題はやはり羽田空港への輸送シェアの回復となる。


HKT48を起用した東京モノレールの広告(左)の右側は京急の乗り場がある(撮影:尾形文繁)

東京モノレールでは「ビジネス利用のお客様が多く、若年層のお客様は少ない」(東京モノレール・営業課)という利用実態と、空港連絡という立ち位置を鑑み、若年層と地方の人々への広告・宣伝を重要視することにした。そこで、「羽田空港を利用する人が多い福岡で影響力のあるHKT48をイメージキャラクターに採用した」(同)というわけだ。そうすると今回のような力の入ったセレモニーとキャンペーンの実施もうなずける。

広告・宣伝に力をいれるのは京急も同様だ。羽田空港では人気お笑いコンビの有田哲平と上田晋也が登場する京急の広告と東京モノレールの広告がお互いをけん制し合うように貼られており、まさに「激戦」の様相を示している。しかし、人気アイドルグループHKT48を起用している東京モノレールの方がマスコミ動員の面では強そうに思えた。

これからの「挑む」活動に注目

セレモニー内でAKB48・HKT48兼任の宮脇咲良は今年の漢字に「挑」を選んだ。「今年は自分のなかなかできないことに挑戦する1年だった。納得していない部分もあるが、挑戦して得られたものはたくさんあったので、挑戦してよかったと思う」と振り返る。

先ほど述べたように利用者はここ数年横ばいだ。東京モノレールも広告・宣伝の結果としては宮脇咲良と同様に「納得していない」部分もあるだろう。しかし、今後もこうしたイベントや広告・宣伝を続けていくことにより、認知度が上がり、利用者増という結果が得られるのではないだろうか。

特に今回の乗車20億人達成にあたっての一連のイベント・キャンペーンはターゲットとしている若年層に対して、格好の広告・宣伝の場となる。小栗彰社長は路線の魅力に「楽しさ」を挙げていた。東京モノレールの車窓は独特の視点から眺めることができて確かに楽しい。まずは無料でもいいので乗ってもらい、楽しんでくれればリピーターになってもらえるかもしれない。そういった意味では無料乗車デーは「挑戦的な」イベントでもある。