キャリアも幸せな結婚も、そして美貌も。

女が望む全てのものを手にし、したたかに生きる女たちがいる。

それは、東京の恋愛市場においてトップクラスに君臨する女子アナたちだ。

清純という仮面をかぶりながら、密かに野心を燃やす彼女たち。それは計算なのか、天然なのか。

そして彼女たちはどうやって、全てのモノを手にしようとするのだろう…?

局の絶対的エース橘花凛と同期でありながら、地味枠採用の田口レミ。後輩のカマトト女・木崎翔子と花凛の笑顔で蹴落としあう対決や、花凛の本性を目の当たりにするが...




女にとって、キャリアとは何なのだろうか。

キャリアと言えるものが全くないのも悲しいが、あまりにも凄すぎると男性から敬遠される。

一番の理想は、男性に生活を支えてもらいながら、自分の好きなことをして稼ぐこと。

それが羨望の眼差しを向けられる職業であったり、社会的に認められている仕事ならば最高だ。

だから私は、女子アナを辞められない。人から見られ、憧れられ、そして稼げる。女にとってこれ以上好都合な仕事が、世の中にあるのだろうか。

そんなことを考えていると、隣で花凛が呟いている。

「今の時代、目の前にある仕事だけこなしていても将来潰しが効かないわよね...」

花凛の手元には、一冊の雑誌がある。その中には、元局アナでフリーになり、最近はグラビアにも挑戦している一人の女子アナが写っていた。

「私たち、いつまで第一線でテレビに出続けられるのかな...」

花凛の一言に、急に不安に襲われる。私たちは、いつまで“女”を武器に戦えるのだろうか。

その武器がなくなった時、ちゃんと幸せになれているのだろうか…。


女は強欲な生き物?女が求める幸せとは


女は欲張りな生き物だから


花凛の言葉が引っかかったまま、その晩私たちは『恵比寿 米ル』へと一緒に向かった。




今日も航平と幸一郎、そして私たち二人の四人で食事をする日だ。

最初、私は航平に心を奪われていたが、花凛への対抗心から、私の狙いはいつの間にか幸一郎に変わっていた。

「え〜!幸一郎さんのお父様は、そんな意外な一面もあるんですかぁ?」

目の前で、花凛が幸一郎の話を聞きながらキャッキャっと笑っている。そんな面白い話でもないとは思うが、幸一郎も嬉しそうに話を続けている。

そんな2人を見ている時間が長くなればなるほど、私は何としてでも幸一郎を花凛から奪いたいという衝動に駆られてしまう。

「二人は、どういう男性がタイプなの?」

噂で遊び人だと聞いたことはあるが、幸一郎はたしかに女性慣れしているのかもしれない。ふと、そう感じた。

「え〜私、タイプがないんですぅ。優しくて、尊敬できる人かなぁ?」

当たり障りのない、 つまらぬ回答をする花凛。

容姿に関してはノータッチ。目の前の男性に当てはまりそうな、無難な答えにするのが鉄則だ。

すかさず、私は幸一郎に尋ねた。

「でも幸一郎さんは有名人だから、色々大変ですね。お付き合いする女性も選ばないといけないでしょうし...」

名家に生まれた宿命で、結婚相手を決めるには、本人だけではなく周囲の意志も尊重しなければならないだろう。

「幸一郎さんの好きな女性のタイプをお伺いしてもいいですか?」

「普通の子、かな。」

「えぇ〜意外!でも、幸一郎さんが求める“普通”は普通じゃない気がしますぅ。」

ワインで少し顔が赤くなっている花凛が大げさに驚く。

ちなみに“お酒は好きだけど、弱いんです♡”と公言している花凛だが、実はお酒に滅法強い。

酔っ払っている姿を見たことがないし、新人研修の打ち上げの際に、“芋はロックが美味しい”と、ひたすら芋焼酎をロックで飲んでいた姿を私は忘れられない。

「芸能人とかモデル系とか、実は苦手なんだ。家のこともあるからスキャンダルになりそうな女性は避けたいし...どちらかと言うと控えめな子がいいかなぁ。」

思わず、私の顔から笑みがこぼれた。
花凛の笑顔は、ひきつっていた。


しかし二番手の女は永遠に二番で終わる?


どうしても他人の物が欲しい二番体質の女


「二人は、結婚しても今の仕事を続けるの? 」

不意に幸一郎に尋ねられ、私たちは揃って答えた。

「もちろんです!」

珍しく、私と花凛の意見が一致する。結婚しても、仕事は続けたい。

お金のためだけではない。働くのは好きだし、自分の存在意義を確認できる。何より、自己顕示欲が満たされる。

女は“永遠の”美しさを求めるが、欲しい物はそれだけではない。

お金も、権威も、人気も。
女は、全てを求める生き物なのだ。

社会的地位の高い男と結婚することで得られるステータスと、安定した良い暮らし。メンテナンスを繰り返して維持する美貌。

そして自分が自分らしく輝ける場として大切な、仕事。何かが欠けても、ダメなのだ。だから私たちは全てを手に入れたい。

しかも女子アナの場合、結婚することがキャリア的にプラスとなる。“自己ブランディング”を考えると 、結婚・出産は大きなメリットとなるため、私たちは必死なのだ。




しかも幸一郎と結婚したら、“名家に嫁いだ女子アナ”として大きなアドバンテージを得られる。

永遠に二番手の私でも、幸一郎と結婚したら一番になれる。

自分の実力ではどうにも覆せぬことも、女は“結婚”という最後の切り札を使い、番狂わせを起こすことができる。

「女子アナの場合、辞めても特番の司会をしたり、結婚式の司会とかして稼げるもんなぁ。」

隣に座っていた航平が、一人で納得した声を出している。

「でもね、私みたいなタイプより、派手さはない代わりに細く長く仕事ができる、“二番手”のアナウンサーの方が、生き残れるのよ。」

一生安泰ではないが、長い目で見れば私の方が良いキャリアを築けそうだ。

「レミちゃんは、自然と“サブ”的なポジションに回れるから羨ましい♡」」

花凛の言葉に、私の胸はチクリと痛む。たしかに、昔から学級委員ではなく、書記や副キャプテンに任命されることが多かった。

永遠に二番手の私。
だからこそ、私には結婚という最後の砦にすがるしかない。

食事を終えて花凛と私は二人でタクシーに乗りこむ。家が近い花凛が先に降りようとした際、彼女の甘い香りと共に私に一言残していった。

「レミちゃんは、永遠の二番手だから。むしろ、二番の方が似合うよ。」

一瞬、何が起こったのか分からず、私は発車したタクシーの中でぼうっとしていた。しかし状況が分かり始め、私の頭の中はどんどんクリアになっていく。

これは花凛からの宣戦布告だ。

永遠に二番目のポジションである、二番手体質の女。そして、一番でないと気が済まない姫体質の女。

女として、女子アナとして。負けられない戦いが始まった。

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幸一郎を巡って新たな戦いが始まる。醜い女の争い