【スタッドレスタイヤ試乗記】ブリヂストン「ブリザックVRX2」 乗り心地はソフトなのに、モリモリと雪を掘り進むガッチリ感がある:山田弘樹

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こりゃあすごいスタッドレスが出たモンだ!

今年の2月にブリヂストンの新作「ブリザックVRX2」を試して、とにかくそのグリップ力の高さに驚いた。そもそも雪上・及び氷上がターゲットとなるスタッドレスタイヤにとって、その性能向上目標に果てはない。つまり究極は夏タイヤのように雪上を走れるようになるまでは、どこまで開発をしても終わりはないのだが、それは机上の空論だ。


しかしこのたびブリヂストンが出した「ブリザックVRX2」の進化は、思わず笑ってしまうほどすごかった。まるでポテンザのハイグリップタイヤをリリースしたかのように、著しい進化を遂げてきたのである。


ブリザックで最も特徴的なのは、そのコンパウンドに氷上性能面で効果の高い「アクティブ発泡ゴム」を搭載していることだ。これはブリヂストンが長年研究し続けている技術であり、今回はこれがアクティブ発泡ゴム"2"へと進化した。


発泡ゴムとは文字通り気泡をはらんだゴムのことであり、これが路面に接するときに氷とタイヤの間に入った水の膜を吸い上げる。そう、氷は闇雲に滑るのではなく、これが溶けてできた水がタイヤを滑らせるのだ。日本をはじめとした温暖傾向のある積雪地域でスタッドレスタイヤが使われるのは、こうした"ぼた雪"がタイヤで磨かれ、アイスバーンができるから。そしてこのアイスバーンが気温の上昇やタイヤの駆動摩擦、クルマの熱によって溶け出すからである。

そんなアクティブ発泡ゴムの進化について話すと、そのコンパウンドには気泡だけでなく、細長くて太い水路も内包されている。そしてこの気泡と水路の表面には親水性のコーティングが施されており、氷上の水を弾かず吸い込む工夫がなされている。

またそのゴムには前作よりも粒子が細かくなったシリカと、「摩擦力向上剤」を増量。これが発泡ゴムのしなやかさと相まって、低温時でもしっかりと路面をつかむようになった。


路面をつかむという意味では、トレッドパターンも進化した。夏タイヤのように「左右非対称パターン」を採用するのは従来通りだが、従来よりも横方向の溝(ラグ溝)を増やした「マルチアングルグループ」を採用し、ひっかき性能を向上。またサイプの間隔を見直すことでブロックを大型化し、その倒れ込みを抑制した。氷上でもトレッド面の変形を防ぐことで、滑りを抑制できるのだという。またトレッド面の変形が防げることで、その耐摩耗性は従来比22%も向上したという。


この他にもトレッド表面に微細な凹凸を与えることで(マイクロテクスチャー)、発泡ゴムの効果をより高めるなど工夫がなされている。

こうしてできあがった新型ブリザック「VRX2」を走らせた印象が、冒頭のひとことだ。


今回ブリヂストンが最も強くアピールしたかったのは、従来比で10%短縮したという氷上ブレーキ性能だと思うが、これはハッキリ言って想定内。従来型と比べて新型の性能が悪くなっているはずなどないのである。

実際VRXでもそのブレーキングに対してシッカリ立ち上がる制動力が、VRX2ではより制動Gを増していることがABSの効き方、その作動間隔が細かくなっていることで体感できた(車速は25km/hで比較)。

面白かったのは当日、定状円旋回コースでVRX2( 法VRX(◆法VRX2のトレッドパターンで非発泡ゴム()の3種類を試せたこと。

一番性能が高かったのは当然,覆里世、それ以上にここでは滑った後の過渡特性が、穏やかで一定であることが確認できた。VRXもピーク時のグリップは十分に高いのだが、これがVRX2の滑り出す領域まで負荷を掛けると、接地性変化が激しくなり、グリップしたりしなかったりを繰り返してしまうのである。
また、は,汎韻犬らい高い旋回Gを発揮し、その操舵もきれいな弱アンダーステアを保ったまま一定舵角を保持することができるのだが、いったん慣性でタイヤが滑り出すと、トラクションが掛かりにくく滑りっぱなしになってしまう。つまり摩擦でできた水膜を、発泡ゴムが吸水することによって、VRX2は高いトラクション性能を発揮していることが身をもって確認できた。


ハイライトはワインディングコース。ここで試したアウディ A3クワトロと、ブリザックVRX2の組み合わせは、もうチョー最高! のひとことだった。

A3クワトロはご存じオンデマンドタイプの4WDであり、基本前輪を駆動させこれがスキッドすると後輪にトルクを与えて走る。そしてここに横滑り防止装置を効かせていれば、リアを滑らすことなしに力強く雪道を邁進してくれるクルマだ。

しかしひとたびこのESCをオフにすると、そこからめくるめくファン・トゥ・ドライブが訪れたのだ。


FWDベースゆえパワースライドに持ち込むことはできないが、きっかけ作りからオーバーステアを誘発すれば、その後のコントロールはリアが滑っても自由自在。オンロードの所作からは想像も付かないほど自由に向きを変え、滑りながらも4輪にトラクションを掛けて、どんどん速度を上げて行く。まるで気分はWRCドライバー! なのである。


こんな走りが、アウディA3でできるなんて...。A3は以前から高く評価していたが、正直これほどの雪上性能があるとは思わなかった。そしてこの走りは、ブリザックVRX2の高いグリップと安心感が引き出したものだと、ボクには思えた。タイヤが改めて好きなクルマを惚れ直させてくれることなんて、滅多にない。


かたやダイハツ ムーヴで試した印象は、なかなかに興味深かった。そのハイトワゴン系ボディの床下に絶大なグリップ性能を持つタイヤを付けた走りを、恐ろしくアンバランスだと感じたのだ。簡単にいうと、速く走れすぎてしまい「グリップし過ぎてコケちゃうよッ!」と冗談半分、本気半分で思ったほどなのだ。

もちろん日本の一般路には、北海道でもない限りこんなラリーコースのごとき超ハイスピードな雪上路はない。またムーヴでそんな走りをするユーザーもいないだろう。だから普通に走る分には、その高いグリップの全てが安心材料としてユーザーには届くはず。それはわかっている。わかっているのだが、明らかにそのトレッドと全高に対して、タイヤのグリップやトラクション性能が高すぎるとボクは感じた。


そしてこれは、一般路ではまた違う形で体感できた。

同じくダイハツ・ムーヴで顕著だったのだが、VRX2を履くと路面からの細かい微振動が目立ってしまうのである。


発泡ゴムはその特性から、基本的な乗り心地がいい。またスポンジ状のため吸音性能も高いようで、スタッドレスタイヤにありがちな高周波のパタンノイズが上手に抑えられている。

しかしトレッド剛性を確保するべく大型化されたブロック、そのエッジがアスファルトを打ち付ける微振動が、ステアリング越しにうっすら伝わってくるのだ。

これはタイヤの慣らしがもっとじっくり行われれば収まる症状なのかもしれない。ただ試乗した際の印象は、完全にクルマ側の遮音性や振動吸収性が、タイヤに負けているような感じがした。操舵に対する手応えは明らかに骨太で、大げさにいうとオフロードタイヤで走っているような感じがしたのだ。


総じて乗り心地はソフトなのに、モリモリと雪を掘り進むガッチリ感があるという、不思議な乗り味をVRX2は持っていた。


発泡ゴムの柔らかさとトレッド面の剛性にややアンバランスさを感じたものの、その雪上及び氷上における性能には驚くばかり。これくらい大げさにグリップ感を謳う方が、確かに「雪上」という特殊な環境では、ユーザーも安心できるのかもしれない。いやはや、すごいスタッドレスタイヤが誕生したものである。

ブリヂストン 公式サイト:ブリザック VRX2
https://tire.bridgestone.co.jp/blizzak/items/vrx2.html

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