フィギュアスケート全日本選手権2017の開幕を翌日に控えた12月20日、本番会場で公式練習が行なわれた。五輪切符2枚を懸けた女子シングルのトップ選手7人が、同じグループに入って緊張感あふれる練習を見せ、五輪に向けた熱い思いを演技にぶつけた。

 今大会が五輪代表の最終選考会となるだけに、どの選手も今季ここまでの練習と試合の成果をここにぶつける。女子の激戦は、ノーミス演技と連続ジャンプがカギを握りそうだ。


五輪代表争いで1歩リードしている樋口新葉

 今季前半戦の代表選考レースで優位に立っているのは、グランプリ(GP)シリーズで2戦とも表彰台に乗った樋口新葉だろう。ロシア杯で3位、中国杯では2位と、ひとり気を吐いた。ジャッジの評価も高く、今季初戦のロンバルディア杯からGPファイナルまでの4戦で、すべて合計200点超えの得点をマーク。世界で表彰台争いができる力を身につけてきたと言っていい。

 昨年まで2年連続準優勝の全日本だが、今年こそは優勝を決めてすっきりと五輪切符も手に入れたいはず。樋口らしさを十二分に引き出す最強のプログラム、ショートプログラム(SP)『ジプシーダンス』とフリー『007スカイフォール』で念願を叶えたいところだ。

 気迫のこもった公式練習を見せた樋口は、「(最下位の6位に終わったGPファイナルが)すごく悔しかったので、その悔しさを一番大事なこの全日本にぶつけられるように、悔いの残らない練習をしてきました。落ち着いて滑りたいですし、しっかりと練習してきたことを出し切りたいです」と、意気込みを語った。

 その樋口を猛追しているのが、昨季後半戦を左足股関節の疲労骨折で棒に振り、今季GP第4戦のNHK杯で11カ月ぶりに競技会に復帰した宮原知子だ。ケガの回復具合が心配されたが、焦らず、じっくりと治療とリハビリに取り組んできたことで、驚異的な復活劇を見せている。

 NHK杯の結果は5位だったが、内容的には復調の明るい兆しが見られ、GP2戦目となったスケートアメリカでは並みいる強豪を退けて優勝を飾る。さらにGPファイナルに補欠1位で繰り上がり出場を果たすなど、わずか1カ月の間に予想以上の結果を残した。

 4連覇が懸かる全日本女王は「元気に来ました! 今季はケガもあったけど、すごく順調にここまでこられているので、ケガをしている間に頑張ったものをしっかりと見せたい気持ちが強いです。(最近は)特に練習をセーブすることなく、プログラムを通す練習をたくさんしてきたので、しっかりと結果を出したい」と、4年前はわずかの差で逃した五輪切符を狙う。
 
 樋口と宮原が一歩リードしているのは間違いないが、この全日本で優勝すれば五輪切符を手に入れることができるため、一発勝負を狙う他の選手も諦める必要はない。

 昨季の四大陸選手権女王の三原舞依は、今季のGP大会で惜しい戦いを重ねてきただけに、この全日本で是が非でも巻き返したいところだろう。

「(GP大会後は)やらなければならないことがたくさんあったので、一日一日を大切にして練習してきました。表現面とジャンプ面の両方をしっかりとできるように取り組み、毎日ノーミスを続けてきたので、自信を持ってしっかりと思い切っていきたいなと思います」と、大会への抱負を語った。

 また、スケートアメリカで自身初となる210点台を出して2位になった坂本花織も、自信を深めて全日本を迎えたようだ。

「シーズン最初のほうは本当に練習でもミスばかりしていて、不安なまま試合に臨むことが2、3試合くらいあったんですけど、練習をたくさんして自信をつけて、だいぶ安心して試合に臨むことができるようになってきた。そこが成長したところです。全日本では、取りこぼしのないパーフェクトな演技ができたらいいかなと思います」

 一方、ジュニアで華々しい活躍をして鳴り物入りでシニアデビューした本田真凜は、スケートカナダと中国杯でいずれも5位と振るわなかった。濱田美栄コーチからは「練習不足」と厳しく評価をされたが、以降はその悔しさをしっかりと練習にぶつけてきた。シーズン前半戦で結果を残せなかった16歳が五輪出場を掴むためには、優勝が一番の近道となる。

「自分の納得のいくような練習内容をこの1カ月はできたかなと思っていますし、自分なりに頑張りました。4年前は、次の平昌オリンピックの選考の代表争いに加わっていたいなと思っていました。いま4年経って、長いようであっという間な感じなんですけど、この舞台に立てるからには、自分の目標としているオリンピックを目指していきたいなと思います。自分の中では結果をすごく求めていて、自分のためにもそうなんですけど、家族のためにも、応援してくれる人のためにも、気持ちを込めて滑りたいなと思っています」

 初めて自分でデザインしたというSPのコスチュームを新調したほか、フリーではプログラム後半に全ての連続ジャンプを跳ぶ構成にするなど、思い切って勝負に挑む覚悟だ。

 他に本郷理華、白岩優奈にもチャンスが残されている。代表争いは最後まで目が離せない。

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