12月11日に行なわれた、女子ハンドボール世界選手権(ドイツ)の決勝トーナメント1回戦で、日本代表はオランダに24-26と惜敗した。日本女子ハンドボール史上初となるベスト8進出はならなかったものの、前回大会の準優勝国であり、リオ五輪で4位に入ったオランダを相手に、延長戦を含む70分の激闘を演じた。2016年のリオ五輪では、男子ともども出場を逃した”おりひめジャパン”だが、世界の舞台でその存在感を強烈にアピールしたといっていい。


モンテネグロに勝利するなど、実力を証明した日本女子ハンドボール

 各大陸予選を勝ち抜いた24チームが参加する世界選手権は、6チームずつ4つのグループに分けられ、上位4チームが決勝トーナメントに進む。グループCに入った日本代表は、リオ五輪で金メダルを獲得し、世界選手権3連覇の実績があるロシア、1996年のアトランタ五輪から3大会連続で金メダルを獲得したデンマーク、2013年の世界選手権を制し、ロンドン五輪とリオ五輪でベスト8に入ったブラジル、前回大会ベスト8のモンテネグロ、世界選手権に6大会連続で出場中のチュニジアと同組になった。

 いわば今大会の”死のグループ”に入ってしまった日本だが、チームを率いるウルリック・キルケリー監督は「(同グループの相手は)世界の強豪として認められている、とても強いチームばかり。しかし、そんなチームとの真剣勝負でしか得られない経験がある」と力強く語っていた。


日本女子チームを率いるキルケリー監督

 そんな監督の言葉に導かれるように、日本は初戦のブラジル相手に28-28で引き分け、いきなり世界を驚かせた。この試合で目を引いたのは、日本の”機動力”だ。守備では、世界に勝つために取り組んできた高い位置からの積極的なプレスで攻撃の芽を摘み、攻撃面でも相手を翻弄。世界では小柄な162cmのゲームメーカー、横嶋彩が「今のチームの持ち味は、1対1やディフェンスの隙間からのシュートで勝負ができること」と語るように、速いパス回しからのカットインで多くのチャンスを作った。

 ブラジル相手に好スタートを切った日本だが、第2戦のデンマークには18-32と大敗を喫した。世界選手権に4大会連続で出場している”守備の要”の永田しおりと、主将の原希美は次のように試合を振り返っている。

「ブラジル戦は自分たちから積極的に攻めるディフェンスができたんですが、デンマークは、はじめから(GKをベンチに下げて)7人攻撃をしてきました。高い位置からボールを取りにいくと裏が空いてしまって、かといって、後ろに下がってしまうと上からシュートを打たれる。その修正に時間がかかってしまいました」(永田)

「日本の3-3ディフェンス(3人が前に出てプレッシャーをかける守備システム)に対して、どこかで7人攻撃をしてくるだろうと準備はしていたのですが、はじめからそれを仕掛けてくるとは想定外でした。それでディフェンスが機能しなくなり、オフェンスでもミスが連続するようになって、自分たちで自分の首を絞めるようなゲーム展開になってしまいました」(原)

 モンテネグロ相手に初戦を落としていたデンマークは、ブラジルに善戦した日本をきっちりと分析。試合開始直後から全力で勝ちにきた格上の相手に対し、日本の選手は足が止まってパスミスも多くなり、5-16で前半を終えた。

 それでも、永田と原は「後半は、少し位置取りを修正しながら、アグレッシブなディフェンスを継続できた」と口を揃えた。前半で苦しい戦いを強いられたキルケリー監督は、ハーフタイムですぐさまチームの立て直しを図り、後半のみのスコアは13-16と、ほぼ互角に戦った。この試合で日本は “修正力の高さ”を証明したが、それがより発揮されたのは第3戦のモンテネグロ戦だった。
 
「ブラジル戦は、『同点で嬉しい』というより、『もったいない』という悔しさのほうが強かったです。得点と時間のコントロールができませんでしたね。リードする展開でうまく時間を使わなくてはいけないのに、そこで得点を狙ってしまった。プレーを止めることができていたら勝てた試合でした」

 モンテネグロ戦を前に、永田は初戦のブラジル戦の反省点をこう語った。日本はブラジル戦の前半を15-12で終え、後半も残り数分までリードしていたが、自分たちのミスもあって終了間際に同点ゴールを許している。

 それに対し、モンテネグロ戦は1点を争う展開で終盤にもつれ込んだものの、選手たちは冷静だった。残り40秒で横嶋が勝ち越しのゴールを決めると、モンテネグロは7人攻撃を仕掛けてきたが、それをしのいで今大会の初勝利を手にした。

 試合後、キルケリー監督は「ブラジル戦での経験が生きました。(後半の途中で)リードしてから、とても落ち着いてボールをコントロールし、試合を進めることができました」と、選手たちを賞賛した。

 試合ごとに成長する日本は、続くロシア戦こそ28-29で敗れたものの、第5戦のチュニジア戦を31-13と圧勝。2勝2敗1分のグループC3位で決勝トーナメントに進出した。左のエースポジションであるレフトバックを担い、ロシア戦でMVPに輝いた角南唯(すなみ・ゆい)は、「自分たちがやるべきことをミスなくやっていければ、(世界の強豪相手にも)十分に通用する手応えがあります」と自身を見せた。

 今大会でブラジル、モンテネグロ、ロシア、オランダと接戦を演じられたからといって、日本が世界の強豪の仲間入りをしたわけではない。ただ、実力差がそれほど大きくないことは証明することができた。強豪国相手にも常に接戦に持ち込める力がつけば、そこに幸運などが絡むことでモンテネグロ戦のように勝利を手にすることができる。キルケリー監督は、日本チームの現状と今後について次のように語った。

「私たちのチームにスター選手はいません。ですが、みんながハードワークをして、それぞれが強い責任感を持ってプレーすることができます。これから、今大会のデンマーク戦のような厳しいゲームも多く経験することになるでしょうが、それは、今の日本がそれだけ高いレベルで試合をしているからです。当然ながら、大敗したときのショックは大きいと思います。しかし、それを受け入れて、自分たちの立ち位置を確認しながら次の試合に向けて準備をしていくことが大事なんです」

 次回の世界選手権は、2019年に熊本で開催され、その翌年には東京五輪が控えている。2つの大きな大会のホスト国としてふさわしい戦いを見せた”おりひめジャパン”が、このまま一歩ずつ階段を登っていってくれることを楽しみにしている。

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