呑んべえ医師が実践する「体に正しい飲み方」(1)オイルファーストで悪酔い予防

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 これから年末年始にかけて、酒を飲む機会がグンと増える。ちまたでは「ウコンを飲めば二日酔いしない」「糖尿病・高血圧の人は日本酒厳禁」などと真偽不明の情報があふれる中で、エビデンスのある情報が知りたい──。こんな声に応えて、呑んべえ医師が実践する「正しい飲み方」を紹介しよう。

 忘年会シーズンへの本格突入を前にバカ売れしている1冊の本がある。酒ジャーナリストが酒好きの医師ら25人に素朴な疑問をぶつけた著書「酒好き医師が教える最高の飲み方」(日経BP社)が、アマゾンの「日本酒」「腎臓・肝臓」ほか4部門でぶっちぎりの1位(12月7日現在)を獲得し、話題になっているのだ。

 著者の葉石かおり氏は各地で日本酒イベントのプロデュースを手がける一方、世界に通用する酒のプロを育成する一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションの理事長。つまり、酒のエキスパートだ。

 彼女が取材したのは大学教授をはじめ、開業医、薬剤師、はたまたメーカー研究員と多岐にわたるが、

「お話をうかがった医師や専門家のほとんどがお酒好きを公言されている方。いわゆる適量ではもの足りなさそうな私を見て、それならこんな飲み方をしてみるといいよ、と教えてくださったんですが、健康によかれと思って実践してきた習慣が、実は意味がなかったり危険だったり。取材してみて本当に目からウロコでしたね」(葉石氏=以下、カギカッコ内のコメントは同氏=)

 そんな酒好き医師たちが教えてくれた“体に正しい飲み方”とは──。

 忘年会が続くこの時期。酒飲みが陥りやすいのが、飲みすぎによる悪酔いや二日酔いだ。

「肝臓病の専門医によれば、アルコールの血中濃度を急激にアップさせないことが重要なのだそうです。アルコールは胃から腸に送られると一気に吸収されるので、胃でのアルコール滞留時間を長くし、小腸へ送る時間を遅くすることが、二日酔いや悪酔いを防ぐことにつながるようです」

 では、胃での滞留時間を長くするには、どんなツマミを選べばいいのだろうか。

「専門医のオススメは、魚介類のカルパッチョやマヨネーズを使ったポテトサラダなど、油を使った料理。あと、『牛乳を飲んでおけば胃に膜を張ってくれる』と言われますが、牛乳は水分なので、飲んだらすぐに胃から小腸に送られてしまうため、乳製品を摂るのなら固形のチーズを選ぶべき。胃の粘膜を保護するムチンを増やす働きがあるキャベツ、肝臓での代謝を助けるタウリンを含むイカやタコもオススメ、ということです」

 よく言われる「飲む前に牛乳」には大した効果はないようだが、目からウロコの“新常識”はまだ続く。

 日増しに寒さが厳しくなる昨今、熱燗で身も心も温まりたい、という人も多いはず。ただ、日本酒は糖尿病や高血圧の症状を悪化させるとも聞くが‥‥。

「長年、日本酒と健康について研究してきた教授によれば、実は日本酒にはアミノ酸や有機酸、ビタミンなど120種類以上の栄養成分があり、中でもアミノ酸の含有量は他に比べてダントツなのだとか。複数のアミノ酸の結合によって作られる活性ペプチドは糖尿病患者の“インスリン感受性”を改善し、高血圧や動脈硬化などの心疾患のリスク軽減にも効果的だといいます。もちろん、量にもよりますが、糖尿病だから日本酒は避ける、という考え方はもはや過去のものだということです」

 また、アルコールには、くも膜下出血や脳梗塞、認知症といった脳疾患を誘発する危険性があると言われる。その一方で、アメリカで65歳以上の男女3660人を対象に行われた調査によると、一定の量(週にビール350mlを1〜6本)を飲んでいる人が、最も認知症のリスクが低くなるという結果が出た。「ほどほどに」を守れば、酒は脳の活力になることが実証されたのだ。