ファーウェイ旗艦スマホ「Mate 10 Pro」を徹底解説:週刊モバイル通信 石野純也

フラッグシップモデルが良作ぞろいだった2017年の秋冬モデルですが、その最後の1台として、ファーウェイの「Mate 10 Pro」を購入しました。ここでは、AI対応プロセッサーの「Kirin 970」や、進化したデュアルカメラの実力など、実際の使用感をレビューしていきます。

ファーウェイのMate 10 Pro。筆者も発売日にポチリ

Mate 10 Pro最大の特徴といえば、やはりチップセット。同機種の「Kirin 970」は、機械学習の処理に特化したNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)をCPUとは別に搭載しており、いわゆる人工知能的な機能がスムーズに使えることを売りにしています。

この機能をユーザーに分かりやすい形で提示したのが、カメラ機能。Mate 10 Proのカメラは、オートで撮影すると、シーンが自動で認識され、そのシーンに合わせて色味などの画質が調整されます。この処理が非常に速く、カメラを被写体に向けるとすぐに、どのシーンなのかがアイコンで表示されます。さすが、1億枚の画像を読み込ませて学習させたというだけのことはあるなと思いました。


▲シーンを認識すると、左下にアイコンが表示される。認識は非常に速く、正確だ

これによって、たとえば料理であれば、より温かみが増すような処理が加えられます。自動認識なしの場合と比較してみたいときは、画面下を上方向にフリックして、「プロモード」に切り替えてみるといいでしょう。こちらは、シャッター速度やISO感度、絞りなどを手動で設定できるモードで、シーンの自動認識がかからないため、ディスプレイごしに、映像がどのように映るのかの比較ができます。

ただ、Xperiaの「プレミアおまかせオート」なども同様の機能として有名ですが、シーンの自動認識はそれ自体はまったく珍しいものではありません。確かに、認識速度が速く、あまり揺らぎもないのは事実ですが、それをもって機械学習のメリットとドヤれるかというと、やや拍子抜けするのも事実です。より効果が出ているのは、ワイドアパーチャーやポートレートモードを使った際の背景ボカシにあるといえるかもしれません。

ポートレートモードで人物写真を撮ってみると分かりますが、背景のボケ具合が実に自然。髪の毛や、洋服のモコモコした部分まできちんと人物だと認識して、境界がしっかり出ていることが分かります。デュアルカメラ搭載モデルでも、この辺が割と雑に処理されてしまうことが多い中、きちんと被写体を見分けているという印象を受けました。


▲ポートレートモードで撮った筆者の写真。エッジの処理が上手い印象

そのカメラ自体も、Mate 9比で、大きくスペックが上がっています。特に性能が向上したと感じているのが、暗いシーンでの撮影時。どちらかというと、ファーウェイの端末に搭載されるカメラは暗所に弱めという印象を持っていた筆者ですが、Mate 10 Proで撮った夜景などの写真を見ると、そのイメージが払しょくされます。Mate 10 Proのレンズは、F値1.6と明るくなっているため、その効果が如実に表れた結果といえるかもしれません。もちろん、夜景だけでなく、屋内で料理を撮るときなどにも、明るさが増している点は効果を発揮します。


▲レンズはF値1.6と大幅に明るくなった


▲真っ暗な部分のノイズが少なく、夜景の仕上がりがよくなっている印象

次にディスプレイですが、Mate 10 Proも、スマホ業界のトレンドをしっかりキャッチアップしており、18:9と縦長の有機ELディスプレイを搭載しています。そのため、サイズは6.0インチと、先代のMate 9よりも約0.1インチ大きくなっていますが、横幅はスリムに。結果として、手に持ったときのフィット感は大きく上がっています。


▲ディスプレイが縦に長くなったことで、1画面の情報量が増した

Mate 9は手の大きな筆者にとっても少々大きすぎると感じていましたが、Mate 10 Proは片手での操作もスムーズにできます。縦に情報量が増えているため、ブラウザ利用時はもちろん、TwitterやFacebookなどのSNSも、スクロールの回数を減らすことができます。マルチウィンドウでアプリを2つ並べたときの視認性も、悪くありません。


▲2つのアプリを同時に表示した際の視認性も高い

ただ、残念なのが、マルチウィンドウに対する工夫が今一歩足りないところ。同じ縦長ディスプレイを搭載したGalaxy Note8の場合、「ペアApp」として組み合わせた2つのアプリを同時に起動できたり、アプリ履歴キーを長押しして画面を分割した際にも、よく使うアプリが表示されたりと、何かと2つ目のアプリをスムーズに呼び出す仕組みが実装されています。せっかく縦長ディスプレイを搭載したにも関わらず、後が投げっぱなしになっている点はもったいないなと感じました。


▲同時表示するアプリが、履歴からしか選べないのが残念

同じく残念な点を挙げると、AndroidのよさでもあるmicroSDカードに非対応な仕様や、3.5mmのイヤホンジャックがない仕様も、賛否が分かれるところだと思います。筆者はこの端末で音楽を聞く予定がないため、後者は何とか許容できるものの、写真や動画を撮るため、前者は対応してほしかったと感じています。そのイヤホンジャックについても、録音した音声ファイルを聞くときに、Bluetoothイヤホンを使わなければならないのは不便。せっかくiPhoneと差別化できる部分なのに、これはもったいないと思います。


▲3.5mmイヤホンジャックは非搭載


チップセットのお陰もあって、レスポンスはスムーズ。フラッグシップモデルにふさわしく、メモリ(RAM)も6GB搭載されており、サクサク感は抜群です。バッテリーの持ちもよく、常用するにはいい端末でしょう。また、価格も定価で8万9800円と、他のフラッグシップモデルと比べても、一段安く設定されています。10万円オーバーのフラッグシップモデルが増えている中、9万円以下に本体価格を抑えてきた点は、評価できます。


▲メモリが6GBと大容量で、バッテリーの持ちもいい

特にSIMフリーモデルは、大手キャリアの端末とは異なり、端末購入補助が出ないため、価格が高騰していないのはありがたいと思いました。これがもし、10万円を超えていたら、サクッと買う気にはならなかったかもしれません。

トータルで見ると、非常に完成度の高いMate 10 Proですが、上記のように残念な点があるのも事実。また、iPhone XのTrueDepthカメラや、Galaxy Note8のSペンのように、強烈な個性となる一芸がないのも気になるところです。よく言えばキレイにまとまって使い勝手がいい端末なのですが、裏を返すと、インパクトがやや足りないということなのかもしれません。

もちろん、これは筆者が複数台を使い、常にほかの端末と比べられる環境であるがために、そう感じることは否定しませんが、AI対応だけではパンチ力が足りないような気もします。AIを活かした機能のバリエーションをもっと広げるなど、ファーウェイならではの工夫にも期待したいところです。