昨年のファイナルQT(※)で5位となり、今季から日本ツアーに本格参戦を果たしたユン・チェヨン(30歳/韓国)。29試合に出場してトップ10フィニッシュ5回、賞金ランキング35位(獲得賞金3484万6044円)という成績を残して来季のシード権を獲得した。
※クォリファイングトーナメント。ファースト、セカンド、サード、ファイナルという順に行なわれる、ツアーの出場資格を得るためのトーナメント。ファイナルQTで40位前後の成績を収めれば、翌年ツアーの大半は出場できる。

 7月には、サマンサタバサ ガールズコレクション・レディース、センチュリー21レディスと2週連続2位。ツアー優勝こそ叶わなかったものの、こうして優勝争いを演じて”新天地”でも十分に戦えることを証明した。


今季から日本ツアー本格参戦を果たしたユン・チェヨン

 30歳にして日本ツアー挑戦を決意したユン・チェヨン。その決断は決して簡単なものではなかったと思うが、賞金シード獲得という第一目標を見事クリアして、ホッとした表情を見せた。そして、冗談っぽく笑いながらこう語った。

「今年、日本でシードを取れなかったら(現役を)引退していたでしょうね」

 ユン・チェヨンは、韓国で「元祖美女ゴルファー」と称され、その外見からも注目を集める選手だった。日本でも「八頭身美女」「フィールドのモデル」といった愛称で親しまれ、今やファンが急増中である。

 そもそも彼女の名が日本のゴルフ界で知れ渡ったのは、2016年のヤマハレディース葛城だった。同大会に主催者推薦で出場したユン・チェヨンは、最終日を単独トップで迎えたのだ。結局、最後は長年日本ツアーで活躍する同郷の先輩・李知姫(イ・チヒ)に逆転を許したものの、通算5アンダー、3位タイという好結果を出して注目を浴びた。

 容姿端麗、それでいて強い。日本に来れば、イ・ボミ、キム・ハヌルに続く人気選手になりそうな予感がした。

 ただ昨年、韓国ツアーの取材に行った際、ユン・チェヨンに「日本ツアー挑戦を考えていないのか?」と聞くと、そのときはまだ”前向き”という感じではなかった。

「考えている最中です。でも、この歳で海外ツアーに挑戦するには、やはりかなりの覚悟と勇気がいりますから」

 それもそのはずである。彼女は韓国女子ツアーにデビューして以来、一度もシード落ちがなく、安定して戦える舞台があるのだ。

 しかも、毎年10人ほど選出される”KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)広報モデル”に、第1期となる2009年から8年連続で選ばれている唯一の選手である。ゆえに、韓国国内での人気は高く、KLPGAとしてもツアーから離れてほしくない選手であった。

 さらに、ユン・チェヨンのメインスポンサーは、生命保険業や証券業などを営むハンファ(韓火)グループ。プロ野球の球団も抱えている韓国10大財閥のひとつから、万全のサポートを得ている。ちなみに、今季日本女子ツアーで賞金ランキング2位になったイ・ミニョンや、米女子ツアーでプレーする野村敏京(はるきょう)らも、ハンファ・ゴルフ団の一員。彼女たちもゴルフに関わるさまざまなサポートを受けている。

 そうした恵まれた環境にあれば、わざわざ異国の、それも慣れない環境でプレーする必要はない。また、女子ゴルフ界で言えば、30歳にもなればベテランである。その歳になって新たな挑戦を試みることには、不安が大きかった。このまま韓国でプレーしていれば、この先まだ何年かはプロとして第一線でやっていけることを思えば、なおさらだ。

 だが一方で、ユン・チェヨンは韓国ツアーで戦うことにも物足りなさを感じ始めていた。プロデビューした2006年から2016年まで常に高いレベルを保持し、一度もシード落ちはなかったものの、10年間も同じ場所で戦い続ける中で、「徐々にモチベーションが低下していた」という。

 そんなとき、彼女に刺激を与えたのが、前述した2016年のヤマハレディース葛城での戦いだった。

「あのとき、多くのギャラリーの中でプレーした楽しみと興奮を、もう一度味わいたいと思っていました」

 当初はなかなか踏ん切りがつかなかったが、いつしか自らの心が日本ツアーに大きく傾いていることに気づいたユン・チェヨンは、ついに日本ツアーのQTを受ける覚悟を決めた。

「とにかく、韓国でプレーを続けるのが(精神的に)しんどかった。私の心の中では、マンネリを打破したいという気持ちがどんどん膨らんでいったんです。そうして、韓国でやる気が感じられない私の姿を見た父とコーチが見かねて、昨年の日本ツアーのQTに申請を出していたんです」

 最終的には周囲に背中を押されるような形での日本挑戦となったが、自らの気持ちに従って、覚悟を決めての挑戦である。ある意味、閉塞感から解き放たれたユン・チェヨンは強かった。QTの1次から3次まで難なく突破すると、ファイナルでも安定したプレーを見せて5位でフィニッシュ。今季のツアー出場権を手にした。

 実は、ユン・チェヨンは2010年と2011年にも日本ツアーのQTに挑戦している。しかし、いずれも失敗に終わった。日本ツアー挑戦を当初ためらっていたのは、そんな苦い思い出もあったからだ。

 ともあれ、30歳を迎えた今、「このままでは終われない」という気持ちが勝った。

「10年間も韓国でプレーしてきて、30歳で不慣れな場所に行くのは、相当な覚悟と勇気が必要でした。失敗したら、あとがありませんから。日本と韓国の両ツアーを行ったり、来たりすることもできましたが、それを続けていく体力があるかどうかも心配でした。だから、難しい決断でしたが、後ろ髪を引かれる思いで、韓国ツアーを断ち切りました」

 30歳で新たな戦いの舞台に飛び込んだユン・チェヨン。それは、まさに背水の覚悟を持ってのチャレンジだったが、この1年の戦いを見れば、その判断は成功だった。

「前半戦はあまりいい成績を挙げられなかったのですが、『ダメなときはダメ。いつか結果を残せる』と信じて、すべてのことを前向きにとらえてやっていました。また、初めてあらゆることを自分ひとりでこなしてツアーに参加していましたが、その中で学ぶことがすごくたくさんありました。親元を離れ、プレーのことやコースマネジメントなども、すべて自分でじっくりと考えてやってきましたから。そうすると、成績も徐々によくなってきたんです。それは、とても不思議なことでした」

 冒頭でも記したが、ふたつの大会で2位に入り、優勝へあと一歩まで迫ったことも、来季への大きな自信となった。

「来季の目標ですか? まずは1勝ですよね。もちろん、簡単なことではないと思います。技術が高いからといって、優勝できるものではありませんし、そこには運も必要です。すべての要素がぴったりとかみ合わないといけないですし、タイミングもあると思いますから。

 年間何勝とか、賞金女王とか、そういう高い目標は掲げていません。とにかく、これからも楽しくゴルフがしたい。それができればいい。だって、もう30歳ですからね(笑)」

 これまで韓国ツアーにおいても、ツアー1勝に終わっている。ユン・チェヨンの勝利に対する貪欲さは、日本に来てさらに増している。ゆえに、「来年からは日本の試合にもっと集中できるので、日本に拠点を構えることも考えています」と語る。

 韓国にいたときよりも、ゴルフへの思いが高まり、現役を続けていく気力もみなぎっている。

「本当に日本でのツアー生活はとても楽しいし、充実しています」

 最後に満面の笑みを浮かべて、そう語ったユン・チェヨン。来季は、さらなる飛躍が期待できそうだ。

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