握手する豊田トヨタ社長(左)と津賀パナソニック社長

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 素材業界は13日に発表されたトヨタ自動車とパナソニックの車載用角形電池提携に危機感を募らせる。トヨタが2030年に向けて打ち出した電動車販売の“コミットメント”は心強いが、真の目的は電池の大幅なコスト削減と見る向きが多い。電気自動車(EV)の製造コストの大半を占める電池の低価格化は、自動車メーカーにとって性能向上よりも重要な経営課題だ。巨大連合からのコスト削減要求も巨大になるとの警戒感が広がる。

 「我々にとってあまりうれしくない。どう考えても美しい絵が描けない」。両社と取引のある素材大手幹部は今回の電池協業に厳しい表情を見せる。それは電池の大幅なコスト削減への固い決意を豊田章男社長と津賀一宏社長の握手の裏に感じ取ったからだ。

 「EVはリチウムイオン二次電池が高すぎて経済合理性がない。電池材料のコストを考えると、どう転んでもガソリン車並みには安くならない」(素材大手幹部)と、原価低減の力が働きにくい産業構造にあるようだ。「自動車メーカーの利益全体が落ちてくれば、しわ寄せは全て部品・材料メーカーに来る」(同)と素材業界の警戒感は強まるばかり。

 豊田社長は13日の会見で「現在は規制のスピードに電池開発のスピードが追いついていない」と語った。自動車メーカーが規制に追い立てられてEV販売を今後増やせば、ガソリン車の稼いだ利益でEVの赤字を補填する構図になりかねない。だからこそ、高コストの電池問題は是が非でも解決しなければならないのだ。

 今回の提携は他の自動車メーカーへも門戸を開いて仲間を増やし、リチウムイオン二次電池の業界標準化まで実現したい思惑が見え隠れする。統一規格の電池を開発できれば、量産効果で多少なりとも製造コストは下げられるだろう。

 ただ、部材を供給する素材各社にとって差別化の余地がない“市況品”はうまみが薄くなる。EV活況の陰で新たな不安の種がまかれた。
(文=鈴木岳志)