12月19日午前、大成建設本社に家宅捜索に向かう東京地検の係官とみられる人たち(写真:共同通信社)

「夢の超特急」に泥を塗った責任は重い。

東京地検特捜部は12月8日夜、偽計業務妨害の疑いで大手ゼネコンの大林組の本社などを家宅捜索した。

その後も捜査は広がりを見せ、19日には特捜部に加えて、公正取引委員会が独占禁止法の疑いで捜査を開始。大林組だけでなく鹿島や清水建設、大成建設なども大手4社すべてが家宅捜索を受けた。一部の企業は談合への関与を認める供述をしているようだ。

受注調整による談合か

問題となったのは2027年に開業を予定するリニア中央新幹線での入札。名古屋城付近での立坑「名城非常口新設工事」で、他社ゼネコンが入札しないよう大林組が調整を図った疑いが浮上している。

特捜部が疑いをかけた偽計業務妨害は、人を騙して業務を妨害すること。大林組らが落札価格を吊り上げ、JR東海に経済的被害を与えたという構図を問題視したようだ。

とはいえ、問題となった名城非常口の落札金額は3社が組んだ共同企業体で推計90億円程度。売上高が1.8兆円に達する業界トップの大林組にしては小規模な工事だ。良好な事業環境の中、なぜそこまで受注にこだわったのか。

名城非常口の掘削には、円筒状の掘削機で掘り進めるシールド工事が用いられる。大林組はこのシールド技術に強く、2013年には三菱重工業とトンネル工事用の省エネシールドマシンを共同開発している。

今回受注した名城非常口は地下約90メートルまで掘削するが、その後には名古屋駅や南アルプスへとトンネルを掘り進める工事が待っている。

得意のシールド技術を生かせるうえ、別に受注した名古屋駅(中央西工区)の工事との一体化も図れる。同社は品川駅(南工区)の工事も受注しているが、これもシールド工事だ。


リニア中央新幹線はあくまでJR東海という民間企業の事業であり、建設費も自前で負担するのが原則。ゼネコンにとってリニア工事の採算は良くない。

「品川駅の工事では、JR東海の予算がゼネコンの想定よりも厳しく、入札が不調になった」(ゼネコン幹部)。そのため、受注調整によってできるかぎり競争を避けようとする動機が生まれる。

JR東海としても、国からの巨額の資金援助(財政投融資)を受けているため、建設費のいちじるしい膨脹は見過ごせない。

「名城非常口は90億円で落札されたようだが、受注調整がなければ、(ゼネコンが利益を得ようと)更なる高値を提示していた可能性もある」(別のゼネコン幹部)など、受注調整がJR東海とゼネコンの間で価格をすり合わせる役割を果たしていたと指摘する声も上がる。

入札方式に不透明さも

入札方式が不正を助長した側面もある。JR東海が採用した「公募競争見積方式」は、価格以外に工期や技術などを受発注者が協議して落札業者を決める。客観的な指標がなく、決定方法が不透明になりやすい。

実際、落札済み工事を見ても、山岳工事が得意な鹿島と大成建設は南アルプスのトンネル工事という難工区、土木技術で後れを取る清水建設は中規模の土木工事や変電施設の建築など、“すみ分け”ができている。

最近でも似たような構図の事案が起きている。今年9月、東日本高速道路と中日本高速道路は、東京外環自動車道の中央ジャンクション付近の工事について、「談合の可能性が払拭できない」として入札を中止した。


当記事は「週刊東洋経済」12月23日号 <12月18日発売>の記事に加筆修正したものです

ある工区で優先交渉権を得た業者はほかの工区では優先交渉権を得られないという入札条件がすみ分けを助長し、事実上の談合を招いていたとみられる。

今後の懸念されるのは、2027年を予定している開業時期への影響だ。「(捜査を受けて)JR東海も受注手続きを厳格化せざるを得ない」(ゼネコン幹部)ことに加え、大工事を請け負える人手や技術力を持つ大手ゼネコンが及び腰になれば、工事の遅れる懸念もある。

当のJR東海は「開業時期に影響はない」としている。

大手ゼネコン4社が2005年に「談合決別宣言」を出した後も、繰り返される談合。懲りないゼネコンに司法はどんな灸(きゅう)を据えるのか。