三井物産本社が所在する日本生命丸の内ガーデンタワー(「Wikipedia」より)

写真拡大

 世界経済の回復や産油国による減産を背景にした国際原油相場の持ち直しで、石油・石炭などの原料および製品価格が上昇した。鉄鋼生産に使う原料炭は昨年前半の平均に比べ約8割高。銅・鉄鉱石も上がった。銅については、電気自動車(EV)の思惑が働いている側面もある。

 そして資源価格の回復は、総合商社の業績も押し上げた。

“資源商社”の異名をとる三菱商事と三井物産は、資源価格の下落で2016年3月期は初の最終赤字に転落した。それが一転して資源価格の上昇によって17年3月期にV字回復。そして18年3月期も各社は最終増益を見込んでいる。

 総合商社大手5社の18年3月期の最終利益は以下のとおり。

・三菱商事…5000億円(前期比13.6%増)
・伊藤忠商事…4000億円(同13.6%増)
・三井物産…4000億円(同30.7%増)
・住友商事…2800億円(同63.8%増)
・丸紅…1700億円(同9.4%増)
※各社とも国際会計基準

●三菱商事、純利益が5000億円の大台か

 三菱商事の連結純利益は、過去最高の5000億円になる。期初予想の4500億円から上方修正した。これまでの最高益は、新興国ブームに沸いた08年3月期の4712億円。それを今回、10年ぶりに更新する。

 原料炭を含む金属事業の部門利益は32%増の1950億円を見込む。同部門が全社の最終利益の39%を占める。自動車販売などの機械事業は2.5倍の750億円になる。東南アジアを中心とする自動車の販売台数が増えたことによる。通期業績の上方修正に伴い株主還元を拡充し、年間配当を前期実績から15円増の95円とする。

●伊藤忠も過去最高

 伊藤忠商事も連結純利益は4000億円と過去最高になる見込み。青果物の生産販売など食料事業の部門利益は9%増の770億円。ファミリーマート統合に伴う持分法投資利益も増える。鉄鉱石や石炭などの金属事業は22%増の550億円。資源も業績に寄与したが、それでも非資源比率が88%(17年3月期は86%)になる。通期業績は上振れする可能性がある。

 格付け会社のムーディーズ・ジャパンは、伊藤忠の格付けをBaa1からA3に一段階引き上げた。伊藤忠がA格を取得するのは98年5月以来20年ぶり。総合商社では三菱商事がA2を取得しており、三井物産はA3だ。

●三井物産も上方修正

 三井物産の連結純利益は4000億円になる。期初予想の3200億円から上方修正した。リーマン・ショック前の08年3月期には及ばないが、会計基準を変更した13年3月期以降では最高益になる見通し。

 金属資源事業は前期比81%増の2500億円。ブラジルの投資先の鉄鉱石最大手、ヴァーレの組織変更に伴う株式評価益や石炭価格の上昇で好調。全社の最終利益の62%(17年3月期は85%)を占める。資源商社と呼ばれるゆえんだ。

 生活産業事業は300億円の赤字。期首には200億円の黒字を予想していたが、下方修正した。足を引っ張っているのは、11年に買収したブラジル穀物商社のマルチグレイン。三井物産の“負の遺産”だ。

 マルチグレインは、ブラジルに東京23区の2倍に相当する広大な農園と港湾を所有する。大豆などの穀物をブラジルで集荷して中国などに輸出。だが、赤字経営が続き、三井物産は抜本的処理を迫られている。17年4〜9月期に引当金や繰り延べ税金資産の取り崩しなどで合計423億円の損失を計上。「今期中に撤退を含めてケリを付ける」(安永竜夫社長)という。

●住友商事、資源価格の恩恵で上方修正

 住友商事の連結純利益は2800億円。期初予想の2300億円から500億円上方修正した。金属事業は300億円の黒字と、大幅な増益になる(17年3月期は18億円の黒字)。亜鉛や鉛、石炭など資源価格が持ち直し採算が改善。油田やガス田の掘削や生産に使う油井管などに使用する鋼管事業の需要回復も収益を押し上げる。

 住友商事の“負の遺産”は、マダガスカルで進める鉱山開発事業アンバトビー。カナダ、韓国の企業と組んで参画した世界最大級のニッケル鉱山開発プロジェクトだ。07年に開発を始め、ニッケル鉱石から地金まで一貫生産し、コバルトも採掘している。設備の不具合による稼働率の低下やメンテナンス費用の発生により、今期は178億円の赤字を見込んでいる。

●丸紅、電力事業を拡大

 丸紅の連結純利益は1700億円の見込みで、当初予想を据え置いた。金属事業は資源価格の上昇で収益が300億円と前期比2.8倍に拡大する。

 丸紅の強みは電力事業だ。世界各地で発電所を70カ所運営しており、国内の電力会社、中国電力を上回る発電能力を持つ。総合商社では首位だ。“丸紅電力”と呼ばれる電力部門の最終利益は410億円の見込みで、全社の純利益の4分の1近くを叩き出す大黒柱に育ってきた。さらにポルトガルに電力などで1000億円投資する。

 総合商社の18年3月期連結決算は、資源価格の回復で好決算になる。一方で各社が強化するのは市況に左右されない非資源事業の分野だ。

 三菱商事はローソンを子会社にした。伊藤忠商事もファミリーマートとユニーグループ・ホールディングスを経営統合した。三井物産は医療、住友商事はメディア・不動産、丸紅は電力へ新規投資を増やす。

 非資源事業で、いかに安定的に収益を確立できるかが喫緊の経営課題だ。
(文=編集部)