山田秀和氏

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抗加齢医学に関わる医師やアンチエイジングの専門家らが参加する「見た目のアンチエイジング研究会」。去る2017年9月10日に東京大学伊藤国際学術研究センターで開かれた。11回目となる学術集会から、今年一年の注目研究を振り返り、2018年を占う。

学術集会で、近畿大学アンチエイジングセンターの山田秀和副センター長は世界中のアンチエイジングに関する研究から、今年注目した論文をピックアップした。

見た目のアンチエイジングを考えるうえで、「皮膚」、「容貌」、「体形」に分けて考え、そしてそれぞれに「運動」、「食事」、「精神」、「環境」といった対策をとることが大切だという。この7項目にあてはまる研究論文やまつわるニュースを解説した。

皮膚、容貌、体形に関する研究

まず、皮膚に関する研究で注目したのは、米スタンフォード大学の研究グループがAI(人工知能)を使った皮膚がん(メラノーマ)の診断を可能にしたこと。AIと画像処理を組み合わせ、皮膚科専門医と同等の診断精度を実現させた。山田氏は、今後は医学分野においてもさらにAIの技術が使った研究が進められるだろうと言う。

容貌については、米ミネソタ大学が発表した「印象のよい笑顔の条件」の研究が紹介された。歯を見せて口を大きく横に広げるような満面の笑みよりもやや控えめでかつ左右対称に笑みを浮かべたほうが印象良く受け取られるという。

もうひとつ、ニキビに悩まされた人は皮膚の老化が遅いことを示唆する研究が紹介された。山田医師は、「ニキビの原因のひとつである皮脂分泌に、肌のうるおいを保つヒアルロン酸が関係している可能性がある」と見解を述べた。

体形に関することで、最初に触れられたのは「現代の若者が痩せすぎている」ということ。2017年5月にフランス国内で痩せすぎのモデルが活動することを規制する法律が施行されたが、これは、痩せすぎのモデルたちの健康を守るだけでなく、若者たちの「もっと痩せたい」という気持ちを抑え、拒食症を防ぐ目的もあるという。

山田氏は「痩せすぎは緑内障のリスクが高まることを示す研究もある。一方で、痩せている人は寿命が長いという研究も あるが、BMI(体重を身長の2乗で割って算出する肥満度)が19以下の場合は脂肪リスクが高まるという研究もあり、基本は健康であることで、過度にならないよう『ほどほど』が大切」だとした。

運動、食事、精神、環境の対策は

アンチエイジング対策の中でも運動は大切。近年では、乳がんや前立腺がん患者を対象にした研究で運動が予後に良い影響を与えることがわかっている。

山田氏が注目したのは、「ロコモ予防にはクラッシックバレエがよい」と米国形成外科学会発表したことだ。ロコモとはロコモティブシンドロームの略で、手足の筋肉や関節など運動器の機能が低下する病気。寝たきりを引き起こすため若いうちからの予防対策が重要になる。バレエのドゥミ・プリエ(かかとを床から離さずにひざを曲げ、アキレス腱を十分のばす)やルルベ(背伸びをしてつま先立ちになる)などは、すべての年齢層において、関節の可動性を改善し、体力を強化できるという。

次に、食事。機能性表示食品やサプリメントなど何を食べるかも大切だが、今回は体内時計に ついて取り上げた。米国テキサス大学オドンネルJr.脳研究所らのマウスを使った実験から、夜遅い時間帯に食事を摂る習慣は、皮膚の体内時計を混乱させ、紫外線(UV-B)を浴びた場合にダメージが大きくなる可能性が示唆されたという。2017年のノーベル生理学・医学賞は、体内時計を生み出す遺伝子とそのメカニズムを発見した研究者らに与えられたこともあり、2018年も注目される研究分野だ。

精神の領域では、マインドフルネスに関する研究が紹介された。マインドフルネスとは「今、この瞬間の体験に意識を向け、評価をせずにとらわれない状態でただ見る」という休息法。日々のマインドフルネスが正常な血糖値を保つことを示した米大学の研究報告などがあり、精神からのアプローチが体の健康に影響を与えアンチエイジングに役立つ可能性が大きい。

環境のジャンルの中には、気温や湿度、光、化学物質など多くの要素があるが、光(紫外線)についての研究に着目した。米国眼科学会は長時間紫外線をあびると角膜の熱傷や一過性の視力低下を起こす場合があり、それが長期にわたると白内障やがん、加齢黄斑変性症のリスクも高まることから、幼少期からサングラスをかけるなどのUVケアが必要だと発表した。

一方で、UV-Bへの暴露量が多いほど近視が減少し、その影響は14から29歳で最も大きかったという研究報告もあることから、山田氏は「紫外線をすべてブロックするのではなく、もっと細かく分類し、考える必要がある」と述べた。

「これからは、個人の遺伝的な情報を使って、病気の予防や診断、および治療を行う『個別化』 された医学を考える必要があります。臨床の現場では2018年4月から、がんのクリニカルシークエンス(がんに関連した遺伝子の変異を検査し、治療に役立つ情報がないか調べること)が一部保険適応されるかもしれないという話も聞きますし、将来的には見た目のアンチエイジング対策についても個別化した対策が求められる時代になっていくでしょう」(山田氏)

2018年は、遺伝子解析による個別化医療への技術開発がさらに加速する年になる。それとともに、見た目のアンチエイジング対策も「個別化」へと考え方が変わっていきそうだ。

医師・専門家が監修「Aging Style」