今シーズンも「日本一奪還」はならなかった――。

 12月16日、早稲田大は全国大学ラグビー選手権の初戦となった3回戦で東海大と対戦。18-47で敗北を喫し、最多優勝15回を誇る「赤黒」ジャージーの名門は早々にシーズンを終えることになった。大学選手権は過去何度もレギュレーションが変わっているが、4年連続して正月越え――つまり準決勝に進出することは叶わず、同大学のワースト記録を更新してしまった。


予想外の早期敗退に涙を流す早稲田の選手たち

 早稲田大と昨年度準優勝の東海大がいきなり3回戦で激突したのには、次のような背景があった。

 早稲田大は関東大学対抗戦で明治大に敗れたものの、慶應義塾大には勝利し、3校が5勝2敗で並ぶことになった。対抗戦の順位は2位だが、大学選手権への出場は得失点差が影響する。その結果、早稲田大が4位扱いとして3回戦の枠に割り当てられた。

 一方、東海大は関東大学リーグ戦で大東文化大にまさかの敗北。実力のある東海大がリーグ戦で2位となってしまった。どちらもトップシードではなかったため、両校の早期対決が実現することになったのだ。

 早稲田大は依然、低迷を続けている。ただ、彼らもそれに手をこまねいているわけではない。

 2018年の創部100周年での日本一を視野に入れ、2016年にOBの山下大悟氏を監督に招聘。清宮克幸監督時代に大学選手権で優勝を経験し、サントリーなどでプロ選手として活躍した山下監督は、「BE THE CHAIN(鎖になれ!)」をスローガンに掲げ、さまざまな改革を断行してきた。

 グラウンド外ではジャージーのデザインを変えたり、新潟の新ブランド米「新之助」の提供を受けたり、さらには選手強化の資金を捻出するためにクラウドファンディングを行なったりと、その改革は多岐にわたる。また、山下監督は自身も含めて11人のフルタイムコーチで指導する体制を整え、「ブレイクダウン(接点)」「ディフェンス」「スクラム」を強化の3本柱に据えた。

 就任1年目の2016年度は対抗戦6勝1敗で2位となり、大学選手権は準々決勝で同志社大に31-47と惜敗。要所で健闘を見せたことで、2年目の今年はどこまでチーム力が伸びるか、その手腕に注目が集まった。

 ところが、今シーズンの早稲田は春から決して調子がいいとは言えなかった。

 その原因として挙げられるのは、スクラムやラインアウトといったセットプレーを支えるLO(ロック)桑野詠真(えいしん/現・ヤマハ発動機)などFW前5人に前年度は4年生が多く、彼らが卒業した今年はイチからチームを作り上げないといけなかったこと。そして、U20日本代表にハーフ団のSH(スクラムハーフ)齋藤直人(2年生)やSO(スタンドオフ)岸岡智樹(2年生)などBK陣が4人も招集されたことだろう。

 それらが大きく影響し、ディフェンス強化に時間を割きたい春先のチーム作りは否応なしに遅れた。

 春季大会(Aグループ)では流通経済大にしか勝てず、帝京大、明治大、東海大などに敗れて最下位に終わる。さらに夏の合宿でも、8連覇中の王者・帝京大に0-82、東海大に5-52と大敗し、ファンをおおいに心配させた。

 それでも監督は「想定どおり」と強気に語っていた。そのわけは、アタックの落とし込みはタクトを握る岸岡がU20日本代表の遠征から戻ってきてから、という計画を当初から立てていたからだ。

 その言葉どおり、夏合宿ではアタック中心の練習を重ねて徐々に手応えを掴み、9月に開幕した対抗戦では帝京大に前半14-21と善戦。最終的には21-40で負けたものの、コンタクトで対等に戦える時間が増え、2年生ハーフ団を中心としたテンポのいいアタックには目を見張るものがあった。

 そして迎えた大学選手権。FB(フルバック)野口竜司(4年)やNo.8(ナンバーエイト)/SOアタアタ・モエアキオラ(3年)、No.8テビタ・タタフ(3年)ら日本代表経験者5人を擁する東海大を相手に、前半は11-21で折り返す。相手の強みであるモールやディフェンスといった長所を出させないように戦い、「想定内」(山下監督)で後半へ突入した。

 後半6分、早稲田大は大型CTB(センター)中野将伍(2年)が縦に切れ込み、豪快なランでトライを挙げて18-21と3点差に迫る。だが、東海大はやはり強かった。8分にモエアキオラ、16分にタタフと立て続けにトライを許し、万事休す……。

「攻め込んでミスをしてしまって(トライを)獲りきれなかった。メンタル的にきつい部分もあった」

 試合後にキャプテンのLO加藤広人(4年)が言うように、相手に傾いた流れを取り戻すことはできなかった。結局、さらに2トライを許した早稲田大は18-47で完敗。「(2018年は創部)100周年だったので、日本一になって、2連覇に弾みをつけるシーズンにしたかったのですが……」と、加藤はがっくりと肩を落とした。

 春と夏の結果を考慮すると、ここまでチームを立て直してきた山下監督の手腕は評価すべき点もあろう。ただ、ラグビーは得点を競う勝負である。齋藤のテンポの速いボールさばきを軸とするアタック以外は、相手にとってさほど脅威となっていなかったように思えた。

 山下監督の師匠にあたる清宮監督が率いるヤマハ発動機のように、ゴール前でのモールを武器にするアイデアがあってもよかったかもしれないし、大胆にボールを渡さない戦略で戦ってもよかったかもしれない。組織的ディフェンスでも、早稲田大はまだまだ「1本の鎖」になれていない。

「もう先輩の涙は見たくない。春から夏にかけてほぼ全敗だったので、勝ちにこだわるのであれば、1年間を通してチームを作っていかないといけない」

 高校時代に東海大仰星で全国制覇を経験している岸岡は、試合後にそう語った。

 2018年度、早稲田大学ラグビー部はついに創部100周年を迎える。山下監督にとっても就任3年目――勝負のシーズンとなる。

「ベースは確実に上がってきている。白旗ではないし、根負けはしたくない。いずれにせよチャレンジャーなので、がんばっていきたい」

 予想外に早いシーズン終了となった37歳の青年監督は、自分に言い聞かせるように言った。

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