16日の韓国代表戦で、日本代表は1-4の大敗を喫してしまった【写真:Getty Images】

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4失点のうち3つはリスタートの流れ

 EAFF E-1サッカー選手権2017決勝大会最終戦で韓国に1-4と大差をつけられたハリルジャパン。今大会は国内組のみの編成で臨んだとはいえ、この試合で噴出した課題はフルメンバーで戦う際も共有されるべき事柄だ。対戦相手のレベルがさらに上がるW杯への糧とするためにも、失点シーンを細かく分析したい。(取材・文:河治良幸)

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 E-1サッカー選手権は韓国に1-4と大敗し、優勝タイトルも逃してしまった。メンタル面、戦術面、起用法など、敗因はいろいろ指摘されるが、失点シーンを冷静に検証しておく必要があるだろう。

“急造チーム”のため連係面に不安があるのは分かっていたことだがGK、最終ライン、中盤はこれまでに代表招集がある選手たちだ。

 確かに4つの失点のうち3つはリスタートの流れからであり、基本的な守備ブロックの原則から外れた状況ということはあったが、それぞれの時間帯を見ると悪い流れに引っ張られたまま失点に結び付いていることが分かる。

 1失点目は開始3分にあまりに理想的な形で先制ゴールを奪ったところから生じた心理的な隙を韓国に突かれたことはいなめない。9分には全体が下がりすぎたところから昌子源のミスをきっかけに大きなピンチになりかけ、その1分後には波状攻撃から左の危険なエリアでFKを与えてしまった。ここは中村航輔の冷静な対応でしのいだが、さらにセカンドボールからイ・ジェソンの危険なミドルシュートを打たれた。

 試合後、韓国のMFチョン・ウヨンが「むしろ日本が最初の2分ぐらいで点を取って、下げているかなと感じたので、あまり負ける気はしなかった」と振り返るように、一度引いたところを韓国にどんどん押し込まれて、そのまま同点まで10分間ずっと同じペースで進めさせてしまった。

 失点シーンは昌子がボールを右にクリアした直後のスローインからだったが、ここで2つ判断ミスがあった。1つは井手口陽介のポジショニング、もう1つは昌子源の個人戦術のミスだ。

 この試合での右サイドバックは本職がCBの植田直通だったが、自陣のスローインに対しては前方の受け手になろうとしていたイ・グノをマークしており、代わりにサイドラインを見るべき選手が足りていなかった。そこから伊東が2対1を作られたところからキム・ジンスのクロスをキム・シンウクに合わされた形だ。

2失点目はあまりにもったいなかったファウルから

 このシーンでゴール前は三浦弦太がキム・ミヌ、昌子源がキム・シンウクをチェックし、ファーサイドから中に入ってきているイ・ジェソンを車屋紳太郎が見ており、アンカーの今野泰幸がリベロ的な形で最終ラインに吸収されるという状況だった。

 ここで難しくなるのが右インサイドハーフの井手口陽介のポジショニングだが、倉田秋と土居聖真が中盤のスペースを埋めており、相手の状況を考えてもサイドラインのケアに行くべきだった。

 結局、縦にえぐってきたキム・ジンスに対し井手口が遅れながら対応に行ったがクロスを上げられてしまい、ゴール前でキム・シンウクに合わされる結果となったが、マークしていた昌子の手前に出ると見せかけて、外に開いて合わせるというのはJリーグでも札幌のジェイなどが得意とする動きだ。

「紳太郎とコミュニケーションを取ろうと思ったけど、紳太郎がいなかったので、少し迷っていました。自分の対応に。あのままファーについていって、僕と(三浦)弦太の間をあけるのか。そのタイミングでニアにこられたらって迷っているタイミングで上がってきたので、非常にもったいなかった」

 そう振り返る昌子としては高さに勝るキム・シンウクに対して周りを見ながら対処しようとしたことが裏目に出た形だが、仮に合わせられても体を付けておけばあれだけフリーでコースを狙われることはなく、GK中村が守備範囲で対応できたかもしれない。

 その後はしばらく守備のブロックを作る韓国に対して日本がサイドを起点に攻めようとするも、ボールを引っ掛けられてカウンターを受ける状況が繰り返された。チョン・ウヨンに逆転の直接FKを決められる前のシーンでは車屋がロングボールをヘディングで跳ね返したものの、そのボールをキム・ミヌに拾われ、そこを今野がマークしてミスパスを誘うところまでは守備が機能していた。

 しかし、こぼれ球を前に運ぼうとした車屋がボールコントロールに失敗し、ボールを拾いにきたチュ・セジョンを危険なタックルで倒してしまった。チョン・ウヨンのFK自体は見事で、角度的にはキム・ジンスが左足で狙いそうな位置で、壁のタイミングがズレたことも頭上を抜かれた要因だが、非常に危険な位置でFKを取られた形があまりにもったいなかった。

ズルズルと侵入を許してしまった3失点目

 そして35分の3失点目は中村から伊東へのゴールキックをヘッドでクリアされたあとの展開だが、セカンドボールからのつなぎに対するディフェンスが曖昧になったことに加え、イ・ジェソンに対する車屋のデュエルが弱く、中まで完全に入り込まれたことでバックラインの対応も非常に難しくなった。

 一度イ・ジェソンにプレスバックしかけた土居がステイしたのは全体のバランスと右SBのコ・ヨハンのケアを考えてだろうが、深いエリアで1対1を作られる危険性を考えればそのまま挟み込む形を取るべきだったかもしれない。

 ただし、問題はボールを持ったイ・ジェソンに入り込ませてしまった車屋、さらに植田がキム・ミヌに付いて中に流れる状況で外側を突いたキム・シンウクをフリーにさせてしまった三浦にあるが、そもそも植田がキム・ミヌをマークしたまま中に入り込む必要があったのかという疑問もある。

 むしろキム・ミヌをすぐ三浦に受け渡して植田がアウトサイドを埋めていればキム・シウンウクにフリーで持たれることはなかった。

 ただ、三浦の視線と体勢は車屋がイ・ジェソンに完全に突破された場合に備えるものになっており、どちらの形を取るにせよ、植田のコーチングがしっかり聞こえていなかった可能性もある。

 そもそも中盤も前掛かりになった流れで倉田が今野と土居の間を埋め切れていないなど、前半の半ばにして全体が間延びしてしまっており、攻守の切り替わりにおける守備組織の基本型が崩れてしまっていたこともある。

ゲームコントロールもセットで考えられるべき失点シーン

 皮肉なことに、3失点目の時にテレビではここまでのデュエルの勝率が表示されていたが、日本は36%しか勝てていなかった。

 ゴールキックをクリアされたところからシンプルにつながれてイ・ジェソンに仕掛けられるまでに5回ダイレクトでつながれたが、そのうち2回はタイトに行けば潰せるチャンスはあった。

 そこからまんまとつながれて最終的に一番危険なところでのデュエルに負け、連係のミスまで絡んでしまうという最悪の形だった。

 この3失点目は唯一の流れからの失点だったが、本大会までの半年間で“悪しき教材”として何度も見直され、チームに共有されるべきものだ。ただし、こうした現象を引き起こしたのはこの時間帯の間延びでもあり、純粋に空間的な問題としてだけ捉えるのではなく、こうした時間帯でのゲームコントロールもセットとして考えていくべきものではある。

 そして非常に酷な話ではあるが、この韓国戦で一番苦しい時間帯、試合の潮目とも言うべき時間帯であっただけに、ここで中村がキム・シウンウクとの1対1を止めていれば流れが大きく変わったかもしれない。

 それまでにもキム・シンウクのミドルシュートを止めるなどやるべき仕事はしていた中村だが、GKの3人枠に入るだけでなく、本来の正GK川島永嗣との差を埋めるには最大級のチャンスでもあった。決して簡単なシチュエーションではないが、中村としても悔いの残るシーンだったはずだ。

 試合を決定付ける4失点目は途中出場の三竿健斗がハンドで与えたFKから。速いボールをニアのストーンに入っていた小林悠の反応が遅れ、無理に右足で防ぎに行こうとしたのがシュートのようにコースを変えてしまい、ボールのコースを予測して対応していた中村の邪魔をしてしまう結果となった。

 ここは慣れない三竿の対応から守備時の信頼関係まで含め、日本が自滅した形だ。ここまで3失点していなければ起こりにくいシチュエーションかもしれないが、距離の近いワイドの位置からのセットプレーの対応として確認しておくべき形だ。

フルメンバーで戦う場合も今回の問題点を糧に

「相手のパワーがさらに上回って、デュエルを勝ち取っていた。また守り方の面で未熟なところもあり、相手を押してファウルを取られてしまっていた。最も驚いたことは、ボールを持った時のテクニックを使ったゲームコントロールだ。パスや落とし、セカンドボールの拾い方が、われわれのレベルよりも上回っていた」

 ハリルホジッチ監督はそう振り返った。失点の局面を見ると組織の不徹底、そこから導かれる判断ミスがさらなる負の連鎖を招いているが、そこまでのゲームコントロール不足に加えて、指揮官が強調してきたデュエルで勝てていないことも影響している。

 いくら韓国が日韓戦で意気込んできているといっても、彼らもソン・フンミンやキ・ソンヨンなど欧州で活躍する主力を欠いている事情は変わらない。

 半年後に対戦するセネガルやポーランドはサイズも身体能力も韓国を上回るし、コロンビアはそれら二国にも無い駆け引きのうまさがある。この韓国戦を普通に評価すれば国内組の経験不足、連係不足、デュエル不足を指摘せざるをえない部分もある。

 とはいえ指揮官が「フルメンバーのA代表でも、この韓国に勝てたかどうか分からない」と語るのは単純な戦力比較というよりは、フルメンバーで戦う場合も今回の問題点をしっかり共有して糧にしていくためだろう。

 2010年にも当時の岡田武史監督が率いていた日本が同大会で韓国に1-3と敗れ、さらに5月の親善試合でも0-2と連敗しているが、負けると悔しい相手であると同時に、課題や教訓を与えてくれる相手でもある。半年後に臨む主力メンバーも対戦相手も違うが、チームとして下を向くことなく、しかし敗因をしっかりと検証してメンバー選考や準備に生かすべきだ。

(取材・文:河治良幸)

text by 河治良幸