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最近では「UQ mobile」が注目される、KDDI傘下のUQコミュニケーションズ。元々はWiMAX2+方式によるインフラを自社で敷設し、自社で通信サービス「UQ WiMAX」を展開するキャリアなのだが、実は同社のネットワークはKDDIのauブランドでも活用されており、両社の一体化が進んでいるように見える。にもかかわらず、KDDIとUQコミュニケーションズが合併せず、別会社のままなのはなぜなのだろうか。

○KDDI系列内で事業の一体化が進むも、あくまで別会社

KDDI傘下の通信会社であるUQコミュニケーションズは、最近ではKDDIのMVNOとして展開している低価格のモバイル通信サービス「UQ mobile」が大きな注目を集めていることで知られる。だが同社はMVNOだけでなく、自社でインフラを敷設するキャリアの顔も持ち合わせている。

同社は総務省から割り当てられた2.5GHz帯の周波数帯域を用い、WiMAX方式によるネットワークを全国に敷設して、2009年からモバイルブロードバンドサービス「UQ WiMAX」を提供開始。その後の世界的なLTE方式の拡大に伴い、2013年にはLTEの方式の1つ「TD-LTE」と高い互換性を持つ「WiMAX 2+」方式を採用するなどしているが、一貫して主にパソコンやWi-Fiルーター向けを主体にしたサービスを展開するなど、自社のネットワークを用いてスマートフォンとは異なる市場開拓を進めてきたのだ。

それゆえ同社がUQ mobileのサービスを開始したのは、MVNO事業を展開していたKDDIの子会社と合併した2015年から。2007年に設立した同社の歴史から見ると、UQ mobileのサービスというのはかなり新しいものなのである。

だが実は、同社のWiMAX 2+ネットワークは、親となるKDDI自身が展開している、auのサービスにも積極的に活用されている。auは2014年より、自社で敷設したLTEのネットワークだけでなく、WiMAX 2+ネットワークにも対応したスマートフォンを提供しているが、これはKDDIがUQコミュニケーションズからネットワークを借りることで実現しているものだ。

さらにその逆として、UQコミュニケーションズ側がKDDIのネットワークを借りて提供しているサービスもある。それはUQ WiMAXの1機能となっている、より広いエリアでの利用が可能になる「ハイスピードプラスエリアモード」だ。この機能に対応したWi-FiルーターはKDDIのLTEネットワークにも対応していることから、通信量に制限はあるものの、WiMAX 2+より広いエリアでの通信が可能になる。

こうして見ると、KDDIとUQコミュニケーションズは、互いのネットワークを貸し借りしながらサービスを展開していることがよく分かるだろう。なのであれば、KDDIがUQコミュニケーションズを吸収し、一体となってインフラ整備や事業展開した方が効率がいいようにも思えるのだが、なぜ両社は合併しないのだろうか。

○合併できない理由は周波数帯獲得時の条件にあり

その理由は、2.5GHz帯の電波を取得する際、総務省から指定された条件にある。この周波数帯の割り当てが実施されたのは、携帯電話の通信方式が現在の1世代前となる「3G」が主流であった2007年だが、総務省はその割り当てを受ける企業に対し、ある条件を付けたのだ。

それは、既存の3G事業者は直接割り当てが受けられないというもの。総務省はこの時期、3Gによるサービスを展開していた企業による携帯電話市場の寡占を嫌い、競争促進のためにも新周波数帯の割り当てによって新規参入事業者を増やすことに力を入れていた。そうしたことから総務省は、2.5GHz帯の割り当てを受ける企業に対し、3Gのサービスを提供している企業やそのグループは直接参入ができず、参入企業への出資も3分の1以上してはいけないという条件を付けたのだ。

そこで携帯大手各社は、出資比率を抑えながらも自社の影響力を残す形で2.5GHz帯を獲得するべく、複数の企業と手を組みグループでの参入を図ったのである。実際、KDDIとJR東日本らによるグループ、NTTドコモとアッカ・ネットワークス(後にイー・アクセスと合併)らによるグループ、ソフトバンクとイー・アクセスらによるグループ、そして3Gのサービスを展開していなかったウィルコムの4陣営が、当時2.5GHz帯獲得に名乗りを上げている。

その結果、この帯域の割り当てを受けたのはKDDIらのグループとウィルコムで、KDDIらのグループが設立した企業がUQコミュニケーションズに名前を変え、2.5GHz帯を用いたサービスの提供に至っている。そうした経緯があることから、KDDIはUQコミュニケーションズを吸収したくても、総務省が制限を解かない限り出資比率を上げられないのだ。

同様の事例として挙げられるのが、ソフトバンクグループ傘下のWireless City Planningである。同社は2010年にウィルコムが経営破綻した際、現在のソフトバンクグループである旧ソフトバンクが、ウィルコムの2.5GHz帯を用いた通信サービスの資産を継承するべく設立した会社である。同社のネットワークは、その後やはりTD-LTEと互換性のある「AXGP」方式に変更され、ソフトバンクが「Softbank 4G」として活用している。

だが同社もやはり、2.5GHz帯の割り当て条件の影響を受けているため、ソフトバンクグループやその傘下企業であるソフトバンクは、同社への出資比率を3分の1以上に上げることができない。それゆえ同社は、後にソフトバンクグループ傘下となり、その後ソフトバンクと合併したイー・アクセスやウィルコムとは異なり、現在も独立したままとなっているのである。

既にUQコミュニケーションズもWireless City Planningも、実質的にはそれぞれKDDIとソフトバンクグループの系列企業という認識がなされており、なし崩し的に一体化が進んでいるように見える。だがこの状態は、制限を設けた側の総務省にとって、決して面白い状況ではない。総務省は現在も大手3社の寡占に厳しい目を光らせているだけに、我々の芽からすれば不自然な形で会社が独立している状況は、今後も続くことになりそうだ。