【元芸人、個人投資家 井村俊哉氏】

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◆不祥事銘柄底値買い 億トレーダーの極意に学べ!――オリンパスでの恐怖体験がペッパーフードで生きた

「信用で全力買いしたオリンパス株が暴落するのを見たときは、もう生きた心地がしませんでした」

 そう話すのは、株で1億の資産を達成した元芸人の投資家、井村俊哉氏だ。

 井村氏が本格的に株式投資を始めたのは’11年。下積み中の芸人はアルバイトで生計を立てるものだが、株で稼げないかと考えたのだ。幸い子どもの頃から貯めていた100万円の軍資金があったことから、アルバイトを辞めて収入源を絶ち切り、背水の陣でスタートした。

◆リバウンドを狙い、不祥事株に全力投資

 そんなときに発覚したのが、光学機器メーカーオリンパスの粉飾決算だ。バブル期の財テク失敗で抱えた約1000億円もの損失を「飛ばし」と呼ばれる手口で巧妙に隠蔽し、企業買収費を水増しして穴埋めするという相場史に残る悪質な巨額粉飾事件だ。

「上場廃止の可能性が浮上したこともあって、2000円台だった株価が600円近くにまで下がってきたんです。売買が成立しないほど売りが殺到していたのですが、板を見ていたら買いがどんどん膨らんできたので、『これは大きくリバウンドするぞ』と判断し、買い注文を入れてしまったんです」

 ところが、注文が成立したとたん、突如として10億円ほどの売りが新たに現れ、翌日以降、株価は約400円台まで下がってしまった。井村氏はそこで勝負に出た。残る資金のすべてを投じ、全力のナンピン買いにうってでることにしたのだ。

「そこからなんとか株価が持ち直したので、その日の終値で逃げようと売り注文を入れました。ところが、引けの直前にものすごい額の売りが入って暴落し、僕の売り注文は失効してしまったんです」

 大きな含み損と上場廃止の恐怖に怯える週末を迎えてしまった井村氏は、母親に電話し、『借金になったら株も芸人もやめて働かなくてはならない』と伝えたという。

 しかし、週明けに奇跡が起こった。東証がオリンパスの上場を維持すると発表したのだ。株価は一転してストップ高となり、井村氏は100万円の資産を倍にすることに成功した。

「九死に一生を得ましたが、値ごろ感だけで不祥事株に安易に投資するのは厳禁だと学びました……」

◆不祥事後の大逆転株 ペッパーフードで大成功

 この経験から井村氏は、短期投資のルールを厳格化。入念な企業研究による中長期投資も並行し、毎年1000万円ほどの利益を出せるようになった。特に重視するのは業績とビジネスモデルの将来性だ。投資する銘柄は少数に厳選し、社長に直接質問できる株主総会にも、必ず出席するようにしているという。

「ファッション通販の『バイマ』を展開するエニグモが、傘下サービスのPRにモデルの紗栄子さんを起用した時、『ライバル企業(ゾゾタウンを展開するスタートトゥデイ)の社長の彼女を起用していいのか?』と総会で質問したら吹き出されましたよ」

 ’17年には「いきなりステーキ」で大躍進したペッパーフードサービスで、投資額を3倍にする成功を収めた。ペッパーフードといえば、’07年にペッパーランチの従業員が女性客を拉致監禁してレイプするという事件を起こしている。さらに追い打ちをかけるようにO-157の食中毒事件を起こし債務超過寸前に陥るという、まさに不祥事でどん底を見た銘柄だ。

「ペッパーフードはその成長性に注目したんですが、投資する前に過去の不祥事についても調べました。凶悪なレイプ事件から債務超過寸前にいたるプロセスを想像すると、僕が社長ならとてもメンタルが持たないと思うほどキツい。そんな状況下から誠心誠意、まっすぐな経営で這い上がった会社だから、本物だと判断して投資したんです」

 直近1年で株価が’10倍超になったペッパーフードサービスは、’17年の株式市場を大いに盛り上げたテンバガー銘柄のひとつ。不祥事株投資は大きなリスクを伴うが、得られる果実も大きい。

【元芸人、個人投資家 井村俊哉氏】
’11年に100万円の元手で株式投資を本格スタートし、’17年4月に1億円を達成。キングオブコント2011で準決勝に進出したコントトリオ「シンブン」(元ザ・フライ)の一員だったが、’17年6月に引退。中小企業診断士

取材・文/森田悦子 取材/高城 泰(ミドルマン) 図版/ミューズグラフィック

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