E-1選手権。日本は最終戦で韓国に1-4と惨敗し、優勝を逃している。


韓国戦に負けた後は韓国の強さを力説していたハリルホジッチ

「初めて集まって、初めてプレーした選手ばかりで……」と、ヴァイッド・ハリルホジッチが大会を通じて語っていたように、急造チームが息の合ったプレーをする難しさはある。しかし、参加国はどこもそれぞれハンデを背負っており、言い訳にはならない。北朝鮮は調整試合をしたが、相手はフィリピン、マレーシア。中国はリーグ終了後1カ月半も経過している。そして日本はホーム開催だった。

 戦術的にはとにかく蹴り込むだけ。頑迷で一本調子な戦い方でボールを失った。例えば開幕の北朝鮮戦は象徴的だろう。

「ハーフタイムに『真ん中のビルドアップで引っかけられると、カウンターのチャンスを与える。それよりはとにかく裏を狙え』と言った」

 ハリルホジッチはそう指示を与えているが、日本はむしろ後半になってペースを握られていた。実力差のある相手に、怯えたようにボールを蹴り込む必要があったのか。中村航輔のファインセーブと井手口陽介の一発で勝っただけの試合で、指揮官の采配の妙は見えなかった。

 ハリルホジッチは自らが信じるタクティクスを頑なに用いている。相手の状況や戦力に応じて変化させることはない。「縦に速い……」という戦術自体が悪いのではない。その戦術の運用の仕方が間違っているのだ。ロシアW杯では、すべて格上との勝負になるのだが……。

 戦術の正しい運用という意味でひとつの例がある。

 バスク代表監督であるミケル・エチャリは、2015年12月にカンプノウでカタルーニャ代表と対戦している。

 相手のカタルーニャ代表には、最強を誇るバルサの面々がずらりと顔を揃えていた。バックラインからボールをつなぎ、運ぶ、そのスキルは見惚れるほどだ。右SBにアレイチュ・ビダル、CBにジェラール・ピケ、マルク・バルトラ、左SBにジョルディ・アルバ、アンカーにセルジ・ブスケッツ。バルサのオートマチズムをそのまま使える陣容だった。

 バルサの本拠地であるカンプノウでの一戦に無策で挑めば、なすすべなく敗れることは必定だっただろう。バスク代表は1年に1回集まるだけの、それこそ急造チーム。コンビネーションには限界がある。

 そこで、バスク一の戦術家であるエチャリは一計を案じた。

 4-2-3-1に近い布陣で、まずはトップのアリツ・アドゥリスがバルトラにふたをし、左MFイケル・ムニアインがビダルを封じ、右MFシャビ・プリエトがアルバを抑える。トップ下に入ったFWガイスカ・トケーロはブスケッツへのラインを遮断した。カタルーニャがボールをGKに戻した場合、アドゥリスがバルトラへのコースだけを切って、プレスをかける。すなわち、ピケにボールを持たせる、という状況を作っている。

 戦術上は奇策だった。なぜなら、ピケは世界で最も球出しに優れるCBで、彼自身もテクニックに自信を持つ。本来ならバスクとしてはピケに持ち味を出させない、とするのが正攻法だろう。

 しかし、エチャリは「最もフィードに優れるがゆえに過信もある」と考え、ピケにあえてボールを持たせ、蹴らせるように仕向けた。

 案の定、ピケは自らの力を恃(たの)み、ロングボールによって事態の打開を図った。相手の裏を狙い、逆サイドまで展開し、いくつも長いボールを蹴っている。しかし、それはエチャリの計略にはまったのだ。

 バスク人選手は、体が頑健で高さに強く、当たりに負けないという特長がある。平均身長185cmのバックラインは、170cm台の小柄なカタルーニャの選手に対し、高さではことごとく競り勝った。技術面ではカタルーニャ人選手に劣るが、高さ勝負という自分たちの土俵に相手を誘い込んで優位を得た。

「戦術は自分たちの優位を生かすためにある」

 そう語るエチャリの言葉は重い。結局、バスクはカタルーニャのビルドアップを潰す局面勝利を梃子(てこ)にして、全体の戦略を有利に動かした。カウンターの流れから相手を押し込んだ後、アドゥリスが決勝ゴールを決め、0-1とアウェーで勝利を収めている。その後、多くのチームがエチャリの戦術を採用することになった。

 もちろん、同じ戦術を日本代表が採ることはできない。なぜなら、高さに優位性がないからだ。

 ハリルホジッチが志向している戦術は、スピードと激しさがベースにある。それはひとつの”解”ではあるだろう。例えば今回も、伊東純也(柏)は掘り出し物だった。
 
 しかし、その戦い方に適した日本人選手がどれだけいるのか。単純に蹴り込んで、高さ、強さの勝負を挑んでは明らかに分が悪い。ボールを持てる選手を主軸にするほうが、日本人の優位性を生かせる戦術ではないのか。

 その疑問は捨ててはならない。


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