医療業界で注目されている奇跡の成分とは?

写真拡大

絹といえば、着物やパジャマ、靴下といった衣類を思い浮かべる人が多いだろう。教えて!gooウォッチの「絹という素材の素晴らしさと魅力を探ってみた!」でご紹介したように、実はさまざまなものに使われている。医療現場でも利用されているのだが、特に最近注目されているのが「セリシン」という成分だ。それがどんな成分で、どんな効果があるのか、セリシンを使ったさまざまな事業を展開するセーレン株式会社研究開発センターの佐々木真宏さんに話を伺った。

■守る力をもつセリシン

セリシンとは、どのような成分なのだろう。

「繭を構成する成分で、絹になるフィブロインという成分を取り囲むタンパク質のことです。このセリシンが紫外線や乾燥からカイコを守っています。中国には、昔から繭を煎じてセリシンを飲む習慣があり、生活習慣病を予防していたそうです。先人はセリシンの『守る力』を、経験的に知っていたのかもしれません」(佐々木さん)

生活習慣病の予防とはいえ、繭を煎じて飲むというのにも驚きだ。そんなセリシンが発見されたエピソードは、その効果をよく証明するものであった。

「セリシンの発見は、社名の由来でもある『精練(せいれん)』作業でした。精練とは、絹を水洗いしてセリシンを取り除き光沢を出す作業のことです。冬場は厳しい水仕事となるのですが、職人達の手が白く美しかったことから、セリシンの研究が開始されるようになりました」(佐々木さん)

通常、冬場の水仕事といえば、あかぎれやしもやけをイメージする厳しい環境だ。そのような環境であっても、手が白く美しく保たれるとは……。

■セリシンは肌のうるおい成分と似ていた

セリシンの研究を進めた結果、以下のようなことが分かったという。

「肌のうるおい成分であるNMF(Natural Moisturizing Factor)は、天然保湿因子とも呼ばれています。主な成分はアミノ酸で、水分を取り入れる吸湿性と、水分をキープする保湿性に優れ、角質層の水分維持や柔軟性に大きな役割を果たしています。セリシンは、NMFに含まれるアミノ酸とよく似ている唯一の天然成分なのです」(佐々木さん)

さらに判明したことがあるという。

「肌が生まれ変わるサイクルのことを『ターンオーバー』といいますが、これが乱れると、肌トラブルの原因になります。セリシンは肌表面の古い角質を切り離す酵素の働きを助け、ターンオーバーを正常化して肌のキメ改善に役立ちます。また、活性酸素を抑えシミの元となるメラニンの生成をブロックし(1)、紫外線により生じる肌細胞のダメージ回復に働きかけます(2)」(佐々木さん)

佐々木さんによると、ダメージを受けた髪を補修し、ハリやコシを与える効果も期待できるとのこと。

■摂取しても胃酸などで分解されないセリシン

冒頭で繭を煎じて飲む話が出たが、セリシンの服用による研究も行われているという。

「セリシンは摂取しても胃酸などで分解されずに、確実に腸まで届きます。そして、腸内で善玉菌のエサとなります。腸の働きが活性化すれば免疫力が高まり、腸の老化防止などに期待がもてます(3)。また、ミネラルの吸収を高めたり(4)、便秘を改善したり(5)、食物繊維のような効果も期待できます」(佐々木さん)

腸にダイレクトに届くことで、腸内環境を正常な状態にしてくれるという。

「セリシンは、長寿の方が多くもっている、長生きホルモンともいわれる『アディポネクチン』の分泌への促進にも期待ができます(6)。アディポネクチンは、血管の老化、糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化、ガンなどの予防効果への期待も高まり、注目も集まっています。また、セリシンはさまざまな病気や老化の原因となる活性酸素を抑制する『抗酸化』という働きにより、細胞の老化を抑え、若々しく元気な体を保つ効果にも期待されています(7)」(佐々木さん)

着物文化が残る日本人にとって、これまでも絹は生活に密着したものであった。今後研究が進むにつれ、さらに我々の生活になくてはならないものになる日も、それほど遠くはないのかもしれない。

●専門家プロフィール:佐々木 真宏
セーレン株式会社 研究開発センター 農学博士。
入社以来、セリシンの研究開発を担当。セリシンを美容や健康分野だけでなく、iPS細胞の保存や検査薬等、医療分野にも展開中。最近、セリシンの研究情報をまとめたピュアセリシンTM研究室を開設。

文献名
(1) Biosci. Biotechnol. Biochem., 62, 145-147, 1998
(2) J. Photochem. Photobiol. B., 71, 11-17, 2003
(3) J. Nutr., 141, 1975-1981, 2011
(4) Nutri. Res., 20, 1505-1511, 2000
(5) Food Sci. Technol. Res., 6, 280-283, 2000
(6) Biosci. Biotechnol. Biochem., 74, 1534-1538, 2010
(7) J. Nutr. Sci. Vitaminol., 53, 297-300, 2007

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)