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●1984年から紡いできた「LTPS」

ジャパンディスプレイ(JDI)は、かつての日の丸ディスプレイ企業の6社が集まってできた企業だ。日本の高い技術力、そして高いシェアを誇った分野の結晶とも言える存在だが、現在は経営再建中という状況にある。ジャパンディスプレイを支えるコア技術について、同社の執行役員 チーフテクノロジーオフィサー(研究開発統括部統括部長)である瀧本 昭雄氏が説明を行った。

○90%以上がディスプレイになる近未来のスマホ

瀧本氏は、「ディスプレイには多数のTFT(薄膜トランジスタ)が使用されている。ひとつひとつの画素に入っているTFTがディスプレイの画質を決めることになる。ジャパンディスプレイのコア技術は薄膜トランジスタのひとつの方式であるLTPS(低温ポリシリコン)に尽きる」と話す。

LTPSは、透過型LCDや反射型LCD、そして有機ELといったさまざまなデバイスのベース技術となるため、将来の多種多様なデバイスにとって重要な技術となる。現時点でも、メジャーなバックプレーン技術として成長を遂げており、「まもなく、アモルファスシリコンと構成比が逆転することになる」(瀧本氏)。ジャパンディスプレイは1984年からLTPSの製品化に取り組んできたうえ、国内にある生産拠点もすべてLTPSの生産を行っている。

特にこの先進性が生きるのが「FULL ACTIVE」と呼ばれる製品だ。LTPSの特徴のひとつが「デザインの自由度」であり、現在のスマートフォンのトレンドとなりつつある「狭額縁化」と「曲面化」「ベンダブル化」で大きく効果が発揮できるという。

「スマートフォンの画面専用率は2012年に60%だったものが、2015年は70%、2017年では80%になってきた。このトレンドは今後も続き、『画面占有率90%』を超える仕掛けが必要になってくる。FULL ACTIVEの方向性に間違いはなく、更なる狭額縁化や大画面サイズを提供できる」(瀧本氏)

瀧本氏によれば、単に「狭額縁化を実現する」と言っても、狭額縁化は3つの技術によって実現できるものだそうだ。

0.5mmという狭いところにまで回路を作り込むことができる狭額縁技術

LEDから表示部までの光学設計の最適化により光導入部をミニマム化するバックライト技術

COF(リシコンオンフィルム)による高密度実装技術

○中型液晶や切り欠け液晶も、多彩な技術力をアピール

また、LTPSは異形状ディスプレイについても応用度が高い。こちらも、ゲートドライバ回路の内蔵化や、ゲート線と信号線の負荷調整による電気的時定数の最適化、高精度な整形技術や額縁部分の構造といった外形整形技術などで成り立つ。

「異形状ディスプレイは曲線や穴あき、切り抜きという整形が可能。6.6型のスマートフォン向け異形状ディスプレイの場合、ラウンドコーナーではR6mm、ガラスでR6.6mmでの整形ができ、6mm×6mmでの切りかけが可能である。今後、需要にあわせて製品化していくことになる」(瀧本氏)

そのほかにも、同社のコア技術であるLTPSを生かしたいくつのかユニークな製品を開発している。例えば、高透過・透明ディスプレイでは、偏光板やカラーフィルターがなくても従来の透明ディスプレイの1.5倍以上の透過率となる70〜80%を実現する。ARや車載、ショーケースなどでの利用提案を行うという。

また、「LTPSの最高峰」と銘打つ17型高精細8K4Kディスプレイでは、500ppiで120Hz高速駆動の製品を開発し、すでにNHKが利用している。また、約130度の広視域角での3D表示が可能な8K4Kディスプレイをベースにした広視野角ライトフィールドディスプレイも開発し、左から右に動きながら見ると、静止画の3D画像の影が視点にあわせて移動してみえるという次世代3D映像ディスプレイも実現している。

他方で超低消費電力反射型ディスプレイについてもすでに量産化。32型フルHDのディスプレイの画素にメモリ(SRAM)を内蔵し、200分の1という超低消費電力を実現しており、「屋外での視認性を確保しながら、大きな電源を確保しなくても利用できる」という。

●18年度売上は数十億円も、JDIが期待する「VR専用液晶」

一方で、この技術説明会の目玉は、仮想現実ヘッドマウントディスプレイ(VR-HMD)専用の3.6型803ppi低温ポリシリコンTFT液晶ディスプレイだった。2018年春にサンプル出荷を開始し、2018年上期には1000ppi超のディスプレイを開発する予定だという。

「VR酔いなど、ユーザーの目や脳に負担をかけないためにVR-HMDが必要だが、現在のスマートフォンディスプレイでは不十分。スマートフォンディスプレイをVR向けに改良するか、VR専用機が必要である」(瀧本氏)という環境のため、同社はVR専用機向けの液晶ディスプレイを投入し、市場ニーズに対応していく。

JDI ディスプレイソリューションズカンパニー ディスプレイソリューションズ 第1事業部 商品部応用技術1課 課長 原山 武志氏

JDIのVR向けの取り組みでは、2016年10月に「651ppiのVR専用機向け液晶ディスプレイ」を製品化し、すでに量産体制に入っているが、「レンズ越しに見ると、画素の固定パターンが見える場合がある。今回発表した803ppiの精細度を実現することで、画素の格子が固定パターンとして見える現象の『スクリーンドアフェクト」がなく、画像のリアリティを向上できる」(JDI ディスプレイソリューションズカンパニー ディスプレイソリューションズ 第1事業部 商品部応用技術1課 課長 原山 武志氏)という。

ただし800ppiがゴールではなく、HMDを小型軽量化するためにはディスプレイを小さくし、レンズの倍率を大きくする必要がある。これには1000ppi以上の高精細化が必要であり、実際に引き合いもあるという。

「(1000ppi級では)画像のリアリティを追求できるだけでなく、ディスプレイの解像度を維持したまま小型化、さらにはコストダウンにもつながる」とし、「ジャパンディスプレイは、VR専用高精細ディスプレイ分野において、リーディングポジションを維持していきたい」と原山氏は話す。

ただ、VR-HMD市場は市場全体の動向が読みづらく、調査会社によって需要動向にばらつきがある。その点については「300ドル以下の手頃な価格の製品が出始めたことで、ハードウェア市場がようやく広がる気配が出てきた。2018年以降の立ち上がりが期待できる」とした。

技術的な課題では、表示解像度だけでなく、データ量や転送速度の課題もあり、有線ケーブルによるHMDシステムが主流となっている。この点については、スマートフォン向けに5Gが2020年より提供されるため、アプリケーションやサービスの広がりが生まれ、ひいては「VR-HMD専用機の市場拡大が見込まれる」と予測する。これらの市場予測から、同社はVR-HMD専用機市場で、2018年度に数十億円規模の売り上げ規模を目指す。