北海道・比羅夫にある3階建て、400屬諒件。ベッドルームは6つあり、16人が宿泊できる。宿泊費は1泊21万3000円(写真:ホームアウェイ)

日本を訪れる外国人の数が増え続けている。日本政府観光局が発表した10月の訪日観光客数は、259万人と前年同月比21.5%増加。1〜10月の累計は2379万人となり、このまま行けば今年中に3000万人に迫る見通しだ。
一方、取りざたされるのがホテルなど宿不足。加えて、リピート客が増える中で、宿泊スタイルの多様化も求められている。こうした中、政府は、来年6月に住宅宿泊事業法(民泊新法)を施行する予定で、一定基準を満たせば、誰でも民泊事業が行えるようになる。
この「民泊夜明け前」に目を付けて、事業を拡大しようとしているのが、米旅行サイト大手エクスペディアの子会社、HomeAway(ホームアウェイ)だ。2017年に日本でのサービスを本格化し始めた同社が得意とするのは、「バケーションレンタル」と呼ぶ「家一棟丸ごと貸し」。欧米では人気のある宿泊スタイルで、グループや家族など大人数での利用が多い。
日本では、民泊だとAirbnbの知名度が圧倒的に高いが、そもそもホテルや旅館といった宿泊施設以外に泊る習慣が浸透していない。こうした中、ホームアウェイが期待するのが外国人観光客の存在だ。来日したクリスティン・ノルト上級副社長と、アジア市場のマーケティング総責任者を務めるデュディス・デビッドソン氏に、日本市場のポテンシャルなどについて聞いた。

家ではなく、体験を提供したい

――日本ではすでに、Airbnbなどが進出していますが、このタイミングでサービスの強化を図る意味は。

クリスティン・ノルト(以下、ノルト):日本で民泊の規制緩和が進む中で、大きなチャンスを感じており、準備を始めたいと思っている。人々が日本に旅行する際、ホームアウェイがオプションの1つになることは大きい。サービス面だけでなく、マーケティングやサイトなども準備している。ホームアウェイにとっては、非常に大きな取り組みとなっている。米国の本社などからも、いろいろな人材が来て支援しているところだ。

――ホームアウェイとAirbnbの違いは何でしょうか。


ベッドルーム3つ、8人が泊まれる京都にあるリノベ町屋。1泊3万3255円。(写真:ホームアウェイ)

ノルト:基本的には家族やグループ旅行を対象にしているので、ベッドルームが複数あるような一棟貸し物件が多い。農場や牧場、お城、ボートハウス、ツリーハウスなどユニークな物件もたくさんある。

私たちが目指しているのは、単に家を貸すことではなくて、家族やグループがその家でいろいろな体験をできること。多くの人は旅をするとき、「旅先」を重視するけれど、私たちはすばらしい旅先で、リアルかつすばらしい体験をしてほしいと思っている。


新法施行は、ホームアウェイの追い風になると話すノルト上級副社長(撮影:尾形文繁)

――日本でのサービス拡充で最も期待することは。

ノルト:圧倒的な成長だ。それが期待できる理由は2つある。1つは、日本を訪れたい観光客が爆発的に増えていることがある。もう1つは、ホテル不足が指摘されていることで、私たちは迅速にその穴を埋められる存在になると考えている。日本への旅行需要は、日本国内やアジアだけでなく、欧州でも増している。

デュディス・デビッドソン(以下、デビッドソン):日本は今、間違いなく世界中でもっとも注目度が高まっている旅先の1つだ。2019年にはラグビーのワールドカップがあるし、その翌年には東京オリンピックがあるしで、世界中でいろんな人が日本の話をしている。

新法は大きな追い風になる

デビッドソン:私自身は、シンガポールをベースに働いているのだが、シンガポールだけでなく、台湾や香港など、アジアの人々の多くが今一番行きたい場所として日本を挙げる。

しかも、シンガポール人の場合、3、4回訪れている人がいるほど、日本への旅行のリピート率は高い。初めて行く場合は、東京や京都を回るだけだが、回数を重ねるごとに日本をもっと「探索」したいと思うようになる。なぜなら、日本は探索すべき場所にあふれているからだ。

観光客の目的は食べ物だったり、自然だったりさまざま。今の時期だったら紅葉や雪を見たり、温泉に入ってみたいという人が多い。私のように暑い国に住んでいる人にとって、今の時期の日本は「暖かい服」を着るチャンスでもある(笑)。

――日本で旅行業をやる難しさはありますか。

ノルト:むしろ、新たな規制(来年6月に施行される住宅宿泊事業法)は、私たちにとってはチャンスになると考えている。新法はバケーションレンタルを正当化するだけでなく、市場を形成する役割を果たしてくれると思う。これによって、市場が一気に膨らむことが予想される。これまでは、グレーな部分が多かったが、新法は私たちが重点を置いている家のレンタルにとっては追い風だと考えている。

――日本では、瀬戸内沿岸7県と事業者が設立した観光促進を行う法人「せとうちDMO」と組んでいます。

デビッドソン:せとうちを通じて、海外からの観光客を、これまで行ったことのないような場所に導き、滞在させたいと考えている。せとうちには、たくさんの伝統的な日本家屋があり、観光客は日本の地方でしかできないような、本当の日本の生活を体験できる。東京のような大きな街を飛び出して、地方でしか会えないような人に会ったり、食べられないものを食べられるようになるのは観光客にとってはうれしいことだ。

長期滞在者は肩肘をはらずに滞在したい

――日本に対する関心がそこまで高いとは・・・。

ノルト:口コミの威力が大きい。たとえば、今回私が知人たちに日本に行くという話をしたところ、4人から「去年日本に行って、とんでもなくすばらしい体験をした」「人生でベストな時間だった」とか、「来年行くから詳しく教えてほしい」など熱い反応があった。10年前だったら誰も食いつかなかっただろう。

デビッドソン:日本にいたら気が付かないだろう。日本には、ビックリするような大都市があるだけでなく、文化も多様で、地方に行けば美しい地形や風景に出会える。山があって、海や海岸があって、食事も最高だし……。たとえば、シンガポール人には美食家が多いが、日本に行くと伝えると、みんなが「あそこでこれを食べたほうがいい」と教えてくれる。

――外国人が日本に来る場合、最近ではどういったところに泊まってみたいと思っているのでしょうか。

ノルト:米国人の例で言うと、彼らは日本に来る場合、8〜10日間くらいの日程を組んでくる。となると、1カ所にとどまることはないが、多くの人は「伝統的な日本の体験」を望んでいる。その中で、食べ物だったり、観光だったり、重視するポイントに分かれて旅を計画するという感じだ。いずれにしても、米国人の場合は、バケーションレンタルになじみがあるので、それぞれの場所で自分の求める旅行スタイルにあった宿に泊まりたいと考えている。


ニュージーランド出身で、現在はシンガポールに拠点を置き、アジア市場を見ているデビッドソン氏(撮影:尾形文繁)

デビッドソン:家族やグループで旅行する場合は、ベッドルームがたくさんあったり、キッチンがついている宿に泊りたいというニーズが高い。特に子どもは食べ物が難しいので、キッチンがあるにこしたことはない。

また、家族にとっては、肩肘をはらずにゆっくりできるという意味でも、民泊需要は高い。10日間、しかもバケーションで滞在するとなると、どうしても「リラックスしたい」という気持ちが強くなる。となると、リビングルームやキッチン、複数のベッドルーム、と家と同じような宿が望ましくなる。また、大勢の場合、ホテルより安価だという点も大きい。

――となると、ホームアウェイを主に使うのは、訪日外国人ということになりますか。

ノルト:日本人の利用も見込んでおり、日本人に響くような戦略を目下展開しようと考えている。このほかにも、アジア向け、欧米向けとそれぞれ展開方法を考えている。

――現在、日本ではどれくらいの家がレンタル対象になっているのですか。

ノルト:約1万件だが、今後2年間で急速に増えるだろう。2020年までには、10万件に増やしたいと考えている。日本は、2020年までに観光客を現在の2倍である4000万人に増やしたいとしているが、宿不足は深刻な問題だ。ホームアウェイの場合、単なる泊まる場所にとどまらず、ユニークな体験ができるという強みがある。

「プリンセスマニア」のスゴい家

――そもそも、日本ではバケーションレンタルというコンセプトになじみが薄いですが、今後どうやってホームアウェイの認知を広げていきますか。

ノルト:いくつか方法はあると思う。たとえば、直接ホームアウェイのホームページを訪れて、借りたい家を探すこともできるし、私たちはエクスペディアグループでもあるので、エクスペディアを通じて、宿泊先を探すこともできる。このほかにも、今後新たなマーケティング策を通じて、日本人にとっての新しい旅の形について認知を広げていきたいと思う。

――日本では、せとうちDMOのほかに、楽天とも民泊物件の提供で手を組んでいます。仕入れを増やすには今後も提携が欠かせないと思いますが、提携先の条件は。

ノルト:つねに提携先を探しているが、数が多ければいいというわけではなく、(提携先の)数は少なくても深い付き合いをしたいと考えている。今後、地方を中心に事業を拡大するうえで、提携先を増やすことは欠かせないが、組む前にしっかりと相手のニーズを把握して、それを私たちが満たせるかどうか、互いのブランドがマッチするかどうかを重視したい。

――日本にかぎらず、ノルトさんとデビッドソンさんが、個人的に気に入っている物件はありますか。

ノルト:最近、「子どもととまりたい世界の物件ベスト10」というキャンペーンをやったのだが、その中に文字どおりのウォーターパークがあった。たとえば、子どもを連れて同窓会をやったりパーティをやるのにピッタリな物件だ。宿泊料も1泊約2000ドルと、たとえば1部屋2人で40人泊まれるとしたら破格だ。古い消防署をリノベした物件もあった。実際に使われていたポールなどが残っていて、子どもたちは消防署員のようにポールを使って2階から1階に移動できる。

デビッドソン:台湾に大のプリンセスマニアが貸しているものすごく面白い物件がある。衣装部屋にはドレスが山のようにあって、宿泊客は好きなドレスを着ることができる。しかも、オーナーがお茶会を開いてくれるので、女子の集まりにはもってこいかもしれない。