14日に愛知県で行われた実証実験

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 人が運転に関与しない完全自動運転車を見据えた公道での実証実験が、全国で相次ぎ実施されている。14日には愛知県と東京都で運転席に人のいない「遠隔型」の車両の公道実験が始まった。18日には石川県で、全国初の車両内無人の自動運転車の公道実験が行われる。自動運転が技術的には実用化水準に達しつつある中、今後は具体的なサービス提案や規制緩和などがカギとなりそうだ。

運転席無人「遠隔型」が走る
 名古屋市から車で南東に約1時間。筆柿の特産地として知られる愛知県幸田町を14日、「公道実証実験中」と書かれた白のミニバンが走り抜けた。運転席は無人。全国初の「遠隔型自動運転車」の公道走行が始まった。

 実験は愛知県が2017年度に県内10市町で行う実証実験の一環だ。高精度3次元(3D)地図を手がけるアイサンテクノロジーに委託して実施。自動運転ソフトウエアなどを手がける名古屋大学発ベンチャーのティアフォー(名古屋市中村区)やKDDIなども関わる。

 実験では、自動運転ソフトを搭載する車両が公道に設定した全長約700メートルのコースを時速15キロメートル以下で周回した。人が運転に関与しない「レベル4」の自動運転に当たり、加減速や操舵(そうだ)、交差点での合流などすべて自動だ。14日午前に試乗した愛知県の大村秀章知事は「近未来を体験したような思いだ」と語った。

 同じ日の午後、東京都江東区では自動運転開発ベンチャーのZMP(東京都文京区)が遠隔型自動運転車の実証実験を始めた。20年を目指して開発する「無人タクシー」の実現に向けた重要なステップと位置付ける。ZMPの谷口恒社長は「これまで許可が出ていなかった実験を行える。チャンスをいただいている」とした。

 自動運転車の公道実証が各地で盛んに行われる背景には、政府の規制緩和がある。警察庁は6月、遠隔制御された自動運転車の公道実験を可能とする新しいガイドラインを策定した。従来の自動運転車の公道実験では、緊急時は人がハンドルやブレーキを操作できるよう常に待機する必要があった。

 新ガイドラインにより、車内に人がいなくても遠隔で監視していれば公道での実験走行が可能になった。「完全自動運転車」への道筋がより近づいたと言える。

米国、誘致加速 企業集積へ自治体も競争
 自動運転車の実用化をめぐっては、メーカー間だけでなく、企業集積を狙う政府や自治体間の規制緩和でも激しい競争が起きている。米カリフォルニア州当局は10月、無人での自動運転車の公道実験を認める規則改定案を公表した。

 同州は14年から有人の自動運転車の公道実験を認めており、17年10月時点で42社が州内の公道で試験走行する許可を取得した。シリコンバレーを中心に自動車メーカーからITベンチャーまで多くの実験車両が道を行き交う。

 一方、自動運転に関する規制が比較的緩いとされるアリゾナ州でも米グーグル系の自動運転開発会社ウェイモなど、自動運転車の実験が進む。米国では州政府間の企業誘致策の一つとして自動運転の規制緩和が持ち出されることが多くなってきた。

 トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなど日本の車メーカーはシリコンバレーに拠点を置き、自動運転の研究を進める。米ゼネラル・モーターズ(GM)は6月に電気自動車(EV)ベースの自動運転車の生産を開始。部品メーカーでも独コンチネンタルがEV無人タクシーの実証実験を9月に始めるなど、自動運転技術は実用化が目前に迫ってきた。

日本、制度設計急ぐ
 こうした中、日本政府も完全自動運転車の実用化を見据え、関連法規の見直しなどの制度設計を急いでいる。6月に閣議決定した成長戦略「未来投資戦略2017」では重点5分野の一つに「移動革命の実現」を掲げ、自動走行などの技術で物流や移動サービスの高度化を進める方針だ。

 まずは20年頃に「レベル3」以上の自動運転の実用化を想定し、17年度内に交通関係法規の見直しなどをまとめた政府全体の方針(大綱)を出す考え。

 無人自動走行による移動サービスを20年に実現、高速道路でのトラック隊列走行を22年にも商業化することを目指す。今回相次いで始まった遠隔型自動運転車の実証も、この目標に沿ったものだ。

 18日からは経済産業省と国土交通省が、国内初となる車両内無人自動走行の実証を石川県輪島市で始める。産業技術総合研究所が開発した運転操作不要の「レベル4」の技術を採用し、安全性、走行性能などを検証。無人自動走行システムの実用化につなげる。

 国土交通省はまた、17年度に全国十数カ所の「道の駅」などで自動運転の技術やサービスの実証実験を進めている。高齢化が進む中山間地域での交通手段や物流を確保するのが狙いだ。実証にはディー・エヌ・エー(DeNA)、先進モビリティ(東京都目黒区)、ヤマハ発動機、アイサンテクノロジーの4社が車両を提供。それぞれに全地球測位システム(GPS)や磁気マーカー、電磁誘導線といった異なる技術を使い、信頼性やコストの検証を重ねる。

 全国で自動運転車の公道実証が進むことについて、ティアフォー創業者で現取締役の加藤真平氏(東京大学大学院准教授)は「日本も(規制緩和で)決して後れを取っているわけではない」と話す。同社は、自動運転技術の実証が一定程度進んだ段階で、次の一手として自動運転車を使ったサービスの実験に移る構えだ。

 同社は12月上旬、アイサンテクノロジーや3Dプリンター受託製造サービスのカブク(東京都新宿区)などと連携し、完全自動運転の小型EVを開発。18年春以降に愛知県内で、自動運転車を使った車内サービスの実証実験を始める。自動運転は車の一機能にとどまらず、無人タクシーや車内でのエンターテインメントなど具体的なサービスとセットで実用化が進む見通しだ。

(文=名古屋・杉本要、大串菜月)