ザ・ローリング・ストーンズが1日、ライブアルバム『オン・エア』をリリース。発売を記念し著名人が選ぶストーンズ・プレイリストとしてこれまでに、漫画家の高橋ツトム氏、ダイアモンド☆ユカイ、花田裕之、高見沢俊彦が選ぶプレイリスト「ストーンズ My Play List」が主要ストリーミングサイトで公開されている。同アルバムは1963年〜65年の間にラジオ番組用に録音されたライブ音源を集めたもので、初の公式ライブ音源。BBCのラジオ番組『Saturday Club』、『Top Gear』、『Rythm and Blues』、『The Joe Loss Pop Show』などから貴重なライブ音源を収録。「ロール・オーヴァ―・ヴェートーベン」など正式にレコーディング、もしくは発売されなかった曲も収められた1枚となっている。様々な音楽の楽しみ方ができる現在だからこそ、60年代の人々が体感していた音楽を知る上で貴重な音源ではないだろうか。以下にそのレビューを書き記したい。

オリジナル曲に対する愛情

デラックス盤

 今作は通常版、2枚組CDデラックス・エディション、重量盤LP、特別限定カラーLPの全4種類が発売される。今回はこの内、2枚組CDデラックス・エディションを聴いた。ロック聡明期からザ・ビートルズなどとともに様々なアーティストたちに影響を与え、現在も現役バンドとして世界各地でライブをおこなう彼ら。今でもそのエネルギッシュなパフォーマンスには驚愕させられるが、当時からそのライブバンドとしての確かな素質が備わっていたことを改めて知ることができる音源だ。

 作品の冒頭を飾る「カム・オン」は、既にデジタル音源として配信されている。彼らの記念すべきデビューシングルで、1963年6月に発売された。今作のテイクはBBCのラジオ番組『Saturday Club』で初めて演奏されたライブ音源となる。1969年に亡くなったブライアン・ジョーンズさんのブルースハープの音色から、チャーリー・ワッツ(Dr)の疾走するリズムとコーラスワークが印象的なナンバーだ。続く代表曲「サティスファクション」は、今までも様々なバージョンがリリースされているが今回のものはミック・ジャガー(Vo)の歌声が優しく撫でるような繊細なもので、また新たな印象を受ける。キース・リチャーズ(Gt)の愁いを帯びたギターサウンドと、サビで爆発するミックのパワーみなぎる歌声が絶妙にマッチしている。

 オリジナル曲のほかにも、「ロール・オーヴァ―・ヴェートーベン」、「メンフィス・テネシー」、「ビューティフル・デライラ」などチャック・ベリーのオリジナル曲などお馴染みのR&B定番曲も収録。若かりし頃に彼らが大いに影響を受けたブラックミュージックを喜々として演奏している様子が目に浮かぶような生き生きとしたグルーヴを感じることができる。中でも、「メンフィス・テネシー」はクリアなトーンのギターサウンドと、ミックの優しくささやく様な歌声のコントラストが美しいナンバーで、彼らのオリジナル曲に対する愛が伝わってくるようだった。

現代に蘇るロックンロール前夜

通常盤

 Bounus Discに収められている「アイ・キャント・ビー・サティスファイド」は、当時のベーシスト、ビル・ワイマン(1993年に脱退)の奏でるベースラインがとても印象的で、そこに重ねられるスライドバーを使用したギターサウンドがサイケデリック感をもたらす。続く「恋をしようよ」では、ミックのシャウトに会場の黄色い歓声が応える様子が聴かれ、臨場感あふれる1曲となっている。最後を飾る「南ミシガン通り2120」はループするギターサウンドに合わせ、ブルースハープとギターソロが映えるインストナンバーだ。若い彼らのエネルギーが爆発したような自由な演奏が格好良い。

 昨年12月にリリースされた『ブルー&ロンサム』は、ストーンズが50年ぶりに彼らのルーツであるブルースの名曲をカバーした作品だった。今作はそのルーツから自らの長いロックバンドとしてのキャリアを積み上げていく、その前途洋々な彼らの姿をライブ音源として“真空パック”したものだ。

 当時の演奏の雰囲気をできるだけ忠実に再現できるように、オリジナルテープには“音源の分離”が施された。英・アビイ・ロードのエンジニアがそれぞれのトラックのオリジナル楽器や音声にアクセスし、バランス調整をして質感ある音に仕上げるミキシング作業がおこなわれたという。半世紀以上前のライブ音源をみずみずしく再現できたのは、こういったデジタル技術の進化のおかげでもある。

 ストーンズは毎晩のようにナイトクラブやダンスルームで会場を満員にするブルースバンドとして人気を博していた。その当時の人気も観客の歓声やラジオDJの紹介から窺い知ることができる資料としても価値はあるのではないだろうか。

 まだ彼ら自身でさえ、“世界を制するロックンロールバンド”としてスターダムを駆け上がっていく姿を想像できていなかったのではないか…そう思わせる程、自由と喜びに満ちた音楽が半世紀以上を経てやっとこうして音源化された。様々な音楽の楽しみ方ができる現在だからこそ、60年代の人々が体感していた音楽をこういう形で知るということは大事なことのように思う。【文=松尾模糊】

作品情報

『オン・エア』(デラックス・エディション)
ザ・ローリング・ストーンズ

Disc1

01.カム・オン
02.サティスファクション
03.ロール・オーヴァ―・ヴェートーベン
04.クモとハエ
05.コップス・アンド・ロバーズ
06.イッツ・オール・オーヴァー・ナウ
07.ルート66
08.メンフィス・テネシー
09.ダウン・ザ・ロード・アピース
10.ラスト・タイム
11.クライ・トゥ・ミー
12.マーシー・マーシー
13.オー・ベイビー
14.アラウンド・アンド・アラウンド
15.ハイ・ヒール・スニーカーズ
16.ファニー・メイ
17.ユー・ベター・ムーヴ・オン
18.モナ

Bounus Disc

01.彼氏になりたい
02.かわいいキャロル
03.アイム・ムーヴィング・オン
04.イフ・ユー・ニード・ミー
05.ウォーキング・ザ・ドッグ
06.コンフェッシン・ザ・ブルース
07.エヴリバディ・ニーズ・サムバディ・トゥ・ラヴ
08.リトル・バイ・リトル
09.エイント・ザット・ラヴィング・ユー・ベイビー
10.ビューティフル・デライラ
11.クラッキン・アップ
12.アイ・キャント・ビー・サティスファイド
13.恋をしようよ
14.南ミシガン通り2120