デジタルメディア業界ではいま、パブリッシャー、ブランド、エージェンシー、それにアドテクベンダーが、デジタル広告サプライチェーンの浄化を求めて騒ぎ立てています。

透明化に向けたこうした動きのために、ads.txtという素っ気ない名前のファイルが、メディア業界で大きな話題となっています。このads.txtは採用が進んでおり、2017年10月末の段階で、デジタル広告を販売するパブリッシャーの44%がads.txtを実装しています。

しかし、ads.txtが広告詐欺を完全に阻止してくれるわけではありません。ads.txtファイルでサプライサイドプラットフォーム(SSP)のスペルをミスするなど、さまざまなヒューマンエラーのために、エクスチェンジが誤ってペナルティを科せられ、インベントリー(在庫)を調達できなくなる事態が起こっています。さらに、ほとんどのads.txtファイルでは、ベンダーに販売を許可するインベントリーのタイプ(ディスプレイ広告、動画広告、ネイティブ広告など)が指定されていません。そのため、CPMを引き上げる目的でディスプレイ広告のインベントリーを動画広告としてパッケージしなおすようなことが、いまだに可能になっています。

このような問題を解決しようと、またしても妙な名前を持つ新しいファイルが登場しました。それが「ads.cert」です。デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する「一問一答」シリーズ。今回は、ads.txtのアップグレード版となるads.certについて説明します。

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――ads.certとは何でしょうか? ads.txtと何が違うのですか?



ads.certは、インタラクティブ広告協議会(IAB)が開発したads.txtファイルのアップグレード版で、暗号化された署名付きの入札リクエストを使用することで、インベントリーの経路を表示してそのインベントリーを認証します。

――もう少しわかりやすく説明してください。



ads.txtは、パブリッシャーがインベントリーの販売許可を企業に与えることで、パブリッシャーのコントロール力を高め、バイヤーが認定済みセラーからのみ広告を購入できるようにするものです。ads.certはこれをさらに一歩進め、デジタル広告サプライチェーンの各段階でバイヤーとセラーがやり取りする情報を検証し、情報が改ざんされたり悪用されたりしないようにします。いわばデジタル署名のようなもので、バイヤーが特定のサイトの在庫を検証できるようにし、その在庫が詐欺師に改ざんされるのを阻止します。

――どのような情報が検証されるのですか?



オープンエクスチェンジでは、バイヤーは、ドメイン、場所、IPアドレス、デバイス、ページ上の位置、インプレッションの種類などのデータやその他の変数を使って、インプレッションの価値を把握しています。しかし、このような変数が操作され、インプレッションの価値が吊り上げられる可能性があります。ads.certはこのような操作を防ぐことが目的です。「ビューアビリティ(可視性)などの情報をリクエストに追加する際に、署名を付けることで、新しい変数に透明性と信頼性をもたらすことができる」と、アドテクベンダーのソブン(Sovrn)で販売および製品戦略担当バイスプレジデントを務めるクリス・クローファード氏は述べています。また、「サプライチェーンの誰もが署名を提供できるため、好ましい振る舞いが奨励され、不適切な行為がますます監視されるようになる」のです。

――これが重要な理由は何ですか?



ads.certは、デジタル広告取引に完全な透明性をもたらすためのもうひとつのステップです。(詐欺師やいかがわしいベンダーを除く)サプライチェーンの誰もが透明性を強く求めています。また、バイヤーは、動画広告としてパッケージしなおされたディスプレイ広告インベントリーなどを購入していないと確信できます。「(ads.certは)利益を得るためにディスプレイ広告を動画広告として売ろうとする業者を、白日の下にさらす監視手段を提供する」と、クローファード氏は説明しています。

――では、誰もがads.certに飛びつくでしょうね?



それほど急速な動きは起こらないでしょう。企業がads.certを実装するには、テクノロジーインフラ「OpenRTB」をバージョン2.5から3.0にアップグレードする必要があるからです。OpenRTBはIABがリリースしたインフラで、ヘッダー入札、コンテンツ販売、商品レコメンド、コネクテッドTVなど、新しいタイプのプログラマティックな売買を処理できるように設計されています。

――アップグレードにはどれくらいの手間がかかるのですか?



OpenRTB 3.0には後方互換性がないため、レガシーテクノロジーを利用した既存のシステムでは動作しません。デマンドサイドプラットフォーム、SSP、それにエクスチェンジが、膨大な金額を投じてシステムを構築し、互換性を確保する必要があります。

――それはかなり大きな障害になりそうですね。



いまのところは、おそらくそうでしょう。しかし、今後の進展を見守ってください。おそらく2018年には大きな話題になります。

【 「一問一答」シリーズの<記事一覧>はこちら 】

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)
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