agehasprings Open Lab.が音楽のヒットを語る連載シリーズ。今回は、2017年度のビルボードジャパン年間チャート“Billboard JAPAN HOT100 Year End”で総合3位を獲得したDAOKO×米津玄師「打上花火」にもピアノで参加した音楽プロデューサー/アレンジャーの横山裕章が、同じく年間11位となったオースティン・マホーン「ダーティ・ワーク」を解説する。


――〜日本国内でのロングヒットの理由〜流行だけでは終わらないオースティン・マホーンの実力

by 横山裕章 (agehasprings)

 ビルボードジャパン年間チャート2017からオースティン・マホーンの「ダーティ・ワーク」に注目してみよう。

 今や、芸人・ブルゾンちえみのお笑いネタソングとして定着しつつある、このオースティン・マホーンの「ダーティ・ワーク」。アメリカでは2015年7月1日にリリースされたこの楽曲が、ここ日本において2017年のビルボードジャパン年間チャートで名立たるヒット曲達に肩を並べ、見事11位にチャートインしている。

 ブルゾンちえみ効果で洋楽チャート1位を獲得し(http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/47835)、2月27日付の“JAPAN HOT100”では98位から8位へ驚異のジャンプアップ。上半期はこの8位チャートインを皮切りにして、TOP20位圏内へのチャートインを続けていた。

 その後も、ブルゾンちえみ自身の活躍やオースティンとブルゾン2人そろっての共演。そして、日本限定アルバム『ダーティ・ワーク』のリリースと共に、根強くチャートインを続け、2月20日付の“JAPAN HOT100”で97位に初登場して以来、なんと42週連続でチャートインを果たすという、とにかく1年を通して話題に事欠かない楽曲だった。

 あのリフが来ると、どうしても「35億!!」のフレーズが頭をよぎってしまうものの、今回は楽曲にフォーカスして分析していこうと思う。

 オースティン・マホーン。米国テキサス生まれの21歳。動画投稿サイトで一躍有名になり、2012年にデビューしている。ジャスティン・ビーバーを思わせる、甘く少しハスキーな声が特徴的で、ピアノもギターも弾けてしまう多彩っぷりだ。ジャスティン・ティンバーレイクやブルーノ・マーズに続く次世代アーティストとして、立ち振る舞いやパフォーマンスも今後の楽しみの一つである。

 さて、この「ダーティ・ワーク」。サウンド面はというと、The Monsters and the Strangerzというマイアミのソングライティング集団が手がけている。マルーン5やリアーナにも携わっていて、エンジニアリングも自分たちで出来てしまうトータルプロデュース集団が、この楽曲のバックボーンをしっかりと後押ししている。Funkadelicを思わせるような、80’sのエレクトリックファンク風なシンセベースが、ビル・ウィザース の「Lovely Day」やカーティス・メイフィールドの「Tripping Out」のような、あの王道なリズムパターンに乗っかって展開していくので、誰でも一度は聞いたことのあるリズムに体が揺れることは間違いないのだろう。

 最初はシンプルな2コード進行だと思わせておきながら、BメロではB-Faug-E7-E♭7といった半音進行でしっかりフックを作っていて、サビで景色が広がる聞こえ方になるように仕掛けが作られている。

 最後の決めのメロディーのところも、

“You know it ain't no nine to five / We're going sundown to sunrise / Dirty work”

 (9時から17時までの仕事じゃないんだよ!日が暮れてから明けるまでなんだよ!残業なんてクソ食らえ!)的なうっぷんを、G♭add9からD♭に解決する(キーはA♭)ハーモニーに対して、メロディーを半音でぶつけることによって感情を表現している。

 独特の歌メロのハモりの響きがクセになるところも、何回もリピートして聴きたくなるポイントになっていて、楽曲としても長く愛されるようになっている点が、ロングヒットに繋がった大きな要因の一つと言って間違いないだろう。それは、42週連続チャートインというチャート・アクションからも見て取れる。この曲のイントロが鳴った瞬間、最後のメロディーを待っている自分がいることに、中毒性の高い楽曲だということが感じられる。

 日本限定でリリースされたアルバム『ダーティ・ワーク』に収録されている他の曲も、バラエティに富んだ素晴らしい楽曲が詰まっているので、是非聴いてもらいたい。まだまだ若いし、色々なアーティストや楽曲に出会って歌いこなしていくうちに、素晴らしいアーティストになることは間違いないだろう。

Text by 横山裕章 (agehasprings)