日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督【写真:Getty Images】

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「悪夢」として忘れたい試合だが……

 16日のE-1選手権で韓国に1-4と大敗を喫した日本代表。試合開始直後にPKから先制ゴールを奪ったが、その後は試合を完全にコントロールされ4失点。悪夢のような試合となってしまった。浦和を除いた国内組のみで臨んだ大会ではあるが、ここで表出した問題は海外組も含めたフルメンバーの代表チームとは無関係ではない。悪夢で済まない現実味を帯びた一戦だった。(取材・文:西部謙司)

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【E-1 日本1-4韓国】

 もし、悪夢から目が覚めたと思ってホッとしたのも束の間、現実が悪夢の続きだったら……ちょっと想像したくない状況である。

 韓国戦の惨敗は悪夢として忘れてしまっていい試合だ。E-1選手権の日本代表がそのままロシアに行くとは誰も想定していない。ハリルホジッチ監督は「A代表」と明確に区分けしていて、「この日本代表がBかCかDかわからないが……」と記者会見で話していた。

「多くの選手を起用できたし、2勝できたのは一定の成果だ」(ハリルホジッチ監督)

 少なくとも会見場では冷静に振る舞っていた。韓国を褒め、日本のプレー内容への言及を避けた。こういう試合の後で一番ダメなのは指揮官が感情的になってしまうことだ。ただでさえ大きな傷を負っているところに追い打ちをかけるようなマネをすれば確実にチームは崩壊へ向かうからだ。

「この試合の分析はできているが、それを言ってしまうと多くの人が喜ばないだろう」(ハリルホジッチ監督)

 言わないほうがいい。冷静にテストの結果を分析すればそれでいいと思う。ただ、韓国戦で表れていた内容は悪夢として忘れるには現実感を伴いすぎていたともいえる。

ハイプレスへの押し出しが効かない

 開始直後に車屋紳太郎のきれいなクロスボールから小林悠がヘディングシュートを放ち、伊東純也のスピードがファウルを誘ってPKゲット。小林が決めて3分で先制。ここまでは言うことなしだった。

 ところが早すぎた先制点から日本は重心が定まらなくなってしまう。1点差の状況、たっぷり残っている時間。どう戦うかの判断に迷ってしまうのだ。韓国はすかさず反撃を開始、そのまま最後の数分まで完全にゲームを支配してしまった。

 韓国はサイドハーフが中央へ入ってサイドバックが高い位置をとる定石どおりの攻め込み。とくにキム・ジンスとキム・ミヌのサイドバックタイプを縦に並べた左サイドが、日本の伊東純也、植田直通のペアに圧力をかけていく。そしてFWキム・シヌクの高さと強さが明確な脅威になっていた。

 E-1はハリルホジッチ監督にとって、あくまで戦力のテストにすぎない。この大会に優勝するためではなく、ロシアワールドカップを睨んでの采配になる。従って戦術はこれまでと同じ、まずは選手がそれに合わせなければならない。

 守備はミドルゾーンのプレスを基本に、適宜にハイプレスに切り替える。これはハリルホジッチ戦術の肝になる部分で、ハイプレスで奪ってショートカウンターでフィニッシュできれば理想的だ。

 ところが、日本がハイプレスへ切り替えるのを見越して韓国はキム・シヌクへの縦パスを狙っていた。ハイプレスなのに日本のディフェンスラインの押し上げが緩慢なのを知っていたのかもしれない。

 先のブラジル戦でも、ブラジルは日本がハイプレスに来る境界線を探り終えると、間延びさせて間を狙う攻撃を繰り返していた。やられ方は違うが、「A代表」もE-1の代表もその点では同じだった。

 ロシアではロベルト・レヴァンドフスキを擁するポーランドと対戦するので、解決しておかなければいけない問題である。ただ、快足サディオ・マネのいるセネガルとも対戦するのでラインを上げれば解決という話ではない。ともあれ、韓国戦におけるハイプレスの威力のなさは「A代表」と無関係ではなかった。

引かれたときのオプションがない

 チョン・ウヨンの途方もないFKで23分に1-2とビハインドに。今大会での日本の真価が問われる状況になった。

 点をとらなければならない。堅守速攻だけでは足りない状況は本大会でも想定しておかなくてはならないが、これまで決定的な回答は得られていなかった。では、国内組のみのE-1で何を試せるのかといえば、個ではなく連係だったと思う。

 欧州組を含めても個で打開できる可能性は高くない。北朝鮮戦と中国戦で活躍した伊東も対策されればPK奪取以外の場面で活躍できなかった。個の打開が難しいならば、やれることはほぼ決まっている。

 相手のゾーンの隙間に縦パスを入れ、サイドへ流し、できるだけ良いクロスボールを供給すること。常識的な攻め方にすぎないが、基本としてこれを愚直にやる以外におそらく手はない。その際、どの組み合わせが有効か確かめる機会だったはずだ。

 その意味で大島僚太を負傷で失い川崎フロンターレのセットを使えなくなったのは痛かったが、そもそも定石の攻めをやろうとしているかどうか疑わしいぐらい回数は少なかった。

 韓国戦では終盤に土居聖真の間受けからの崩しが1回あったぐらい。できないのであれば引かれたらほぼ崩せないので、いったんスペースを作るほかなく、後方で回して相手にプレスさせてひっくり返すことになるがそれも成功していない。むしろそれをやっていたのは韓国である。

 リードした韓国は受けに回った時間があった。日本は倉田秋から小林へ裏を狙ったパス、植田から伊東へのパスで崩しを狙うが、いずれも突破に至らず。伊東が裏を狙ってもスペースはさほどなくゴールラインを割るなど、裏を一発で狙ってことごとく不発。表もなければ裏も不首尾。ボールを持たされて明らかに手詰まりになっていた。

 伊東が浅野拓磨や久保裕也で、土居が乾貴士や原口元気でも、同じことが起こりそうな想像ができてしまうのは現状で残念なところである。

守備崩壊の3失点目。悪夢ですめばまだいいが…

 4失点のうち、3点に関しては仕方がないところもある。しかし、3失点目は何をどう改善すればいいか難しいほど守備が崩壊していた。

 イ・ジェソンが体勢を崩しているのに、車屋と土居の2人がいてカットインを許してしまったのに始まり、カバーリングの距離も遠く、そもそもラインが揃っていないので距離感が悪く、イ・ジェソンが密集へ突っ込んでいるのに誰もタックルせず、中央にいた相手の1人に対して昌子源が対応しているのに三浦弦太も加勢してキム・シヌクをフリーにしていた。では、キム・シヌクを誰かがカバーしているのかといえばそこまで連動もしていない。

 ここまでの組織崩壊は「A代表」では起こりえないと思いたい。だが、サイドバックに起用された植田はともかく、昌子、三浦、車屋はすでに「A代表」の選手なのだ。今野泰幸、井手口陽介、倉田のMFも同様。むしろAでも起こりうると考えたほうが現実的かもしれない。

 多くのファンにとって韓国に1-4など悪夢にほかならない。ただ、悪夢ならまだいい。悪夢が覚めたと思ったらまだ悪夢だったという恐ろしいことにならないように願いたい。

(取材・文:西部謙司)

text by 西部謙司