終わってみれば、もどかしさだけが残る大会だった。東アジア王者を目指したEAFF E-1サッカー選手権。日本代表は宿敵・韓国代表に1-4と完敗を喫し、ホームで行なわれた大会で優勝を逃している。


今大会で3試合フル出場した34歳の今野泰幸

 この大会で勝つことの意義はさておき、半年後に迫るワールドカップに向けた新戦力発掘という視点で見ても、大きな成果を得られたとは言いがたい。なかには目についた選手もいたが、欧州組を含めた「真のA代表」の牙城を崩せる選手がいたかと問われれば、力強く首を縦に振ることはできないだろう。

 北朝鮮戦でビッグセーブを連発し、勝利に貢献したGK中村航輔(柏レイソル)は、韓国戦での4失点で評価を下げてしまった。とりわけ直接フリーキックを2本決められたのは、心証を悪くしたに違いない。

 中国相手に躍動したFW小林悠(川崎フロンターレ)は、韓国戦でもPKで先制ゴールを奪取。しかし、その後はほとんどチャンスに絡めず、ストライカーとしての役割を果たせなかった。大会を通じて右サイド、トップ下、1トップ、左サイドと、攻撃的なポジションをすべてこなした汎用性の高さは評価に値するものの、ロシア行きの切符を手にするには、さらなるアピールが求められる。

 切れ味鋭いドリブルを生かし、3試合すべてに出場したFW伊東純也(柏レイソル)は、韓国戦でPKを奪うなど、求められる役割をこなした。ただし、同じドリブラーのFW乾貴士(エイバル)と比べれば、プレーの精度は勝っているとは言えず、インパクトを与えるほどの活躍はできなかった。

 3試合すべてでジョーカーとして起用されたFW川又堅碁(ジュビロ磐田)は、北朝鮮戦、中国戦と2試合でゴールに絡み、韓国戦でも終盤に惜しいシュートを放つなど、”使える”選手であることを印象づけた。もっとも、限られたチャンスで結果を出すことが求められるのがジョーカーであるとすれば、チャンスがあったにも関わらずゴールを奪えなかったことがマイナス査定となる。その意味で、こちらもアピールに成功できたとは言えない。

 よもやの右サイドバックとして起用されたDF植田直通(鹿島アントラーズ)は、意外と器用なところを示したが、今大会ではあくまで人材不足のなかでの緊急措置であり、ハリルホジッチ監督も、今後もここで使っていくとは考えていないだろう。やったこともないポジションなのだから致し方ないのだが、動きのぎこちなさは隠しようもなく、これからの半年間でモノにできるとも思えない。プレーの幅が広がったという意味では、植田にとってはよかったかもしれないが、戦力という意味では大きな期待はかけられないと思われる。

 もちろん、既存のメンバーのなかに組み込まれてこそ競争原理が働くわけであり、別のチームで稼働した今大会だけで評価を下すのは意味を持たないだろう。それでも、序列を覆すような個の台頭を感じられなかったのは、やはり物足りなさを否めず、結果も、新戦力の発掘も実現できなかった今大会は、日本にとって小さくない損失だった。

 そんななかで数少ない希望を見出すとすれば、MF今野泰幸(ガンバ大阪)の存在だったかもしれない。代表キャップ90超えの、2度のワールドカップに出場した34歳のベテランプレーヤーを、新戦力と呼ぶにはあまりに失礼だろう。それでも、ハリルホジッチ体制下での出場機会が少ない今野は、既存のメンバーに刺激を与える存在に十分になり得るはずだ。

 今大会の今野は、初戦の北朝鮮戦でMF井手口陽介(ガンバ大阪)の決勝ゴールをアシストし、中国戦でもアンカーの位置でバランスを整えながらも、機を見た攻め上がりで攻撃に厚みを生むなど、攻守に躍動した。

 韓国戦では他の選手同様に及第点を与えられるプレーは示せなかったが、押し込まれる展開のなかで広範囲をカバーし、低い位置から起点になろうと懸命にゲームメイクを試みた。終盤の川又の決定機を生み出したのも、今野のサイドチェンジがきっかけとなっており、アピール要素も少なくなかった。

「あまり下がらずに、相手の2トップの少し前でボールを受けられればよかったですけど、相手も守備がよくてタイトについてくるから、なかなかブロックの中に突っ込めなかった。ブロックの外で回すだけで、中に入れても奪われて、ショートカウンターにつなげられてしまった。そこが今日は足りなかったし、実力不足だったと思います」

 試合後に反省の言葉を並べたように、今野にとって納得のいかない試合だったことは間違いない。とはいえ、3試合すべてにフル出場の機会を与えられたのは、監督からの信頼の表れでもある。ちなみに、今野の他に3戦フル出場を果たしたのは、DF昌子源(鹿島アントラーズ)と小林のふたりだけだ。

 ハリルホジッチ監督就任以降、今野は不遇のときを過ごしていた。2015年3月のウズベキスタン戦以降は招集されていなかったが、MF長谷部誠(フランクフルト)をはじめ負傷者が続出した昨年3月のワールドカップアジア最終予選のUAE戦で代表復帰を果たす。まさかの招集に本人も戸惑いの色を隠せなかったが、その試合でフル出場を果たし、ゴールまで奪ってみせた。

 6月のシリアとの親善試合でもゴールを奪い、イラクとの最終予選にも途中出場。十分な活躍を示し、代表に定着したかと思われたが、その後はふたたび、招集外となっていた。

 困ったときの便利屋――。今野にはどことなく、そんなイメージがつきまとう。評価されているのか、されていないのか。本人も半信半疑の想いを抱いているかもしれない。実績十分のベテランに対する扱いとしてはあまりに失礼なものではあるが、招集されれば常に安定したプレーを示すのだから、監督とすれば今野ほど使い勝手がいい選手はいないだろう。

 ある意味でモチベーションを保(たも)ちづらい状況のなか、本人は代表に対してどのような想いを抱いているのだろうか。今大会を終えてみて、今野はこう話した。

「やっぱり、代表という場所はそんなに甘くないなと感じられました。韓国にホームで負けてはいけないと思っていたんですが、そこで負けてしまったのは残念。下を向きかねないけど、やっぱり、上を向かないといけないし、もっと成長しないといけないと感じさせられました」

 便利屋的な扱いにも不平を漏らすのではなく、与えられた仕事を確実にこなすことにすべてをかける。結果を出せなければ深く反省し、さらなる成長を目指して自己を磨き続ける。この”職人気質”こそが、今野が長くトップレベルを保ち続けられる最大の要因だろう。

 日本の中盤に君臨し続ける長谷部の状態が万全でないなか、半年後、今野の存在がふたたびクローズアップされることになるかもしれない。

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