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都心回帰とバブル崩壊以降マンション供給について

1980年代後半、首都圏はバブル景気に沸き立ち、不動産価格は急上昇、23区内で住宅を買うことは一般のサラリーマンには厳しい時代になっていました。千葉県の郊外、埼玉県の郊外にニュータウン(団地)が多く造られました。東京都では八王子のさらに先、山梨県あたりに相対的に安価な一戸建てを求めて、多くの人が物件見学に訪れていました。
しかし、1990年〜91年にかけて、バブルは崩壊。不動産価格は91年をピークに大幅に下落しますが、それでもその後2〜3年はまだ高く、ある程度「買える金額」になったのは1995年頃からです。

東京都の人口は、1980年代後半から1995年頃までは、減少しています。今述べたように、「買うことができる」首都圏の奥地(失礼!)の住宅を買って、転居してする人が増えて、人口減となっていたのです。
しかし、1995年頃からは不動産価格も落ちつき、住宅は「なんとか、買える価格」になってきました。そんな時に、使われた言葉が「都心回帰」です。

1990年代の後半は、一時的に住宅価格が落ち着きましたが、トレンド的には価格下落基調でした。
このころから、再び東京都の人口は増えていきます。
2000年代前半は、企業がオフバランス経営に向かっていく中で、「使っていない不動産」「効率よく使っていない不動産」「コアビジネスに関係ない不動産」を売却(=オフバランス)し始めました。これらをデベロッパーが購入し、そこにマンションを建てました。また湾岸(陸地の海沿い)マンションが増えたのもこのころです。こうして、2000年代前半の東京都心は空前のマンション建設ラッシュが起こりました。

本論から道が逸れますが、「湾岸マンション」と呼ばれるマンションには2パターンあって、今述べた田町や品川あたりにある陸地に面した海沿い(大昔に埋め立てられた)にあるマンションと、豊洲や東雲などのような海に浮かぶ埋め立て島(少し前に埋め立てられた)に建つマンションがあります。

話を戻すと、1994年〜2006年の13年間の間、首都圏では毎年7〜8万戸程度の新築マンションが供給されています(最少:1998年6.6万戸、最多:2000年9.5万戸)近年が3〜4万戸ですから、今の倍程度の新築マンションが供給されていたことになります。この期間以降、東京23区の人口は大きく増えました。

東京メトロの乗降客数とマンション価格の関係

2005年から2008年はミニバブルと呼ばれた頃です。その終盤あたりに、リーマンショックが起こり、不動産価格は低迷し始めます。首都圏の地価が上昇し、用地仕入れが難航し始めた2008年以降は供給戸数が一気に減り、3〜4万戸程度になります。

再び不動産市況が盛り上がりを見せ始めたのは、2012年の夏ごろからです。盛り上がりの気配が見え始めた2012年の末、政権交代が起こり、2013年からは金融緩和政策の導入で、不動産市況は一気に盛り上がりを見せて、その勢いは今も続いています。盛り上がりを見せているこの間も供給戸数は2000年代の前半のように増えてはおらず、3〜4万戸程度に留まっています。
しかし、近年のマンション供給の傾向としては、都心一等地の再開発、あついは駅前の再開発等といった、鉄道利便性のよいエリアでの、高額マンションの供給が多かったことが挙げられます。

東京23区の中は鉄道網が充実しています。山手線から外に伸びる私鉄、その私鉄とつながって山手線内に入ると、地下鉄が網の目のように走っています。
このように、都心のマンションに人気が集まり、住む人が増えると、鉄道利用者が増えます。ここからは、首都圏マンション価格と東京メトロの輸送人員数について考察してみましょう。

図1は東京メトロ(以下、メトロ)の輸送人員数と首都圏中古マンション価格の2006年〜2016年までの推移です。メトロの輸送人員は2011年頃から右肩上がりで増えています。2011年は2278万人だったのが2016年には2642万人となっており、約16%増えています。
一方、中古マンション価格は、2012年頃から上昇し始めます。一直線での上昇となっているのが分かります。(マンション価格の市況を分析する際には一般的には中古マンション価格で検討します。)
2012年の首都圏全体の崔渦舛38.4万円だったのが、2016年には48.4万となっています。この間の上昇率は+26%です。(もちろん、首都圏全体での数字ですので都心一等地の単価はこれよりもだいぶん高いですし、上昇率ももう少しあります。)

2つの推移の相関係数は0.96となっており、極めて強い相関があることが分かります。
都心に住む人が増えており、そのためマンション価格が上昇している。そして、そこに住む人が地下鉄に乗って、通勤したり、買い物にでかけたりしている。そのため、乗降客が増えている。そんな様子がはっきりと見えてきます。
「都心回帰」という言葉は最近聞かれなくなりました。郊外に住んでいた人が、ますます都心に移り住んでくる、そんな傾向はまだまだ続くことでしょう。朝の地下鉄の大混雑の緩和は、しばらく期待できそうにありませんね。


吉崎 誠二
不動産エコノミスト 社団法人 住宅・不動産研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。蠢グ譱躪膰Φ羹蠑綫淵灰鵐汽襯織鵐函Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者等を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。著書:「データで読み解く 賃貸住宅経営の極意」(2016年2月)「2020年 大激震の住宅不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを買える人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。公式サイトhttp://yoshizakiseiji.com/

【記事元】
日本クラウド証券株式会社 https://crowdbank.jp
日本クラウド証券メディア マネセツ https://manesetsu.jp

【転載元】
リーダーズオンライン(専門家による経営者のための情報サイト)
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