Snapchatの拡張現実(AR)用3Dレンズは、現実世界のなかにバーチャルアバター、すなわちビットモジ(Bitmoji)を置けるようにする最新のマーケティングツールだ。バドワイザー(Budweiser)やBMW、そして12月にはマクドナルド(McDonald's)のようなブランドがAR開発のテストに乗り出した。

ARレンズは安いものではない。だが、6つのアドバイヤーとの会話によると、Snapchatは、AR技術は最高のツールだと主張し、持ち株グループのエージェンシーにそれを積極的に販売しようとしているようだ。メディアエージェンシーが3Dレンズをどのように購入するか、それに対してどれくらい支払うかは、個々の案件ごとに天と地ほど大きな開きがある。その価格が、ターゲットの基準やARレンズが実用化される時期などの要素で変わるからだ。

「ARレンズはプレミアム製品」



大手メディアショップに所属するあるアドバイヤーは、ARレンズは通常、1日あたり50万〜100万ドル(約5500万〜1.1億円)の費用がかかると言った。同社の経営陣は先日、ブランドデッド3Dレンズに1日70万ドル(約7700万円)以上を支払った。

「ARレンズはプレミアム製品なので、我々は通常、Snapchatではほかのタイプの広告を採用している。Snapchatには料金表があるが、広告業者が値段交渉する方法も無数にある」と、この人物は話した。

ニューヨークを拠点とする、ある企業の幹部は、Snapchatの最高幹部がその宣伝文句のなかで「ARは次のインターネットだ」と信じ、未来のブランドはARの存在感を持つ必要があると訴えている、と付け加えた。この人物は「Snapchatは、自社には優れたAR技術があると売り込みで強調し、独立した広告商品としてARレンズを位置づけている。現時点でARレンズは、Snapchatが持っているもっとも高価な(広告)商品だ」と述べた。

別の持ち株グループエージェンシーの幹部は違った体験をしている。この幹部は、Snapchatは3DのARレンズを独立した広告商品として売り込んではおらず、むしろ包括的な広告商品プランに加えたと語る。「我々は通常、ひとつの広告ユニットプランニングではなく、オーディエンスを第一にしたアプローチをとっている」と、この幹部は言った。

「交渉に関しては柔軟」



米広告企業IPGメディアブランズ(IPG Mediabrands)が所有するソサエティー(Society)のシニアバイスプレジデントでソーシャルメディア担当エグゼクティブディレクターを務めるジェームズ・ダグラス氏は、自分の顧客の多くがSnapchatに強くコミットしており、なかには年間のメディア契約を結んでいるものもいて、Snapchat広告の核に付加価値をつけるものとして、ステッカーとARレンズを位置づけている、と述べた。

すべてはメディアとの交渉だ、とダグラス氏は言う。たとえば、普段Snapchatを利用しない保険会社がSnapchatキャンペーンで20歳の人たちに確定拠出年金(401k)について考えてほしいと思ったとしたら、SnapchatはARレンズの費用として1日30万ドル(約3300万円)を請求するかも知れない。このブランドは長期顧客になりそうにないからだ。

「一般消費財を扱う有名企業に対してなら、Snapchatは、20万ドル(約2200万円)の見積もりを出すだろうが、それはプレミアムデーにではない。Snapchatは、エージェンシーを相手にしたメディア投資の交渉に関しては非常に柔軟で、私はそこが気に入っている」と、ダグラス氏は話した。

ARツールキット



Snapchatの広報担当は、30万ドルは、最長12カ月間継続できる3Dレンズのベース価格だという。だが、広告業者が払ってもいいと思う最終価格は、プレミアムデーの全国キャンペーンなのか、インプレッションで価格を決めるターゲットオーディエンス向けかで変わる。

広報担当者は次のように話した。「ブランドが1日に75万ドル(約8400万円)支払うなら、休日の全国キャンペーンとなり、広告業者は30万人のユニークユーザーと65万件のインプレッションにリーチできる。平均して、(3D)レンズの(効果的な)CPMは8ドル〜20ドル(約890〜2200円)のあいだだ。この額は大手プラットフォーム上のほぼすべてのプレミアム動画よりも安い」。

当面、ARレンズは、ほかの標準的レンズの場合と同様、ほとんどが手作業による広告購入であり、エージェンシーはSnapchatに広告資産を提供し、加工を任せることになる。レンズの開発プロセスは最長6週間だ、とアドバイヤーたちは言う。だが、スナップ(Snap)の最高経営責任者(CEO)であるエヴァン・スピーゲル氏は、11月に開いたスナップの決算発表のアーニングコール(電話会議)で、Snapchatがいくつかの選ばれたブランドとともに「レンズ・スタジオ(Lens Studio)」というセルフサービス型ツールキットのテストを進めていることを明らかにした。ニューヨークを本拠にする幹部のチームがパイロットプログラムに関わっていて、この幹部は、セルフサービス型プラットフォームがあれば、広告業者はクリエイティブな資産をオンラインにアップロードし、1時間ほどで独自のARレンズを作成できると説明した。

この幹部は次のように述べる。「現時点では、トップを占めるごく少数の広告業者にしか、このARツールキットは提供されていない。Snapchatは近い将来、これを無料ツールとして公開する予定だ」。

プログラマティック環境へ



ダグラス氏は、Snapchat代表者たちとの会話から、バーティカル動画広告のフォーマットであるスナップ・アドを広告配置の基本において、広告インベントリー(在庫)を積極的にプログラマティックバイイングへと移行する作業を進めていることがわかると述べた。

「Snapchatは、スナップ・アドに加え、フィルターやステッカー、ARレンズをオークションで入札できる環境へ移そうとしている。そうした広告提供を成長、拡大させる必要がある」とダグラス氏は言う。

SnapchatのARレンズは安くはないが、この記事の執筆に際しインタビューに応じた広告業者たちは、ARレンズへのエンゲージメントは高く、Snapchatがブランド認知を定量化するブランドリフト調査を提供すると思っている。

ニューヨークを拠点とする幹部は次のように語った。「何百万人という人がレンズを利用し、友人と共有していることを我々は知っているので、(3Dレンズ上での)広告支出は正当なものだと考えている。人々はブランドに100%エンゲージしている。このタイプのエンゲージメントは貴重だ。しかし、クライアントの多くは、全員がARレンズを必要としているという発想にはまだ完全には同意していない。結局のところ、そうしたレンズが売り上げの増加をもたらさないからだ」。

Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)