【コラム】「ロシアで必ずピッチに立つ」…川又堅碁は“ジョーカー枠”で生き残りなるか

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 小林悠(川崎フロンターレ)のPKで先制しながら、キム・シヌク(全北現代)の2発とチョン・ウヨン(重慶力帆)、ヨム・ギフン(水原三星)と2つの直接FKを決められ、1−4という大差をつけられた16日のEAFF E-1 サッカー選手権2017 決勝大会の韓国戦。70分、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は伊東純也(柏レイソル)に代えて、川又堅碁(ジュビロ磐田)を投入し、2トップに布陣変更して何とか追加点を奪おうとした。

 その背番号9が迎えた最大の決定機が85分のヘディングシュートだった。同じく途中出場した阿部浩之(川崎フロンターレ)の右クロスを彼は打点の高いヘッドで合わせたが、ボールは惜しくも「韓国のダビド・デ・ヘア(マンチェスター・U)」の異名を取るGKチョ・ヒョヌ(大邱FC)に左手1本でセーブされてしまう。今大会の川又は朝鮮民主主義人民共和国戦(9日)、中国戦(12日)にも似たような得点機に直面しながら、喉から手が出るほどほしかったゴールをどうしても奪えなかった。異種独特な存在感を示しながらも、ゴールという明確な結果を得られず、タイムアップの瞬間を迎えることになった。

「あの決定機も駆け引きで勝ってるし、前に行くふりをしてDFを先に飛ばしといて、後ろに下がりながらヘディングできてるから、そこまではパーフェクト。あとは決めるだけなんですよ。だけど、決めるだけのところで決まっていないのが事実。3試合とも15から20分しか出てない中で、そういう場面に顔を出せたってことは、頭から出たら6から7回はチャンスがあるってこと。でもFWとして結果を残してないから全然面白くない。チャンスがあった分、余計に悔しいです」と彼は感情をむき出しにするしかなかった。

 そもそも今大会の川又は杉本健勇(セレッソ大阪)の負傷離脱によって追加招集されたのが始まりだった。最初は金崎夢生(鹿島アントラーズ)、小林に続くFW3番手の位置付け。本人も「『追加招集の川又です』ってみんなに挨拶した」と冗談半分に語っていた。それでも短期間ながらボールをしっかりと収め、得点の匂いを感じさせる姿は2年前の武漢大会(中国)とは別人のように逞しかった。「(同じジュビロの)俊さん(中村俊輔)に『お前、もっと練習しろ』『もっと動けよ』って言われる」と彼自身が言うように、誰よりもサッカーへの情熱が強い39歳の司令塔に鍛えられたことでボールの受け方、ゴール前への入り方、シュートのタイミングの取り方などが劇的に改善。そこを指揮官にも認められ、半年後の2018 FIFAワールドカップ ロシア本番にも生き残れる可能性が出てきたとも評されるようになった。

 川又本人にとってロシアW杯は4年越しの夢。アルベルト・ザッケローニ監督時代の2014年4月の国内組合宿に初招集されながら、ブラジルW杯に滑り込めなかった時、彼は気持ちを切り替えて中学時代の恩師に「次ですよ、次」と電話をかけている。それは「ロシアで必ずピッチに立つ」という誓いでもあった。しかしながら、同年夏に移籍した名古屋グランパスではトップフォームを見せられず、2年半もの間足踏み状態を強いられることになった。それでも泥臭くガムシャラな男は今季赴いた新天地・磐田で覚醒する。技術、フィジカル、メンタルと全ての面を見直し、地道な努力の積み重ねてスケールアップさせたからこそ、今回のE-1選手権ではチャンスを掴めそうなところまで成り上がったのだ。

 韓国戦はそれが叶うか否かの最終テスト。だが、彼がピッチに立つ前に、日本は永遠の宿敵に完膚なきまでに叩きのめされていた。「1点を取ってから引いてしまったけど、ああいうところでもっともっと前に行くサッカーをしないと、結局ああやって飲まれたりする。メンタル面で向こうが強いと、こぼれ球も向こうに行く。気持ちの大切さを俺らサッカー選手は小学生の時から教えられている。ベースのところで完敗でしたね」とベンチから仲間たちの戦いぶりを見ながら、川又はメンタルの部分に歯がゆさを覚えて仕方がなかったようだ。

 故にもっと早く試合に出て、自分がギラギラしたものをもたらしたかったのだろうが、ハリルホジッチ監督の信頼を完全に勝ち得たわけではなかった。3試合の出場時間がほぼ同じだったのがその証拠。もちろんW杯のような舞台になれば、終盤に出てきて試合の流れを変える存在も必要だが、その枠に滑り込めるかどうかも未知数だ。FW争いは大迫勇也(ケルン)が当確で、残りを岡崎慎司(レスター)や武藤嘉紀(マインツ)、小林、杉本らが争っている。その全員がジョーカーとしての仕事をこなせる。川又だけが特別ではないのだ。

 ただ、こうした厳しい現実を突きつけられても、川又堅碁という男は決して諦めないのがいいところ。もともと雑草魂でここまで這い上がってきたのだから、多少の挫折でへこたれることはない。ロシアW杯まで残された時間はわずかだが、ドイツW杯のラスト1枠を勝ち取った巻誠一郎(ロアッソ熊本)のような例も皆無ではない。その数少ない可能性を追い求めて、川又がやるべきなのは、来季頭からゴールラッシュを見せることしかない。

「もっと強く戦える選手にならないといけない」と語気を強めたフィジカルモンスターが日韓戦の歴史的惨敗を糧にどのような変貌を遂げるのか。勝負の2018年の一挙手一投足に少なからず期待を寄せたい。

文=元川悦子