日韓戦の敗因を「レベルの違い」に求めたハリルホジッチ監督。果たして選手の力量の違いだけでここまでの差につながったのか? (C) SOCCER DIGEST

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 いったい指揮官は、時計の針を何年巻き戻したのだろうか。
 
 札幌での3-0の快勝から6年が経ち、日韓の立場は完全に入れ替わった。スコアだけの話ではない。サッカーの質、方向性のことだ。

 
 6年前の日本は、テクニック、創造性を活かした組織力で韓国を圧倒した。だがヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、直近の試合をこう振り返った。
「パワー、テクニック、瞬発力、ゲームコントロール。いずれも韓国が上回り、驚くほどハイレベルだった。今回招集できなかった選手が10〜11人いたが、彼らがプレーしても今回の韓国が相手では難しかった」
 
 韓国は日本がプレスに出ても、素早くショートパスを連ねて打開すると、的確に空いたスペースへと展開しチャンスを重ねた。ハリルホジッチ監督は「日本が先制してプレーを止めてしまった」と言うが、現実には前がかりに出てもボールが奪えずに失点を重ね、疲弊と警戒心で重心が後ろへと傾いていった。前半から韓国はテクニックとアイデアを駆使し、スピーディな連動を見せてきたが、日本は監督の指示通りに「裏を狙って」ロングフィードを繰り返すばかり。ただし重心を下げられ、指揮官が中盤でのショートパスを嫌うのだから、最終ラインやボランチには、それしか選択肢がなかった。実際に前半、今野泰幸がターゲット不在の相手DFの裏に蹴り込んだプレーに、ハリルホジッチ監督はテクニカルエリアから拍手を送っている。そしてKO寸前で前半を終えると「形を崩さず2点目を取りに行こうと鼓舞した」という。
 
 指揮官は弁解した。
「長身FWのキム・シンウクに対してはタイトなマークを要求したが、2失点のシーンはいずれもフリーだった。左SBのキム・ジンスや、右サイドのイ・ジェソンのクロスも阻止するように指示した。この日本代表が、BチームなのかCチームなのかは分からない。でも中村憲剛を除けば、今招集できるベストだった。この大会で2勝したのは素晴らしい成果。きょうは韓国を称賛するしかない」

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 アマチュア時代の日韓戦は、日本が韓国のフィジカルにねじ伏せられることが多かった。一方でプロの時代が訪れると、韓国の選手たちが日本のテクニカルなスタイルに憧れ、Jリーグに参戦するようになる。裏返せば、日本はテクニックと創造性を活かした攻撃で、韓国にフィジカル重視で戦うことの限界を示唆したという見方もできる。
 
 確かに両国ともに国内組を中心に編成したE-1選手権では、韓国が完勝した。しかしACLの両国クラブの成績を見れば、逆にJクラブがKクラブを凌駕している。Jリーグ勢は3チームがグループリーグを突破し、準々決勝で川崎を大逆転した浦和が優勝したが、Kリーグでは浦和に敗れた済州ユナイテッドのベスト16が最高だった。
 
 もちろん韓国人選手の力を借りているJクラブもあるが、日本を代表するJクラブはいずれもハリルジャパンのようには戦っていない。強豪との対戦が続いた浦和が、堅守のためにデュエルの意識を高めたが、ゲーム支配を放棄し、偶発性に頼る裏へのロングフィードに依存するようなチームは見かけない。むしろ過剰にリスクとパスワークを回避するスタイルは、独断で日本の歴史を捻じ曲げている印象で、ハリルホジッチ監督からは日本の弱点についての指摘は繰り返されても、長所や何を武器に世界に挑むかについての言及はない。
 
 ワールドカップは結果がすべてだと言い切る現場関係者は多いが、本当にそうだろうか。韓国にお手上げのハリルホジッチ監督が、ワールドカップで結果を出す術を持ち合せているとは思えないが、もしこのサッカーで惨敗すれば未来に継承されるものは何もない。
 
 指揮官は会見の最後に言った。
「韓国の方が全ての面で勝っていた。それでも監督のせいで負けたというなら、そういう記事を書けばいい」
 戦術も選手も選択したのは監督だ。逆に他に敗因があるのだろうか。
 おそらく現体制を継続する限り、ロシアでも同じセリフを聞くことになる。
 
取材・文●加部 究(スポーツライター)