ここ一番で魅せた直接FK弾は技術的にも精神的にも頭ひとつ抜きん出ていた。写真・川端暁彦

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「10番、キャプテンを背負わせてもらっているなかで、あそこはキャプテンの自分が蹴らないとな、と。(平戸)太貴には申し訳ないけど、あそこは俺が蹴らなければという気持ちだった」
 
 清々しいまでに“らしさ”を言葉に込めて、U-20日本代表MF神谷優太(湘南)はM-150カップ決勝における同点FKの場面を振り返った。ファウルをもらった平戸(鹿島)のアピールを頑としてはね除けて貫いた「俺が蹴る」というマインドと、それを実際に成功させてしまう技術力。加えて今大会の神谷から強烈に感じられたのは勝負に対する強い責任感とハングリー精神だった。
 
「今季は失望のシーズンになった」と言ったら、気を悪くしてしまうかもしれない。だが、本人にとっても不本意な日々だったのは間違いない。昨年のU-19アジア選手権で負傷離脱するまで主力としてプレーしながら、今年5月のU-20ワールドカップでは選外の憂き目にあった。そのショックを引きずる様子が湘南・者貴裁監督の逆鱗に触れることにもなり、千尋の谷へ落とされる形で出場機会も激減することとなった。
 
 それだけに、今回の代表招集の報は本人にとっての大きな福音であり、是が非でも掴みたいモノだったに違いない。合宿初日からギラギラ感を漂わせる様子は、代表経験の浅い選手が多かったメンバーの中で明らかに異彩を放っていた。

「個人としても結果を残さないといけないし、チームとしても勝たないといけないと思っている。お互いに知らない選手も多いけれど、短い時間でコミュニケーションを密にとって合わせていくのが代表だと思っている。しっかりしゃべっていきたいし、そういう責任も感じている。このチームを自分が中心になって勝たせたい」(神谷)
 
 合宿初日で遠慮がちな選手もいる中で、違ったオーラが漂う言葉である。練習から味方に声をかけてガツガツと引っ張る様子を見れば、森保一監督がキャプテンを任せたのも自然と納得できたし、いざ試合になれば得点とアシストを重ねて結果を出す様は”10番”にふさわしいものだった。
 もっとも、ウズベキスタン代表にPK戦で敗れるという結末については、神谷自身が1得点・1アシストの活躍を残したとはいえ、本人の納得感は皆無。笑顔を漏らす選手もいるなかで、ひとり黙然と敗北の味を噛み締めるように表彰式を過ごし、表彰式と記念撮影が終わればスッと銀メダルを外した。
 
「1得点・1アシストでは足りなかったということ。もう1得点、もう1アシストをできる選手にならないといけない。正直、アピールとかは余り考えてなくて、どうしても優勝したかった。これがメッシだったりクリスティアーノ・ロナウドだったりしたら、こういう状況でもう1点が取れていると思う。そこにいかないといけないと思っているし、ここからどれだけもっと運動量を増やして、前に攻撃参加できたり、押し込まれた時の守備の戻りだったりをできるか。今までのことをベースにしながら、もっと走っていかないといけない。より結果を求めて『自分がエースだぞ』というのを見せないとダメだなと思った」
 
 東京五輪に向けて「自分が中心になってやっていきたい」という熱い野心を抱く10番にして、キャプテン。絶大な存在感を示した今大会は、苦しかったシーズンの締めくくりであると同時に、来季から始まる逆襲へのファーストステップとなる。
 
取材・文●川端暁彦(フリーライター)