炎上した発言を"なかったこと"にする方法

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■「言ってません」「発言が誤解を生んだ」

言ってしまったことをなかったことにしたい──。誰もがそんなふうに考えたことがあるでしょう。そして、ビジネスで厄介なのは、上司や取引先に、発言や約束をなかったことにされたときです。そんな人たちに翻弄されないためにも、「言ったことを言ってないことにする」手口を学んでおきたいところです。

いちばんわかりやすいのは、完全否定をすること。「言ってません」とひたすらに否定する。政治家の弁明によくある、「記憶にございません」という言葉が典型です。ただ、録音や録画、議事録など、記録に残っていては、完全否定は通用しません。

それよりも、「詭弁」を使う相手のほうがたちが悪い。つまり、「言ったけれど、実はこういう意味だった」と理屈をこねる。最近の政治家は「発言が誤解を生んだ」という言葉をよく使います。どんな誤解だったかは説明せず、とにかく「発言の真意が伝わらなかった」ことにする。完全否定よりも、むしろ詭弁を用いる人を相手にするほうが、コミュニケーションはしんどいものです。

言ったことをなかったことにしたい人間が狙うのが、「一貫性効果」です。つまり、時間と場所が変わっても一貫して「言っていない」と言い続ける。追及したい側も、相手に言い続けられると、「そうだっけ」と、いつしか納得してしまうのです。

そんなにうまくいくだろうか、と思うかもしれませんが、その有効性は歴史が証明しています。「嘘も100回つけば本当になる」方式は、第2次大戦中、ナチスドイツのプロパガンダで使われたもの。また、戦時中の政治家たちは、戦争に勝てると言い続けていたのに、負けた途端に「勝てるとは言っていない」と責任逃れをはじめたのです。

この一貫性効果を高めるためには、誰に対しても同じことを言うのが大切。人によって言うことを変えては、回り回って間接的に、「あの人は、本当はこんなことを言っていた」と伝わる可能性がある。そうなると、効果は薄まります。

■ブラック企業の経営者、ハラスメント上司も実践

いつでも、誰に対しても徹底して否定することで、「あの人はこう言い続けている」と印象づける。聞いている側は「自分のほうが記憶違いをしているのでは」とか、立場の弱い人だと、「自分のほうが頭が悪いし……」と思い込んで、心細くなっていくのです。そうなれば、思う壺です。

続けて、聞いた側にプレッシャーをかけるやり方が考えられます。つまり、「言うことを聞かなければ、どうなっても知らないぞ」と圧力をかける。過去の発言について、「言った」と指摘するとマズいのではと思わせるのです。特に集団状態でこの状況に陥ると面倒です。集団のなかで同調圧力が生まれ、誰も指摘できない状況が生まれてしまいます。

ブラック企業のカリスマ経営者や、ハラスメント上司に、誰も文句が言えない状況などはまさに典型です。集合的無知が生まれ、「おかしいと思っているのは自分だけなのでは……」と、みんなが考えてしまう。場の雰囲気に流されて、まさに「裸の王様」の寓話の通りになってしまうのです。

(立正大学心理学部教授 西田 公昭 構成=伊藤達也)