核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮に、米国のトランプ政権が突き付けた「レッドライン」。しかし、北朝鮮は武力行使に踏み切れないトランプ政権の足元を見透かすように挑発を繰り返す。トランプ政権には手詰まり感が漂っている。写真は北朝鮮・平壌。

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2017年12月16日、核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮に対し、米国のトランプ政権が越えてはならない一線として突き付けた「レッドライン」。しかし、北朝鮮は武力行使に踏み切れないトランプ政権の足元を見透かすように挑発を繰り返す。トランプ政権には手詰まり感が漂っている。

米朝開戦となれば滅亡を免れない北朝鮮の目標は、朝鮮半島を舞台にチキンゲームを続け、核保有国と認めさせた上で、米国との交渉に臨むことだ。11月29日にワシントンやニューヨークにも届くとする射程約1万3000キロの大陸間弾道弾(ICBM)「火星15」を発射したのもチキンゲームの一環とみられる。

北朝鮮の巧妙さは「レッドライン」を逆手に挑発の範囲を徐々に拡大させ、ミサイルや核の実戦化に向けた試験を続けていることにある。米国領グアム島の包囲射撃や太平洋上での水爆実験の予告は、その典型だ。

北朝鮮は8月9日、中長距離弾道弾「火星12」4発を同時発射し島根県、広島県、高知県の上空を通過してグアム島周辺30〜40キロの水域に着弾するとの具体的な作戦案を明かした。飛行距離は3356.7キロ、飛行時間は1065秒(17分45秒)とまで明言した。一方で最終的には朝鮮労働党の金正恩委員長の命令を待つと指摘。金委員長は米国の行動を注視するとして発射は留保したままだ。

その後、北朝鮮は8月29日、同国西岸から「火星12」1発を北東方向に向けて発射。北海道の襟裳岬の上空を通過し、約2700キロ飛行して太平洋上に落下した。9月15日にも「火星12」1発を平壌市郊外から発射し、やはり北海道上空を通過して約3700キロ飛行した。2回とも北日本などに全国瞬時警報システム「Jアラート」が鳴り響く事態だったが、ミサイルはグアム島には向かわず、国際社会を安堵(あんど)させた。

さらに北朝鮮の李容浩外相は9月22日、国連総会出席のため訪問した米ニューヨークで、太平洋での水爆実験をかつてない規模で実施する可能性を示唆した。金委員長が米国に対し「史上最高の強硬対抗措置」を検討すると警告したことについて、記者団からの質問に答えたものだった。

約2カ月後、北朝鮮は「火星15」を高角度で発射して飛距離を抑えるロフテッド軌道で打ち上げた。米本土攻撃がますます現実味を帯びた形だが、李外相発言が隠れみのとなり、「レッドライン」越えとみなされなかった。

これに対し「最大限の圧力」一辺倒のトランプ政権は打開策を見いだせないまま。こうした中、ティラーソン米国務長官は12日、「北朝鮮が望む時にいつでも前提条件なしで対話する用意がある」と表明し、注目を集めた。トランプ政権は北朝鮮が核・ミサイル開発の放棄に向けた行動を取ることを対話の条件としていた。

ティラーソン長官は15日になって国連安全保障理事会で演説した際、「挑発停止が交渉の条件」と発言を軌道修正。政権内で異論が相次いだためとみられ、これも決め手を欠く手詰まり感を反映しているかに見える。(編集/日向)