韓国の選手たちの打開力に対し、日本は個の勝負で仕掛ける場面が少なすぎた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 ラモスさんじゃなくても怒るよ、ほんとに。
 
 韓国に手も足も出ない日本を見て、ある言葉が脳裏に甦ってきた。
 
「サッカーっていうのはねえ、敵を背負ってパスを受け、駆け引きしながら前を向き、目の前の敵を外してボールを前に運ばなきゃ話にならないのよ。それができない選手は、ワールドカップに出ちゃダメなの」
 
 この言葉を聞いたのは、ブラジル・ワールドカップの初戦でコートジボワールに負けた直後のこと。発言者はラモスではなく、ブラジルに長く住む日本人の知り合いである。
 
 日本と韓国、個々の力量の差は明らかだった。
 韓国の選手たちはひとりでボールを受け、プレッシャーをかけられても慌てず敵に身体をぶつけ、背後を取る力がある。
 日本はそれができない。だれひとりとしてプレッシャーを引き受けようとせず、横か後ろ、安全なところにばかりボールを運ぼうとする。これでは状況は変わらず、すぐにじり貧となる。
 
 90分間、目を覆いたくなるような場面のオンパレードだったが、中でも失望したのが56分のシーンだ。
 最前線の中央で土居が後ろ向きにボールを収めた。背後には敵がふたりいたが、ぴたりと寄せられているわけではない。ここは「前を向いてシュートを狙う」が、第一の選択肢だろう。そのほうが敵は困る。
 
 ところが土居は前を向くどころか、慌てて後ろに戻した。しかもこれが敵に渡ってしまい、日本は逆襲を食らう羽目に……。
「あーあ」。私はため息をついたが、驚きはなかった。Jリーグで見慣れた、いつもの日本サッカーだからだ。
 
 日本の選手はボールを受けると、まず味方を探そうとする。敵のゴールよりも先に味方を探すのだ。
 土居も例外ではなかった。いい位置を取ったというのに敵との駆け引きを放棄して、安易に味方につなごうとする。安くない入場料を払った、お客さんに見せるプレーではない。
 
 仕掛けて負けるのではなく、仕掛けようともしない。
 こういう戦えない選手ばかりが生まれるのは、Jリーグで個人より組織の論理が優先されているからだ。みんなで守り、みんなで攻めましょう。で、だれも責任を取ろうとしない。これはサッカーに限ったことではない。私たちの国民性に根差したものなので、変えるのには時間がかかる。
 
 じゃあ、どうすればいいんだよ? と尋ねられると、根気強く変えていくしかありませんと答えるしかないのだが、それではこれを読んでいる皆さんも不満だろう。
 
 そこでひらめいたアイデアがある。
 代表候補一人ひとりに夜道を歩いてもらうのだ。
 
 信じてもらえないかもしれないが、世界中には夜、絶対にひとりで歩いてはいけない路地がたくさんある。
 例えばブラジルなら、ワールドカップ開催都市となったサルバドール。この街の中心には世界遺産にも指定される美しい広場があるが、ここから安宿街までの200メートルが死ぬほど恐ろしい。こう断言できるのは、私が実際に襲われているからだ。
 
 サルバドールで襲われてから、私は悟った。
 サッカーは夜道だ。強盗やスリが目を光らせる夜道をかいくぐって、無事宿に帰るのがゴールなのだと。
 こういうことを選手一人ひとりにやってもらったら、一発でサッカーの本質がわかってもらえるんじゃないかなあ。
 
 そして、こうも思う。
 日本にはサルバドールのような恐ろしい路地はない。だから、日本の選手たちは敵がちょっと強くなっただけで怖気づき、仲間を待ってしまうのだろう。
 
 選手批判に終始したが、もちろん監督にも不満はある。
 
 ハリルホジッチ監督は会見で、韓国を絶賛した。たしかに韓国は強かったのだが、手放しで敵を褒められても困る。
 サッカーは敵と駆け引きをする競技。韓国が素晴らしかったのは、ひとつには監督が無策に近かったからだ。
 
 ひとりで勝負できない選手たちと、手をこまねいている監督。これでは勝てるはずがない。ハリルホジッチ監督はロシアでも、敵を絶賛するつもりなのだろうか。

取材・文●熊崎 敬(スポーツライター)

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