『おんな城主 直虎』いよいよ最終回! 壮大なコント「本能寺が変」を振り返る

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 『おんな城主 直虎』もいよいよ本日で最終回を迎える。本来連続ドラマというもの、特に50回にもわたる大河ドラマの終盤は、最後の数話でしっかりまとめに入るか主人公の死に至るクライマックスの大合戦に向けて動くかといった流れではないかと思う。だが、またもこのドラマは、並びに森下佳子脚本は、いろんな意味で裏切ってくれた。

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 もちろんここ数話であらゆる伏線を回収し、主人公の人生を過去から総括してきてはいるのだが、「世を変える」という大きな夢に向かって以前に増してイキイキしている主人公・直虎(柴咲コウ)と同じように、終わりが全くつかめない。そして、時代劇ファンの多くは拍子抜けしただろう、壮大なコント「本能寺の変」とでもいったような第49話「本能寺が変」は、ある意味、『おんな城主 直虎』らしさの真骨頂と言える回だったのではないだろうか。

 『おんな城主 直虎』は、井伊谷という小さな土地とそれを守る人々、世代を巡る物語であると同時に、小国の城主であり一女性である直虎という第三者から見た戦国絵巻でもあった。彼女の広い視野から見る戦国の世は現代にも通じ、乱世を生きる武将たち1人1人は残酷な一面を持つと同時に時に滑稽で斬新だった。

 多くの話題を呼んだ小野但馬守政次(高橋一生)の死に様はじめ、瀬名(菜々緒)と信康(平埜生成)、直親(三浦春馬)の死など、その乱世ゆえの無常な死をとことんシビアに描ききったにも関わらず、これまで多くの名優たちがその死に様を演じてきた信長の死はあえて描かずに終わらせる。そこにこのドラマが持つ第三者的ポジションの意味を物語っているのではないかと感じた。

 まず、メインである市川海老蔵演じる織田信長と光石研演じる明智光秀がおかしい。「この金柑!」と信長に足蹴にされるも、ひざまずき懸命にその靴を拭く光秀と、そんな光秀の肩を叩き「そなたが頼りだと言うておるのじゃ」と優しい声色で語りかける信長の姿は、これまでの時代劇が描いてきた信長の横暴に耐える光秀の屈辱的な姿というより、妙に甘く、傍からみたらちょっと異常な主従関係を想像させる。

 また、何度引いても凶のおみくじを最後の最後に大吉にしてニヤァと笑う、なんだかかっこ悪い光石研の光秀は、あの名台詞「敵は本能寺にあり」を叫び、一方の信長も、今までの血も涙もない残酷な悪役としての役割を放棄し、自ら膳を運び徳川一同を仰天させ、大切な弟分・家康のことを思いながら彼への贈り物を考えている。

 そしてこの物語をさらにおかしな具合に盛り立てるのが、三層からなる第三者の構図であり、彼らの「見る・見られる」の関係の妙だ。一層目は、光秀が信長への謀反を企てているという事情を知っていてあえて巻き込まれた徳川、二層目は何も知らずに巻き込まれた穴山梅雪(田中要次)、ちょっと離れたところで彼らを俯瞰している三層目が、徳川を助けるために奔走する直虎たちである。

 さらに言えば、ドラマの展開はわからないが結果どうなるのかは史実上の事実として知っていて、彼らの動向を全て俯瞰することができる視聴者が四層目としてここに加わる。つまりこの「本能寺の変」は信長・光秀という当事者を除く登場人物のほとんどが、視聴者と同じように事のなりゆきを遠くから「観戦」しているような状況にある。

 光秀による信長への謀反の企てという今後の徳川の運命を左右するような出来事、さらには自分自身の暗殺の危機が差し迫る状況で、予測不能な事態が次々に起こり、当事者たちの不可解な行動を追って分析し「やるのやらないの、どっちなの?」とあたふたする徳川というだけでも面白いのに、そんな徳川を傍から見ている何も知らない穴山が、徳川の動向を不信がる。

 徳川を助けるために信長・光秀の動向と徳川の動向を追っている直虎は、「やっぱり京に向かう!」という家康の予測不能な行動に慌て、龍雲丸(柳楽優弥)を使って徳川の前で一芝居打つ。やけにわざとらしい龍雲丸の小芝居に便乗した、さらにわざとらしい徳川一行の小芝居を見つめ穴山は余計に混乱する。それぞれの思惑に動く彼らの予測不能な行動を表情のみでツッコミ続けた、万千代を演じる菅田将暉も秀逸だった。

 このドタバタコメディの中に、後の名参謀となるノブこと本多正信(六角精児)の「さすがは裏切り者」という仕事ぶりの見事さや、そのやり方の汚さを黙認し利用する家康のただのいい人ではないタヌキっぷり、さらには直虎と龍雲丸の再会と、あらゆる過去の伏線の回収と未来への布石もふんだんに詰め込まれていることも見逃せない。

 最終回、謀反人・明智光秀の遺児となってしまう、井伊谷で匿われている自然(田中レイ)はどうなるのか。直虎の「戦さをなくす戦さ」、人を逃がし、守るための最後の戦いが始まろうとしている。(藤原奈緒)