45歳で電撃結婚したC子さんは結婚してから、ようやく致命的な失敗に気付いた(写真:tachi / PIXTA)

今回、私たちファイナンシャルプランナーの事務所に「おカネの相談」に来たのは、大手商社に勤める45歳の女性、C子さんです。実はC子さんは2年前にも一度相談に訪れており、今回は2回目。初めてのときは独身でしたが、半年前に良い出会いがあり、結婚したとのことでした。

初回時、C子さんは「私も40歳を過ぎて一生独身だと思うので、家、買っちゃいました!」と笑いながら、貯めたおカネの運用の相談をしに来たのですが、今回は浮かぬ顔です。実は、買った家が結婚後、すっかり「お荷物」になってしまったというのです。どういうことでしょうか。

「まさかの結婚」で、ライフプランが激変!

まずはC子さんが結婚する前の話から。C子さんは、柔らかい雰囲気がとても素敵な女性です。2年前に相談に来たときには43歳だったわけですが、当時はお付き合いしている人もおらず、自分で一生独身だと決めこみ、マンションまで購入していたのでした。確かに、40代になり彼氏もいないとなると、「一生独身かも……」と考えるのもわかります。

ことマンション購入に関しては、それなりに貯金もあったため、まったく問題なく住宅ローンが組めました。めでたく郊外の広めの新築マンションを購入し、快適に暮らしていたのですが、出会いは突然やってくるもの。友人に誘われて何気なく行った食事会で素敵な男性との出会いがあり、その場で意気投合。その後、順調に交際が進み、半年前にめでたく結婚したのです!

C子さんにとってはまさに予想外の出来事だったわけですが、こうして事務所で相談を受けていると、ふと思うことがあります。偶然なのかもしれませんが、独身女性の場合、なぜか家を買ったとたんに彼氏ができたり、結婚したりする方が少なくありません。

もちろん、家を買うのも、結婚するのも、そのこと自体は喜ばしいのですが、家を買ったあと結婚して、相談に来る女性のお話を総合すると「もっと便利なところに買っておけばよかった……」「もっと広い物件を買っておけばよかった……」「そもそも買わなければよかった……」など、家で後悔するケースが本当に多いのです。

C子さんの場合も、やはり独身時代に買った家が重荷になってしまい、せっかくの結婚生活を謳歌できていないとのことでした。もちろん女性に限りませんが、一生独身と思っていても突然出会いがあり、結婚するかもしれません。「おひとりさま」のうちに家を買う場合は、いくつか気をつけなければならない注意ポイントがあります。

新築物件の「魔の魅力」にご用心!

一般的に、独身女性が家を買おうと思い立ったら、やはりマンションを購入するケースが多いのですが、新築か中古かといえば、圧倒的に新築が人気のようです。

確かに、新聞の折り込みチラシに入ってくる洗練された広告を見たり、おしゃれなインテリアや最新の設備が備えられたモデルルームを見たりすると、「やっぱり新築って素敵!」と感じてしまうのもわかります。また、営業マンも巧みな営業トークできっちり盛り上げてきますので、ついその気になってしまいますよね。

では、盛り上がった気分で、新築を買ってもいいのでしょうか。もちろん、まったくダメというわけではありません。しかし、住宅関連のサイトを見てもらうとわかるのですが、新築マンションと中古マンションでは、同じエリアにあり、駅からの距離や広さなどの条件がほぼ同じでも、価格はまったく違います。

不動産は個別の物件によってかなりの差が出るので、100%当てはまるとは言えませんが、たとえば東京都内のワンルームマンションの場合、新築だと2500万〜3000万円程度というのが相場です。超都心の港区、千代田区のブランドエリアになると、ワンルームなのに4000万円を超える物件も珍しくありません。一方、これが中古となると1000万円を割って数百万円程度〜2300万円程度の物件が中心です。

なぜこのような価格差が生じるのでしょうか。それは、新築物件にはいわゆる「新築プレミアム価格」が上乗せされているからです。新築プレミアム価格とは、売り出すときに広告宣伝費や不動産業者、建築業者の利益を上乗せした価格のこと。

みなさんのご自宅にも新築物件の広告が入ってくると思いますが、あの広告には結構なコストがかかっています。通常、新築物件は物件価格の2〜3割がプレミアム価格として上乗せされていると言われています。たとえば、3500万円の物件であれば、700万円程度がプレミアム価格としてのっているということ。極端な話、新築物件を購入して次の日には、2800万円に値下がりするというイメージです。

貸したり売ったりは、簡単に実現できない

C子さんが購入したマンションは、都内とはいえ、都心からは結構外れた郊外で、しかも駅からは徒歩15分程度のマンションでした。にもかかわらず、面積がそこそこ広めということもあり、4000万円近くしました。典型的な新築プレミアム物件でした。

読者のみなさんからは、こんな声が聞こえてきそうです。「部屋がそこそこ広い物件なら、そこにダンナと住めばいいじゃん」と。しかし、そういうときに限ってと言うわけではないのですが、C子さんのご主人の仕事は結構な激務で、「できるだけ職場から近い都心エリアに住みたい」とのことでした。C子さんも彼の体を気遣い、職場に近いところに住むことに賛成した結果、買ったマンションが完全にお荷物になっているわけです。

「じゃあ、家賃を下げても貸せばいいじゃん! それでもダメなら売ればいいじゃん!」。再びそんな声が聞こえてきそうですが、そのとおりですね。しかし、いざマンションを人に貸そうとしたところ、今や駅から遠く、1人で住むには中途半端に広く、郊外エリアだったため、借り手がなかなかつかないとのことでした。家賃を大幅に下げるのもなんだかばかばかしいし、売却しようにも、買い手も、なかなかつきません。

仮に買い手が見つかったとしても、新築物件を買っているので、売却価格よりも住宅ローンの残債金額のほうが多く、「家はないのにローンだけが残る空しい状態」になってしまう可能性があります。

C子さんも、残念ながら、今マンションを売ると、まさにローンだけが数百万円残るのは間違いなさそうです。だからといって、結婚後、彼と別の場所に一緒に住みながら、借り手もつかないまま自分が購入したマンションのローンを払っているのでこんな無駄なことはありません。相談の結果、買ったマンションについては、筆者が信頼を置いている不動産コンサルティング会社を紹介し、賃貸か、損切り覚悟での売却か、次善策を練ることになりました。

買うときは、絶対に「出口戦略」を考える

今回のC子さんは、結婚がきっかけで突然ライフプランの変更を余儀なくされましたが、ライフプランの変更は誰にでも起こる可能性があります。

ですから、家を買うときには、ワクワク感が抑えきれなくなるのはわかりますが、「この物件は人に貸せるか、人に売れるか」という、いわば「出口戦略」を考えて選ぶことがきわめて大切です。


考えているようで、本当にしっかり考えている人は決して多くありません。もし人に貸すとしたら「毎月のローンの返済金額を上回る金額」で貸せるのか、売却するとしたら「ローンの残債金額を上回る金額で売却できるか」どうか。これで、家が資産になるか、お荷物になるかが決まります。この差は、決定的です。

「家を買うときから、貸したり、売ったりすることを考えたくない」という気持ちはわからないではありませんが、「出口戦略」を考えて買うことで、人生の転機にも柔軟に対応することができるのです。

特に女性の場合、仮に一生独身だとしても、一般的に女性は長生きなので、終の住処が「老人ホーム」になる可能性もあります。民間の老人ホームは、月払いにすると、毎月20万〜30万円程度の費用がかかります。年金だけでは足りず、住まいを人に貸して家賃収入を得るか、売却してまとまった金額を得るかといった選択肢を考慮に入れて家を買わないと、あとあと老人ホームの入居も難しくなる可能性があります。

家を買うときには、賃貸の需要が旺盛なエリアはどこなのか、資産価値が高い物件とはどのようなものなのかなどをよくよく考えてから、買うことが大切です。