女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは普通の毎日を送っていたはずが、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

今回お話を伺ったのは、保険会社に勤務する蔵本里美さん(仮名・35歳)。地方の国立大学卒業後、就職で上京し13年になります。

身長160cm、ぽっちゃり体型で地味な顔立ちなのですが、どことなく華やかな雰囲気があります。バッグはフランスブランドの家紋柄ですが、15年ほど前にブームになった、ジャカード織のデニム素材です。ファッションは、黒いギンガムチェックのジャンパースカート。インナーにはタートルネックの白ニットを着ています。

「今、お金が全然なくて、帰省もできないし、年も越せないかも。貯金通帳の残高は12円くらい。一度、親に迷惑をかけてからきつく自分を戒めていた、キャッシングに手を出してしまいそうです」

中堅クラスの保険会社に正社員として勤務しているのに、そこまでお金がないというのはなぜなのでしょうか?

「先月に5年付き合って別れた彼が、ヒモというか……私のお金を頼り切っていたからなんです。彼は3歳年上で、前の会社の同僚でした。私と友達がフラッと入った、新宿のバーで店員さんをしていて、その後、お店に通ううちになんとなく男女の仲になりました。彼はバツ1で、カッコよくて色気があり、前の会社でも女子社員にすごく人気があったので、自分が特別になった気分になっちゃったんですよね」

彼は前の会社を“友達とバーを経営する”と言って辞めたそう。だから、そのバーは彼のお店かと思ったという里美さん。

「恋愛関係になったのは、3回目に会った時かな。お店が終わる深夜2時くらいまで待たされたので、私はてっきりホテルか彼の家に行くのかと思っていたら、大きなナイロン製のボストンバッグを持って店から出てきて、ウチに来るって言うんですよ。東池袋のワンルームの汚いマンションだから嫌だったのですが、どうしてもと言われて。3000円くらいのタクシー代は彼が払ってくれました。で、その日から出て行かないんです。よく話を聞いたら、彼は家賃が払えなくて家を追い出されて、お店で寝泊まりしていたんですって。それからワンルームマンションのシングルベッドで、並んで寝る。いつか子供が生まれて“川”の字になって寝ることを夢見ましたが、その日は来ませんでした」

この彼は、ダメ男特有の魅力にあふれていた。

「私は男性とまともに付き合ったことがほとんどなかったので、“オマエはかわいいな”とか“料理が上手すぎる!感動して涙出る”とか言われると、心臓がギュッと絞られるくらい切なくて苦しくて、彼のことが大好きになってしまうんですよ。ほかにも、“オマエといると落ち着く。あ〜楽しい”とか言いながら、お鍋をつついたり……今までの男性は、嫌われることにビクビクして、相手に気に入られるように行動していたのに、彼の前だと自由でいられたのがよかった。経済的に優位に立つと、自信をもって相手と接することができるんですね」

LINEもメールも、彼には送りたい放題だったと言います。

「かわいい猫を見たとき、美味しいランチを食べたとき、“こんなもの見つけたよ〜”みたいな内容のLINEを送りまくっても、すぐに返事をくれるんです。こんな素敵な男性、いませんよね。私はずっと既読スルーと未読スルーに怯えていたので、すぐにレスをくれて、どんな内容でも“おもしろいね”と言ってくれる彼と付き合っていると、本当に安らぎました」

しかし、里美さんが転職し、年収が550万円になると、彼が目に見えて自堕落になっていったと言います。

「同棲3か月で生活費を1円も出さなくなりました。さらにお店を辞めてきて、デイトレーダーのまねごとをするようになった。そしてその仲間たちのセミナーで、“ネット通販で一攫千金”みたいなところに10万円も払って参加して、海外オークションや中国のECモールで、仕入れをするようになりました。その費用を私に頼るようになり、こっちも“儲けて倍にして返すから”と真剣な顔で言われると、ついついお金を貸してしまい、結局600万円くらい彼に渡してしまいました」

彼と交際する前に付き合っていた男性は2人で、いずれもモラハラ気味だった。優しい彼とは結婚も考えていた。

夢追い人の彼の生活全般の面倒を見て、500万円あった貯金は1年で底を尽きる〜その2〜に続きます。