米国は再び、北朝鮮をテロ支援国家に指定した(写真:Jason Lee/ロイター)

トランプ米大統領はこれまでのところ、北朝鮮に対抗するための戦略を実行するどころか、戦略をまとめることすらできていない。大統領に就任して1年近くが経過する中、唯一成果と呼べるのは国連で追加制裁決議にこぎ着けたことくらいだ。

トランプ氏は過去の政権から問題を引き継がされたと不満をぶちまけているが、これが示唆するのは、次にどう行動するべきか、まったくわかっていないということである。

トランプ氏は11月、北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定すると大々的に発表した。だが、この決定は、そもそも象徴的なものにすぎない。テロ支援国家の再指定は、トランプ政権が主張するような「極めて重要な一歩」では、まったくないのだ。そもそも米財務省は、そのような指定を追加制裁のための必要条件とすらしていない。

テロ支援国家に指定されている4カ国

しばしば指摘されているように、テロ支援国家のリストは、テロ組織との関係が疑われる国を網羅したものではない。現時点でテロ支援国家に指定されているのはイラン、北朝鮮、スーダン、シリアで、4カ国にすぎない。

2013年まで大統領だったベネズエラの独裁者、チャベス氏とゲリラ組織「コロンビア革命軍(FARC)」との関係はよく知られていたが、ベネズエラはテロ支援国家の指定を免れている。FARCは米国務省がテロ組織と認定しているにもかかわらず、である。パキスタンもテロ支援国家指定につながるような関係がテロ組織との間にあると信じられているが、テロ支援国家リストにその名はない。

確かに、2008年にブッシュ政権が行った北朝鮮のテロ支援国家指定解除も象徴的なポーズにすぎなかった。とはいえ、その意味合いは、トランプ氏が今回行った決断とはまるで異なるものだった。

北朝鮮は当時、核問題をめぐり、中国、日本、ロシア、韓国、米国との6カ国協議に応じることに合意していた(この会議で私は、東アジア・環太平洋担当の国務次官補として米国側の代表を務めた)。交渉の目標は朝鮮半島の非核化であり、北朝鮮が寧辺(ヨンビョン)にある核施設を閉鎖することで合意した。

このとき、北朝鮮は寧辺の核施設の冷却塔を爆破することにも同意したのだ。テロ支援国家の指定を解除した米国の象徴的な行動に報いるためである。もちろん、合意内容は中途半端なものではあったが、トランプ氏が当時大統領だったら、すぐさま飛びついただろう。

6カ国協議における合意は、結果的には崩壊した。核兵器に必要なウラン濃縮計画の存在を北朝鮮が頑として認めようとしなかったからである。

テロ支援国家の指定を解除する基準は

寧辺の核施設は、何年かの停止期間を経て現在、再び稼働している。老朽化して使い物にならないと言う人たちの見方に反して、寧辺の核施設は“今そこにある危機”であり続けているのだ。

トランプ氏が北朝鮮をテロ支援国家に再指定したとき、官僚からの抵抗はほとんどなかったし、国際的にも波紋は広がらなかった。これを見ればわかるように、テロ支援国家のリストは、米国が自由に使える便利な制裁手段なのだ。

指定を解除する基準は、テロ行為およびテロ組織との協力関係が過去6カ月間にわたり存在しないこと。非常に柔軟な基準であり、外交の交渉カードとして手軽に使える。同様に、条件さえ整えば、指定解除は簡単に取り消すことができる。たとえば、北朝鮮の最高指導者・金正恩(キムジョンウン)氏が、異母兄の金正男(ジョンナム)氏をマレーシアの空港で暗殺するよう仕組んだ、といったような出来事によってである。

北朝鮮問題を解決するには、真剣な目的意識が必要だし、一定の規律も要求される。いずれも、トランプ氏には見られないものだ。政策に効果を持たせるには中国の協力が必要だが、それは中国の指導者に対して大げさにお世辞を言うこととは違う。

協力は長期にわたる責任を伴うものであり、1回かぎりの取引ではない。それによって迫られているのは、中国だけでなく、すべての関係国と絶えず協議し続けることなのだ。