南京事件80周年の追悼式典に出席した中国の習近平国家主席が演説をせず、波紋を呼んでいる。犠牲者が30万人に上ったと中国側が主張する中、日本批判を避け沈黙を守った習主席の日中関係改善は本気モードのようだ。写真は南京大虐殺記念館。

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2017年12月15日、13日の南京事件80周年追悼式典に出席した中国の習近平国家主席が演説をせず、波紋を呼んでいる。習主席の式典参列は3年ぶり。国営テレビが中継すると事前に伝えていたことから、何らかの発言があるのではとみられていた。日本批判を避け沈黙を守った習主席の日中関係改善は本気モードのようだ。

式典に先立ち、中国共産党中央委員会機関紙・人民日報の電子版は「『南京大虐殺』は抗日戦争時すでに国内外の認める戦時暴挙だった」との記事を掲載。「(1937年の)南京大虐殺は発生後すぐに国内外が一致して認める日本侵略者による重大な暴挙とされており、日本軍が南京で犯した犯罪行為についてしらを切ることは許されないと考える」と強調した。

記事は米ユナイテッド・プレスの1943年5月16日ボストン発の報道で、ノックス米海軍長官(当時)が日独伊枢軸国に対し、「われわれは南京の殺りくを決して忘れない。ユダヤ人の大量殺りくもまた忘れない。血なまぐさい犯罪行為に携わった首領には厳罰を与える」と警告した、などと紹介。南京事件を戦後の捏造(ねつぞう)とする日本の一部の見方に反論している。

こうした中、中国国営新華社通信は11日夜、旧日本軍による南京事件80年を迎える13日午前、江蘇省南京で追悼式典が開かれ、党・国家指導者が出席する」と報道。中央テレビが式典を中継することから、習主席が出席する可能性があるとみられていた。

13日午前10時、「南京大虐殺記念館」で行われた式典開始に合わせて登場した習主席は、哀悼の意を示すサイレンや車のクラクションが鳴り響く中、事件の遺族ら集まった約1万人の参加者と一緒に頭を下げて黙とう。全国政治協商会議(政協)の兪正声主席の講話を穏やかな表情で聞いた後、式典終了とともに立ち去った。

式典の様子を日本メディアは「出席した習近平国家主席が演説しないことが分かると、会場を訪れた国内外の記者らからざわめきが起こった」と報道。「関係改善のメッセージだ。政協主席が講話を発表したことが物語っている」と解説する当局者もいたという。

中国は沖縄県・尖閣諸島や靖国神社参拝の問題で日中関係が悪化した後の14年、南京事件の起きた12月13日を「国家哀悼日」に制定して初めての式典を開催。習主席が出席し、演説した。式典はそれまで地元政府が主催してきたが、愛国意識を高め、日本の「加害者」としての位置付けを明確にするため、国家行事に格上げされた。

講和で兪主席は南京事件犠牲者が30万人に上ったとの中国側の主張に言及して「日本の侵略者」の行為を非難する一方、今年の日中国交正常化45周年、来年の日中平和友好条約締結40周年に触れ、「両国は歴史をかがみとし未来に向かって友好を続け、人類の平和に貢献しなければならない」と強調。習指導部が進める日中関係の改善に配慮も示した。(編集/日向)