30代は結婚適齢期。共働きでも、あまり収入がなければ将来が心配。でも、おカネのことが計算できるようになれば不安は解消される(xiangtao / PIXTA)

「自分は年収がさほど高くない。彼女も働いているけど、やっぱり収入は多くない。愛し合っているので結婚するが、その後は大丈夫だろうか」――。 

読者の皆さんは、どう思われますか。「愛があれば大丈夫、うまくいく」。そうかもしれません。が、やっぱり不安にかられるところです。今回「おカネと人生の相談室」に寄せられた相談の中でいちばん切実に感じたのは、このケースです。「決して高収入でなくても、寄り添って人生を歩むには、どれくらいおカネが必要なのか」。早速、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

共働きで手取り年収約700万円。結婚してやっていけるか


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相談者は、東京都にお住まいの34歳の会社員、前原恭輔さんです。事情があって大学卒業後、就職したのは20代後半と遅かったこともあり、現在の手取り収入は330万円ほど。現在の資産は150万円ほどです。

前原さんは同い年の女性と10年間付き合って現在婚約中。今後、継続雇用で65歳まで働いた場合の、平均の手取り年収は、少しは増え450万円程度になりそうですが、中小メーカーの営業職で、これ以上は望めそうもないとのこと。一方、婚約者の手取り年収は280万円程度。将来、前原さんは、出産や子育て中は仕事を休ませてあげたいし、社会復帰後もフルタイム社員ではなくパート勤務などで負担を和らげてあげたい、というやさしい気持ちを持っています。

でも、子供も生まれれば教育費もかかるし、長男なので親の介護をすることになるかもしれません。仮に結婚して奥さんが職場に復帰したとして280万円を稼いだとしても、2人の手取り年収は450+280=730万円。これで子供を育てて本当にやっていけるのか、不安だと言います。

さて、この質問にどう答えればいいでしょうか。結論から言うと、 前原さんは将来にあれこれ不安を持っているようですが、少し心配しすぎだと思います。

なぜでしょうか。こうした漠然とした不安は、実は、実際に計算することでかなりの程度解消できるのです。一緒に考えていきましょう。

まず、どこに目をつけるべきでしょうか。貯蓄です。前原さんは34歳で資産が150万円。25歳で就職したということは、9年で貯金150万円=年間約17万円のペースでしか貯められなかったことになります。これはいささか少ないです。まず、結婚後は、なんといっても貯金を殖やし、手取り年収に対する貯蓄率を上げることが必要です。

通常は、共働きのカップルが結婚すれば、収入は合算で増える一方、支出も増えこそすれ、1人で暮らしていたときよりも楽になります。支出の管理が適切にできていれば、結婚すれば、貯蓄率を上げることができるはずです。

この前提に立って、早速結婚後の「前原家」の「必要貯蓄率」を、「人生設計の基本公式」を使って、計算してみましょう。人生設計の基本公式とは、一言でいえば老後(通常65歳)に現役時代の何割の生活水準で暮らすか(通常は7割)を決め、それまでに「手取り年収の何割を貯めるべきか」(=必要貯蓄率)を計算するものです。老後の年齢などは弾力的に設定できますし、いわゆるフルタイムワークなど第一線を退いてからも収入がある場合などにも対応しています。誰でも3分で計算できます。計算の仕方は、過去の記事「あなたは65歳までにいくら貯めればいいのか」をご覧ください。初めての読者の方は、このままケーススタディを眺めつつ、読み進めていただいてかまいません。

「前原家」の子供は1人で、教育費を500万円として計算してみます。

前原恭輔さん(34歳)婚約者(34歳)の結婚後の家計
会社員 共働き
家計の今後の平均手取り年収(Y)730万円
(現在の手取り年収ではなく、残りの現役時代の年数も考え、これからもらえそうな年収を考えて記入します)
老後生活比率(x)0.7倍(65歳になったら、現役時代の何割程度の生活水準で暮らしたいかを設定します)
年金額(P)300万円(2人共が60歳まで厚生年金とした場合)
現在資産額 -350万円(現在の貯金額から教育費を500万円と想定して差し引いた金額)
老後年数(b)30年(65歳から生きる年数)
現役年数(a)31年(65歳まで31年)

これらの条件を「人生設計の基本公式」にあてはめて、計算します。はたして「前原家」の「必要貯蓄率」(手取り年収に占める貯蓄の割合)はどれくらいになるでしょうか。

必要貯蓄率の計算は、以下のようになります。


2人が働き続ければ大丈夫。でも…

「必要貯蓄率」は17.6%で、年間128万4000円。つまり、毎月あたりにすると、約10万7000円の貯蓄をしていけば、老後は現役時代の7割の約35万円で生活することができます。

たとえば夏冬年2回のボーナスで計70万円貯めれば、あとは毎月5万円弱貯金すれば大丈夫。2人が今後も働き続け、必要な貯蓄をしていけば、それほど心配をする必要はありません。 

しかし、婚約者が、出産を機に仕事をやめられると話は別です。家計の収入も減りますし、それだけでなく、将来もらえる年金額も減ります。

ちなみに、平成27(2015)年の給与所得の平均給与額は、男性が521万円、女性が276万円となっていますが(厚生労働省「平成28年賃金構造基本統計調査」より)、男性と女性で大きな差があるのは、女性が出産時に会社をやめる人が多く、勤続年数が少ないことなどが大きな原因と考えられます。

たとえば、大卒女性が定年まで働き続けた場合の生涯賃金約2億5400万円を100%とした場合、育児休業を取得して働き続けた場合は、この比率は93.1%になります。

いわゆる「M字カーブ」といわれていますが、出産頃までは順調にキャリアを積んでいても、出産や子育てを機に退職し、子供が6歳のときに再就職した場合は、この率が64.1%。さらに、出産を機に退職して子供が6歳のときに再就職をせず、家庭を重視した働き方でパートやアルバイトをした場合は、17.8%になってしまいます(内閣府の国民白書平成17年度「ライフコース別の生涯賃金」より)。少々古いデータですが、ここ十数年ほど社会保険料と税金のアップで、手取り収入は下がり続けていますので、実際にはもっと厳しいかもしれません。

男性は「頼れるイクメン路線」を突き進め

もちろん、家庭と仕事のバランスをどうするか、子育て中はペースダウンするのか、キャリア形成を中断するのか、あるいはペースを変えずに働くのかは、それぞれの考えです。しかし、生涯賃金、ひいては老後に受給する年金を考えれば、産休育休を取得して働き続けるのがよいでしょう。

奥様になる婚約者のご苦労を案じて、「負担を和らげてあげたい」という気持ちはわかります。しかしそれよりも「頼りになるイクメン」としてサポートし、奥様が仕事を続けられる家庭環境を作るべきでしょう。

今後、どうやって貯蓄をしていくかは、2人の意思によるところが大きいです。結婚したら、かならず、互いの収支をオープンにして、毎月あたり最低約10万7000円の貯蓄をしてください。

なんといっても、お子さんが生まれるまでが「貯めどき」です。

総務省の家計調査「年齢階級別に見た暮らしの特徴」(2016年)によりますと、 子供がいる30歳代の世帯は、ほかの年代に比べて、幼児教育費用や保育費用が多く、平均で年間20万2467円の教育費がかかっていますが、これが40歳代の世帯だと、教育費は年間48万5821円、50歳代は50万9693円です。しかも、教育だけではなく、人生全体になにかとおカネはかかります。いかに貯めていくか、なるべく早い時点で計画することが大切です。では、必要額を貯蓄するために、具体的にどんなステップを踏めばいいでしょうか。

「前原家」だけでなく、読者の皆さん、特に共働き夫婦の方々はぜひ参考にしてください。

模範的な貯蓄方法としては、次の「3つのステップ」がよいでしょう。

「3つのステップ」で目標貯蓄率を達成する

〜綾个痢嵜誉言澤廚隆靄楔式」を使って、「必要貯蓄率」を求め、月々どのくらい貯蓄をしなければならないかを明確にする。

◆屬カネの置き場所」を作り、「先取り貯蓄」をする

生活費の半年〜1年分はいつでも出し入れできるように「流動性」重視で、「普通預金」にします。近い将来必要になるおカネは元本割れしない「安全性」を重視して、「定期預金」や「個人向け国債変動10年型」にします。そして、当面使う予定のないおカネは、「収益性」を目指して、投資信託や株式などで運用します。その際は、「個人型確定拠出年金制度(iDeCo)」、 2018年から始まる「つみたてNISA」」を優先し、それ以上の余裕資金は、ネット証券などの一般口座で、合理的で効率的な手段をとります。

資産全体でバランスをとる

運用する場合、金融商品は自分で「適切なリスク」を決めて、最も低コストな商品を選ぶことが大切です。ここで迷うのが保険ですが、保険は結婚を機に入る必要はありません。子供が生まれたら、保険料の安い掛け捨ての死亡保険に加入することをおすすめします。私的保険は、あくまで年金などの公的保障で不足する金額分だけ加入するというスタンスです。

公的年金を考える場合、 遺族年金は、遺族基礎年金と遺族厚生年金に分かれていますが、共に、遺族の年収が850万円未満であれば、亡くなった人に生計を維持されたと見なされて受給対象になります。遺族基礎年金は、子供がいれば受け取ることができ、子供が18歳になった年の最初の3月まで受給できます。年金額は、「77万9300円+子の加算」で計算され、加算額は、1人目、2人目は各22万4300円、3人目以降は7万4800円です。  

前原さんの場合、どちらかが死亡しても、100万3600円の遺族基礎年金を受け取れます。

しかし、遺族厚生年金は、亡くなるのが夫か妻かで変わってきます。まず、妻は、夫が死亡すると、子供の有無にかかわらず、再婚しないかぎり、一生涯受け取ることができます(30歳未満の妻は5年間の有期年金)。遺族厚生年金は、老齢厚生年金の4分の3相当になります(加入期間が300月〈25年間〉に満たない場合は300月として計算。なお遺族年金の試算は平成29年度の年金額)。

ただ夫が遺族厚生年金を受け取れるのは、子供の有無に関係なく、「妻の死亡時に夫が55歳以上」であることが条件です。妻の死亡時55歳未満で子供のいる夫は、夫が遺族基礎年金を、子供が遺族厚生年金を受給できますが、共に子供が18歳になるまでです。

「前原家」の場合、「大学の学費分+α」として、2人でそれぞれ保険金1000万円ずつくらいを考えておけばよいでしょう。たとえば、あるネット生命保険会社の保険に加入するなら、35歳男性が保険期間20年で1000万円の保障を持つと月々の費用は2385円です。35歳女性では1533円です。あわせても3918円ですみます。このように、固定費となる保険料は極力抑え、しっかりと貯蓄をしていきましょう。