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●クリエイティブ活動を含めたコラボレーション

去る12月1日、渋谷のRed Bull Studios Tokyoにて、Dropboxによる「Unleash the World's Creative Energy」イベントが開催された。Dropboxと聞くと個人向けのクラウドストレージサービスと思いがちだが、最近は企業向けのファイルコラボレーションや社内外をまたいだチームコラボレーションのための「新しい働き方を実現するワークスペース」を展開している。

今回のイベントは、クリエイティブや電子音楽の創造プロセスコアを支えるという、Dropboxプラットフォーム紹介がメインテーマだ。

Dropboxは無料で使えるBASICサービスのほかに、個人向けではPlusとProfessionalという有料サービスも提供している。最上位のProfessionalはエンタープライズ向け機能も利用可能。最低で3ユーザーの契約が必要な企業向けプランでなくても、多くの機能を利用できるのがメリットだ。

Professionalになると、BASICでは2GBしか使えなかったストレージが1TBまで増える。加えて、PCのフォルダからはファイルが見えるが、ローカルストレージには保存されておらず、必要なときだけDropboxから取得してくるスマートシンクや、共有リンクの管理、そして後述するShowcaseが使える。

Dropboxは高速なデータ同期が特徴だ。例えば仮に、転送途中でノートPCをスリープしても、次回に最初から同期作業をやり直さない。次回は、前回の途中から自動で残りのデータを転送する差分同期や、アップロード完了前に共有リンクからダウンロードを開始できるストリーミング同期などもある。

今年から提供が始まっているコラボレーション機能としてDropbox PaperとDropbox Showcaseも紹介。前者はチームでアイディア出しや作業を分担して行えるツールであり、クリーンなUIとみんなでサクサク使え、他のWebサービスも連動して使える(Dropbox Paperは全ユーザーが利用可能)。

一方、Dropbox Showcaseは、ドキュメントや制作物を作成する途中から、クライアントに「こんな感じにできた」というものを見せるためのツール。画像や動画、音楽などの素材をまとめて一つのURLで渡せるため、内容が更新されてもURLが変わらない点が特徴だ。こちらは企業向けとProfessionalユーザー限定となっている。

●Dropboxを使って素材を共有し、クライアントに音楽を提供

Dropboxが音楽作成で使われている実例紹介は、作曲家のHAIOKAさんとDropboxの植山氏によるトークショー。今回の会場「Red Bull Studios Tokyo」は、音楽スタジオにもなっている。2014年は東京でRedbull Music Academyが開催され、世界60カ国から6,000名の応募があったそうだ。HAIOKAさんは、その東京で受講を受けた一人だ。

トークは「ドキュメンタリー映画のサントラ」を作成したというテーマで進んだ。予算の関係でHAIOKAさんへの依頼は「テーマ曲のみ」だったが、HAIOKAさんにとって映画音楽はあこがれのテーマであり、全編同じ作曲家が作るのが良いと考えたそうだ。結果として全部で13曲作成したという。

制作段階におけるDropboxの使い方として、映画監督がDropboxで撮影素材を共有。HAIOKAさんも音楽をDropboxで共有した。Dropboxの場合、共有URLを一回通知すれば、あとはそのURLにアクセスすることで、最新版をダウンロードせずとも再生できるという強みがある。レコーディングはRed Bull Studios Tokyoを使わせてもらったそうだ。

●DropboxはどうやってDropbox Paperを作ったのか?

最後は、サンフランシスコのDropbox本社から来日した、プロダクトデザイナーのKurt Varner氏のプレゼン。Kurt Varner氏が担当した製品「Dropbox Paper」の、開発に対する考え方を紹介した。

Dropbox Paperは、コラボレーションができるワークスペースとして開発され、2017年1月にリリースされた。「物理的な紙にインスピレーションを得て、デジタルにしていくところに着目」。一枚の紙はフレキシブルで、さまざまな使い方で無限のアイディアを表現可能。そこからDropbox Paperに関しても、柔軟性のあるものを目指した。

柔軟性のあるワークスペース、Dropbox Paparは、すでに多くのクリエイターが使用している。映像プロデューサージョン アランニチア氏は「ライターが白紙の前に座ってあらゆる世界を作ることができる。Dropbox Paperはタイプライターのデジタルバージョン」とのコメントを紹介していた。

○Dropbox Paperのデザイン作業に関する3つのテーマ

一つめは「Paperのデザインチームを作っていく」ことで、7部門から72名が関わり、デザイナーだけでなくあらゆる人たちで作り上げた。

多くの部門からメンバーを参加させた理由として、「誰もがデザインを気にする必要はなく、本当に必要なのはどういう製品を作り上げるかを、それぞれの立場で考えること」と発言。ユーザーに使ってもらうのは製品であり、最終的に製品から素晴らしいデザインが生まれてくる。「プロダクトに対して本当に集中できるメンバーをチームに入れる」ことが難しかったという。

また、チームメンバーに当事者意識を持たせることが重要だとも。そのために、三週間に一回、4時間かけて、デザイナー、エンジニア、プロダクトマネージャーが集まって好きなものを作る「Hacky Hour」を行ったそうだ。良さそうなアイディアがあれば短時間で作り出す。Dropbox Paperの絵文字機能は、このHacky Hourから生まれた。

さらに「常に実験をしていく」ことを強調。誰もが好きな機能を作って、100人のメンバーからなる「実験チーム」に送って評価してもらう。このように、メンバーが当事者意識を持って強くつながっているチームを作ることが、企業にとって大切だと述べた。

二つめのテーマは「デザインに対して自分の意見をしっかり持つ」こと。Dropbox Paperは旧来のアプローチを変え、近代的なコラボレーション概念に基づいてゼロから考えた。「真っ白なキャンパスと変わらないもの、すべての可能性を切り開いていく使い方ができる」ものを作ろうと。人がツールに振り回されるのではなく、人が使いこなすものとしてツールを作成した。

最後の三つめ。「人を中心に据える」というテーマを紹介。デザイナーが常にユーザーと対話し、デザインリサーチチームが常時調査を行うことで、ユーザーをよりよく理解するように心がけている。二週間に一度「Real World Wendsday」として、限られたユーザーに初期デザインコンセプトをテストしてもらっている。さらにカスタマーチャットとして、何が良い機能で、改善しなければいけないところはどこか、さらに新機能のリクエストといったように、広くヒアリング。Kurt Varner氏の来日も、日本のユーザーを理解するのが主目的だったそうだ。

個人的に、Kurt Varner氏のプレゼンは非常に興味深かった。ハードウェアのデザインコンセプトを聞くことはそれなりにあるのだが、ソフトウェアのデザイン背景や開発思想を聞く機会はあまりない。今回、「この機能はこういう方針で作られているのか」と理解できたのは大きな収穫だった。また、一丸となって製品を開発するチーム体制という点は、ソフトウェアベンダーに限らず、多くのビジネスシーンで参考になる内容だろう。