効率化が生んだ不景気 海運ビジネス苦境の原因とは

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様々な分野で技術革新が進んでいる現在も、できあがった製品が陸海空の各ルートを通って目的地に運ばれることは変わらない。その意味で、依然ロジスティクスは貿易の要である。

中でもメインになるのは海運だ。輸送量で言えば日本における貿易の99%は船舶によって行われ、貿易額でも8割を占めるが、その海運が今大きな変化の波にさらされているのをご存じだろうか。

■船舶巨大化が引き起こした不況 海運業界の苦悩

『最適物流の科学――舞台は3億6106万平方km。海を駆け巡る「眠らない仕事」』(菅哲賢著、ダイヤモンド社刊)で解説されているのは、不況による業界再編が進む海運業界の現状と、その只中で存在感を増す「フォワーダー」と呼ばれる事業者の取り組みだ。

海運不況は、輸送船舶の大型化と切り離して語ることはできない。いまや貨物スペースが東京ドーム6個分にまで巨大化したコンテナ船だが、皮肉にも輸送効率を上げようとしたその取り組みによってスペースが供給過剰となり、運賃が下落した結果、海運企業の経営を圧迫してしまっているのだ。

こうした状況下で進んでいるのが業界の再編であり、具体的には主要海運企業の統合とアライアンスである。規模を大きくすることで競争力を維持すると同時に、業務を効率化する目論見だが、それ以上の手が打てていない現状もある。

こうした状況は、船という持ち物がビジネス上の「枷」になってしまっているとも言える。統合もアライアンスも、船という巨大なハードを保有、維持するために、事業が左右されてしまっていることの裏返しに他ならないからだ。自身では船を持たない事業者「フォワーダー」が、そこに台頭してきたということは偶然ではないだろう。

■ストライキで貨物を港に下ろせない!貿易の現場はトラブルがたくさん

前述の通り、「フォワーダー」は船を持たない海運会社であり、荷主から預かった荷物を、他の事業者の運送手段を利用して運送する事業者である。

形式的には、荷物の輸送を請け負い、実際の輸送は船を持つ海運会社(以降、船会社)にアウトソーシングしていると言えるが、陸揚げしてからの運送手段のアレンジや運送の過程で生じる様々な手続きを一括で請け負うところなど、どこか海外旅行における旅行代理店に似たところがある。

グローバル化が進んだ現代の国際貿易は、二国間で品物と代金のやり取りをするだけではなく、より多くの国が関わった複雑なものになっている。

たとえば、「日本のA社に、アメリカのB社からある商品の発注があった。A社はその商品を中国にあるC社の工場で委託生産しているため、中国のC社に連絡し、中国から直接アメリカのB社へ商品を発送するよう指示した」といった仲介貿易の例がわかりやすいだろう。

このケースで言えば、製品の輸送だけを見れば中国からアメリカに輸送するだけなので二国間貿易と変わりないように思えるが、代金の支払いはまずアメリカのB社から日本のA社に支払われ、中国のC社にはA社から代金が支払われるため、書類作成や決済の手間が増える。こうした手続きを代行するフォワーダーは、いまや国際貿易に欠かせない存在になりつつあるのだ。

また、貿易の現場では時に予想しなかったトラブルが起こりうる。2014年末から2015 年にかけて、アメリカで起きた港湾ストライキなどがその一例だろう。

このストライキにより、アメリカ西岸では港の機能が完全にストップしてしまった。

一般的な船会社の場合、「荷物を港から港まで運ぶこと」が仕事となるため、もしこのケースで荷主が船会社に直接輸送を依頼していたら、港から先の輸送に大幅な遅れが出ていたはずだ。しかし、フォワーダーは「荷物が送り先に届くまでのアレンジメント」が任務のため、こうした事態では「アメリカを避けてメキシコの港を経由し、陸路で北米に輸送する」といった代替手段を取ることができる。こうした縦横無尽の自由な対応とフットワークの軽さもフォワーダーの大きな強みなのだ。



このように、フォワーダーはただのブローカーのように思えるが、実際にはそうではない。船会社にはアレンジできない様々なソフト・サービスを提供している。また、付加価値をつけることにより海上運賃の市場価格を押し上げて、業界全体の収益を支えている。荷主、フォワーダー、船会社が、どのように協力関係を築き、貿易の現場を担っているのか、本書で明かされる国際貿易の「今」は、ビジネスに携わるものなら誰でも興味深く読めるのではないか。

(新刊JP編集部)

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