筋トレの効果を引き出す「睡眠」とは【写真:photolibrary】

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マッチョ≠体力がある…脳の疲れを取るのに最も有効なのは「良質な睡眠」

 年末は休み前に片づけておくべき仕事と、忘年会などイベントも重なり、健康的な生活を送れなくなりがち。多忙な師走を乗り切るにはどうしたらいいのか。フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一氏が、スポーツトレーニングの舞台裏を語る定期連載。今回は「良質な睡眠を取るコツ」について、卓球の福原愛やバドミントンの藤井瑞希など日本を代表するアスリートの個人指導経験を持つ同氏に訊いた。

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「忙しい年末を乗り切るための、いい筋トレはありませんか?」

 連日の忘年会、連休前の山積みの仕事を目前に、クライアントさんから届いたこの質問。どうやら「マッチョになると体力がつく」と思われているようです。

 もちろん、現場でハードに体を使う運送業や建築業の方であれば筋トレも有効。しかし、マッチョになっても、デスクワークまではサクサク進みません。なぜなら前者は肉体的な疲れ、後者は脳の疲れであり、全く別の話だからです。

 脳の疲れを取るのに最も有効なのは、良質な睡眠です。人の体は睡眠時に深い休息モードに入ると、細胞を修復する成長ホルモンが分泌されます。結果、脳や筋肉などの細胞が一度リセットされ、疲労が取れたり、本来の免疫機能を取り戻したりします。

良質な睡眠を取る主なコツは、「アルコール」「脂質」「就寝前の刺激」の制限

 良質な睡眠を取る主なコツは、次の3つです。

【1:アルコールの量を控える】
実は、飲酒は睡眠の質を下げる原因の一つ。一時的に緊張が和らぎ寝つきはよくなりますが、深い睡眠が出来ず浅い睡眠が続いてしまう傾向があります。また、強い利尿作用によって数時間後には目が覚めてしまう場合もあるでしょう。連日連夜の飲酒は眠りの質を下げる要因に。体力も余計に奪われるので、上手く酒量を調整しましょう。

【2:脂質の多い食事を控える】
脂質が多いと消化吸収に時間がかかります。寝ているつもりでも内臓は働き続け、体はなかなか熟睡モードにスイッチできません。飲み会の席では油を使った料理を控える、寝る直前までものを食べないという習慣を徹底。体をしっかり休め明日に疲れを持ち越したくないなら、“締めのラーメン”から卒業です。

【3:就寝前に脳や体を刺激しない】
寝る直前まで仕事のことを考えたり、布団の中でスマートフォンを操作したりすれば、神経が興奮して寝つけなくなります。できれば就寝の1時間前からは仕事を忘れ、ブルーライトを発する電化製品の電源も落とします。

 また「眠れないから体を疲れさせよう!」と筋トレをしたり、ランニングに出たりするのも、交感神経が優位になるので逆効果です。

筋肉が成長するためには、成長ホルモンの分泌を促す良質な睡眠が必要

「いやいや、細マッチョになったら仕事の効率が上がって疲れにくくなったよ」

 もしそうおっしゃる方がいたら、それは運動習慣によって、血圧が下がりやすくなったり、中性脂肪が下がったり、上手く気分転換ができるようになったからかもしれません。それこそ、運動によって体がほどよく疲れ、良質な睡眠が取れるようになったとも考えられます。

 そういう私自身も、自分のトレーニングをする時間が取れず、夜遅くに筋トレを行う日もあります。ところが明らかに目が冴えてしまい、眠れない。筋肉が成長するためには成長ホルモンの分泌を促す良質な睡眠が必要です。せっかくトレーニングをしても、最大の効果は得られないのではもったいない。最近はなんとかスケジュールを調整し、早めの時間にトレーニングを行うよう心がけています。

 筋トレをしても体はすぐには変わりませんが、1日でもぐっすり眠れた翌朝は、体の調子が劇的に良くなります。逆に良質の睡眠を取れない人は、どんなストレッチや半身浴、マッサージをしても、体は完全には回復できません。

 睡眠は最高の疲労回復法。睡眠時間をしっかり確保して、忙しい師走を乗り切ってください。(長島恭子 / Kyoko Nagashima)

長島恭子
編集・ライター。サッカー専門誌、フリーランスを経て編集ユニット、Lush!を設立。インタビュー、健康・ダイエット・トレーニング・ヨガを軸に雑誌、WEBでの執筆や、ムック、単行本を企画・制作。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『肩こりには脇もみが効く』(藤本靖著、マガシンハウス)など。

中野ジェームズ修一
1971年、長野県生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナー。「理論的かつ結果を出すトレーナー」として、卓球の福原愛選手やバドミントンの藤井瑞希選手など、多くのアスリートから絶大な支持を得る。クルム伊達公子選手の現役復帰にも貢献した。2014年からは、青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当。主な著書に『下半身に筋肉をつけると「太らない」「疲れない」』(大和書房)、『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)などベストセラー多数。