韓国と北朝鮮の“南北対決”で3年ぶりに再会 Jリーグを共通項とする二人の友情

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元新潟のキム・ジンスとJ2讃岐の李栄直が3年ぶりにピッチで対決

 E-1選手権で12日に行われた韓国代表と北朝鮮代表の「南北対決」は、1-0で韓国が勝利した。

 分断国家の両国が試合を行う時、政治的な話にも発展しがちだが、今大会はそのような空気は何もなく、両選手ともにフェアプレーを見せていた。

 試合後に健闘をたたえ合う両チームに拍手を送る北朝鮮応援団の姿も印象的だったが、ピッチの上で久しぶりに顔を合わせた二人がいた。現役Jリーガーで北朝鮮代表のMF李栄直(リ・ヨンジ/カマタマーレ讃岐)と、元Jリーガーで韓国代表のDFキム・ジンス(全北現代)だ。

 彼らは2014年に韓国で開催された仁川アジア大会に両国のU-23代表として出場し、決勝戦で対戦。試合は延長後半に韓国がゴールを決めて優勝している。

 キム・ジンスはアルビレックス新潟でプロデビューしたので、日本では馴染みのある人も多いだろう。2014年から16年までドイツ・ブンデスリーガのホッフェンハイムでプレー。今季からKリーグの全北現代に移籍してプレーしている。

 仁川アジア大会以来、着実に成長を続けているキム・ジンスに対し、李はまだJ2リーグ。試合後、李は二人でこんな会話をしたと明かしてくれた。

「キム・ジンスとは久しぶりに会いました。戦うのは3年ぶりですね。『相変わらずボランチでやっているんだね。まだJ2でやっているの?』って言われて。『それは仕方ない。実力だから』と返しました。『Kリーグに来ないのか』とか、『韓国来たらまた人気出るよ』なんて言われましたよ(笑)」

 キム・ジンスの成長に目を細めつつも、その言葉からは少し悔しさがにじんでいた。

「体が大きくなった」「着実に成長」と称賛

 キム・ジンスのプレーについては「こう言っては失礼かもしれませんが、仁川アジア大会の時よりもキレが落ちたのかなって思いました。ただ、体はすごく大きくなっていましたし、ドイツでたくさん経験を積んできたんだなと感じました」と称賛を送っていた。

 一方、キム・ジンスも李との出会いを楽しみにしていた。

「李栄直選手はやはり仁川アジア大会の時の印象がすごく強いですね。当時の試合はとてもタフでしたし、強かったのを記憶しています。彼とは久しぶりに会ったので、『元気にしていた?』と話しました。試合が終わってから、他の北朝鮮の選手たちにも『いい試合だった』と声をかけました。今日の試合は我々が勝ちましたが、そんな簡単な相手ではなかったし、北朝鮮の選手はたくさん動きながらカウンター攻撃を展開するので、いろんな動きを予測して守備をしなければならなかったです。着実に成長しているのを見られて良かったですよ」

 彼らが次にピッチで会うのはいつになるだろうか。ワールドカップ(W杯)出場の常連国である韓国代表のキム・ジンスからすれば、“待つ”立場にあるのかもしれない。北朝鮮代表が経験を積んで実力を上げ、アジアカップやW杯アジア最終予選などの表舞台に立てれば、二人はまたどこかのスタジアムで顔を合わせる日が来るはずだ。

【了】

金 明碰●文 text by Myung-wook Kim

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images