鴻海の経営のスピード感は日本企業の参考になる(戴社長)

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 7日、東京・兜町の東京証券取引所に「カーン」と鐘の音が響き渡った。シャープの東証1部復帰を祝う式典だ。戴正呉社長は「就任以来の目標を果たした」と喜んだ。

 シャープは2016年3月末に債務超過となり、同年8月、2部に降格。同月には台湾・鴻海精密工業の傘下となり、鴻海が送り込んだ戴社長の下で経営再建を進めた。鴻海の力を得て業績を急速に回復し、1年数カ月で1部に復帰した。特にディスプレー事業の復調は顕著で、鴻海がシャープ製テレビを安値で拡販する政策が奏功したようだ。

 鴻海はメーカーとして飛躍するため、日本企業の高度な技術を求めており、シャープ買収の狙いもそこにある。今後、シャープを基点に日本で業界再編を仕掛け、日本企業の囲い込みを狙う。

 12月下旬には、シャープはスマートフォンメーカーに、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)パネルの試作品を提供する。顧客から評価を得た上で、この技術をテコに、有機ELパネルを手がけるジャパンディスプレイ(JDI)との技術提携に持ち込む考えだ。

 鴻海はJDIなど日本企業への出資にも意欲を燃やす。以前は経営難の日本企業に出資する手法に限定されたが、シャープを介することで技術提携する手段も加わった。かつて鴻海による買収には日本の産業界に警戒感もあったが「経営のスピード感は日本企業の参考になる」(清田瞭日本取引所グループ最高経営責任者)と和らいでいる。

 ただ、シャープの再建は道半ば。復調してきたテレビ事業の営業利益は「赤字ではないが、利益は少ない」(シャープ財務担当者)。業績回復は、鴻海が得意とする薄利多売手法に支えられている面が大きい。

 シャープは高解像度の8Kディスプレーと人工知能(AI)を組み合わせ、不審者やインフラ劣化の検出システムなどの事業創出も狙う。18年は、こうした新事業を通じた独自路線も求められる。
(文=大阪・平岡乾)