いくつになっても「人生のピークを更新する」にはどうすればいいか(撮影:今井康一)

史上最多の計7回の冬季オリンピックに出場し、スキージャンプ選手として20年以上のキャリアをもつ葛西紀明選手。41歳で自己最高の「個人銀メダル」を獲得し、45歳の今なお一線級の成績をマークする葛西選手は「レジェンド」と称され、国内にとどまらず海外でも尊敬を集めている。
その葛西選手が35年間「企業秘密」にしてきた「疲れない体」と「折れない心」のつくり方を余すことなく1冊にまとめた新刊『40歳を過ぎて最高の成果を出せる「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』には何が書かれているのか。新刊の内容を再編集しながら、その極意を紹介していく。

スキージャンプの選手は「姿勢がいい」人が多い


「スキージャンプの選手は、ほかのスポーツ選手と比べて姿勢がいい人が多い」と言われることがあります。

みなさんもご存じのように、スキージャンプはストックを使わずスキー板のみで行う競技です。よって、助走体勢から着地するまでの動作を、自分の体だけでバランスをとらなければなりません。

この一連の動作をきれいな姿勢で行うために必要なのが「体幹」です。そのため、体幹を鍛えることはスキージャンプの選手にはかかせないのですが、「スキージャンプの選手に姿勢がいい人が多い」と言われる理由は、この「体幹」が大きく関係しているのではないかと思います。

私は、競技のときはもちろんですが、競技以外でも「姿勢を良くする」ことを心がけています。ソチ・オリンピック以降、講演会に呼ばれることが多くなったのですが、講演会のときも姿勢には気をつけています。

そのせいか、年配の方々に「葛西さんは背筋がピンとしていて、姿勢がいいね」とよく褒めていただくのですが、「姿勢を良くする」のは、体にいいだけでなく、気持ちも良くしてくれるのではないかと感じています。

では、「姿勢を良くする」には、どうすればいいのか。今回は、私が実践しているメソッドを紹介します。

姿勢を良くするために、私がいちばん意識しているのは「体幹を鍛える」ことです。ただ、その前に、みなさんにぜひ気をつけていただきたいのは、「いまの自分の姿勢をきちんと知る」ことと「姿勢が悪くなる習慣をなくす」ことです。

「ラクな姿勢=疲れない姿勢」ではない

【1】「いまラクな姿勢」はじつは歪んでいないか、考える

自分にとって「いまラクだ」と思っている姿勢が、じつは「悪い姿勢」になっていることも少なくありません。

「ラクな姿勢」を聞いてみると、「足を組む」「左右どちらかに体重をかける」「胸を突き出して腰をそらせる」など、いろいろな姿勢があります。

しかし、そんな人たちをよくよく見てみると、足を組み直してみたり、体重のかけ方を左右変えてみたり、背中を丸めてみたりと、頻繁に姿勢を変えているケースもとても多いものです。

なぜコロコロ姿勢を変えるのかというと、「そのまま同じ姿勢が続くと疲れる、体に負担がかかる」ために無意識に体を動かしているのだと思います。

私は、取材やインタビュー、講演会で1時間以上話すこともありますが、立っている間も、座っている間も、ほとんど姿勢を変えません。なぜなら「疲れない姿勢」ができているからです。

頻繁にコロコロ姿勢を変える人は、じつは「正しい姿勢」できていない可能性も高いので、注意してください。

【2】パソコンやスマホ使用時の「ねこ背」にも注意する

もう1つ、「姿勢を悪くする習慣」として注意してほしいのは、パソコンやスマホを使用するときの「前のめりの姿勢」です。ノートパソコン、モニター、スマホと使用するものによって異なりますが、往々にして首が前に突き出て、曲がりがちです。

前のめりの状態になれば肩や背中が引っ張られるので、背中も丸くなり「ねこ背」になりかねません。さらに、この姿勢のままでずっと作業をするのですから、首、肩、背中、腰と上半身は凝り固まってしまいます。これでは、体に歪みが生じて「悪い姿勢」になってしまいますよね。

では、どうすれば、姿勢を良くすることができるのか。私が実際にやっていて、みなさんにおすすめしているのが、次に紹介する「体幹トレーニング」です。

体幹が弱いと、「体の軸」が安定しないので悪い姿勢になりがちです。逆に、体幹を鍛えると「体の軸」が安定してくるので姿勢が良くなり、体の歪みもなくなります。

寝る前の3分間でできる「体幹トレーニング」

私自身が、自宅でやっている「体幹トレーニング」は、下記の内容です。このトレーニングの利点は、ベッドや布団など、横になれるスペースがあれば十分にでき、しかも寝る前の3分間だけでOKということです。

【1】仰向けに寝たら、両膝を立てる
【2】おへその1センチ下の部分を、1センチくらいへこます程度に力を入れる
【3】2の体勢のまま、上半身をゆっくり起こす
【4】おへそが見えたら3秒間キープする
【5】ゆっくり息を吐きながら、1の体勢に戻る

1〜5を5セット繰り返します。


葛西選手が実際にやっている体幹トレーニング。寝る前3分でできる(イラスト:二階堂ちはる)

「体幹」とは表面の大きな筋肉ではなく、体の奥にある小さな筋肉ですが、私の場合はトレーニングをしながら、「おへそから1センチほど下のお腹の部分」を意識するようにしています。

この体幹トレーニングは、毎日必ずやらなくてはいけない、というものでもありません。無理にするとストレスになります。「時々サボってもいい」くらいの気持ちで続けると、結果として長続きすると思います。「姿勢」が良くなれば、不思議と、気持ちもピシッとしてくるものです。

40代でも50代でも、姿勢を良くしたり、「疲れない体」をつくることは十分に可能です。ぜひ、「年齢にふさわしいやり方」を知って、「疲れない体」を手に入れ、40歳を過ぎても「人生のピークを更新できる」ようになってください。