動画バブルはまだ弾けてはいないが、ショートフォームコンテンツをストリーミングプラットフォームに売ろうという動画制作者がへこんでいるのはたしかだ。

この数カ月で、よく知られた複数の動画ストリーミングプラットフォームが、閉鎖したり、オリジナルコンテンツへの支出を縮小したりしている。NBCユニバーサル(NBCUniversal)はこの秋、オリジナルのロングフォームやショートフォームの動画シリーズから「サタデー・ナイト・ライブ」のフルエピソードまでを提供していた月額3.99ドル(約450円)のコメディのストリーミングサービス、シーソー(Seeso)を閉鎖した。また、フルスクリーン(Fullscreen)が11月に、月額4.99ドル(約550円)のサブスクリプションによるストリーミングサービスの閉鎖を発表したほか、コムキャスト(Comcast)のウォッチャブル(Watchable)はもはや生命維持装置をつけられた状態だし、スポティファイ(Spotify)は支出を削減している。

一方、ショートフォーム・ミッドフォームの動画番組バイヤーとして、この数年間注目を集めていたベライゾン(Verizon)の「ゴー90(Go90)」も、複数のコンテンツパートナーによると、オリジナルコンテンツ戦略を見直して支出をカットしている。はっきりしていないのは、ベライゾンによるオース(Oath)の大統合によりゴー90のチームがスピードダウンしているためだ(このあいだ、ベライゾンのメディア幹部トップ、マーニ・ウォールデン氏が退社している)。「あちら(ゴー90)の人たちによると、順調に進んでいるが統合に時間がかかるという話だった」と、ゴー90のパートナーは語る。

こうした激動によって、動画制作者、デジタルスタジオ、およびパブリッシャーは環境が不安定化している。いずれもかつては、オリジナルコンテンツに資金を出そうというプラットフォームから収益を上げることができていたが、市場が縮小し、2018年以降、デジタル動画番組をどこが買ってくれるのかが必ずしも明確ではないのだ。これは、デジタル動画番組の争奪戦に頼って、GoogleとFacebookの独占による影響を埋め合わせていたところには大問題だ。実のところ、コンテンツにいまも小切手を切っているプレイヤーはおなじみの顔だ。

「いま(ショートフォーム動画を)、大量に買っているのはFacebookだけだ」と、Facebookとゴー90とコンテンツ契約を結んでいるデジタルスタジオの幹部は語った。

「ショートフォームコンテンツのバイヤーについていえば、1年前に目にしていたほぼ全員が市場からいなくなっている」と語ったのは、マッシャブル・スタジオ(Mashable Studios)のプレジデントのエリック・コーシュ氏。「レッドブル、コムキャスト、ベライゾンなどは、本業に戻るか、ショートフォーム動画における役割を再考するかしている。いまのところどちらにしても同じことだ」と同氏は語った。

プラットフォームはロングフォーム番組を求めている



あるデジタルスタジオ幹部によると、現在市場にあるオリジナルのデジタル動画番組は大多数が――少なくとも米国では――Facebook、YouTube Red、およびゴー90でカバーされている。ほかにも、あちらこちらで番組を買うことがある規模の小さいニッチのプレイヤーはいるが、慣例的に「Webシリーズ」と呼ばれているものを安定して売ろうとすれば、Facebook、YouTube Red、ゴー90になるのだという。

ただ、この3つのプラットフォームも方向性はロングフォームコンテンツに向いている。Facebookは最近、Watch(ウォッチ)のために資金提供を強めているが、そのなかで、番組を長くするようにコンテンツパートナーに働きかけている。YouTubeは、米DIGIDAYが以前に複数の情報筋から聞いたところによると、テレビ品質のオリジナルプロジェクトには1エピソードあたり50万〜100万ドル(約5500万〜1.1億円)――場合によってはそれ以上――を支出している。またベライゾンは8月に、CBS幹部を長く務めたクリス・カスタロ氏をゴー90の開発責任者に採用しており、ゴー90のパートナーによると、これはゴー90がより長尺の番組を獲得する方向に移行する可能性を示しているという。

テレビのサイズに近いオリジナル番組に進出するというゴー90の決定は、多くのデジタルメディア企業にとって大打撃だろう。ベライゾンは、デジタルにおけるトップの人材が、よくできた番組を提供するストリーミングプラットフォームにはオーディエンスがいると信じ、大金を投じてきた。しかし、オーディエンスたちはこれに必ずしも同意していない。

「FacebookやYouTube Redからコメディ・セントラル(Comedy Central)、IFC、NBC、ターナー(Turner)に至るまで、各社がより長いストーリーへと、質と投資の方針を移行するのが見られる」と、デジタルスタジオのアボブ・アベレージ(Above Average)のCEO、マルク・ハストベェット氏は語る。「これらのバイヤーは、強力な個性が息づき発展する余地のあるヒット番組は率直に面白く、そのオーディエンスには価値があると認識している」。

(ストリーミング)テレビにはまだお金がある



オリジナルのショートフォーム動画の市場は縮小しているかもしれないが、オリジナル動画番組が全般的に小さくなっているわけではない。 Netflix、Amazon、Hulu、Apple、Facebook、YouTubeはいずれもコンテンツを大量に購入していると考えられている。こうした会社が欲しいコンテンツが、Web動画プラットフォームでよく見られているものよりも、よりプレミアムなテレビ番組になってきているというだけなのだ。

Netflixは2018年、コンテンツに80億ドル(約9000億円)を投じる計画だ。一方、Amazonは、「ロード・オブ・ザ・リング」の権利購入だけで2億5000万ドル(約280億円)近くを支出し、この契約を皮切りに有名ドラマシリーズを制作する計画だと報じられており、そうなると、複数のシーズンに渡ってさらに何十億ドル(数千億円)という費用がかかることになるだろう。Huluは、エミー賞受賞の画期的なヒット作「侍女の物語」の成功を受け、ケーブルテレビ品質のプレミアム番組への支出を増やしている。この分野のバイヤーとしては新参のAppleは、10億ドル(約1100億円)の予算を用意し、テレビ幹部ふたりの指揮のもと、コンテンツにおける野望の達成を目指す。そして、すでに述べたように、FacebookとYouTubeはテレビレベルの予算によるテレビ品質のプロジェクトにますます目を向けている。

「これらは、実際のところデジタルではない。テレビだ」と語ったのは、テレビとデジタル動画の世界で長年のキャリアがあるプロデューサーだ。「最近ではNetflixと話をしても、他社より安く制作できるという話には興味を示さない。「ゲーム・オブ・スローンズ」と競争しており、必要なら1エピソードあたり1500万ドル(約17億円)を使ってもOKなのだ」とこのプロデューサーは語った。

これは、画期的な番組を作る動画プロデューサーには絶好の機会かもしれないが、ほとんどのデジタルメディア企業は、テレビ番組のパッケージを制作するのに求められる、必要なバックグラウンドやスキルを持ち合わせていないというのも事実だ。BuzzFeed、ブリーチャー・レポート(Bleacher Report)、リファイナリー29(Refinery29)などのトップパブリッシャーは、ロングフォームコンテンツに焦点を合わせたスタジオやエンターテインメント部門を作るなどしてこれに取りくんでいる。

「どこも(テレビへの)参入に取り組んでいる」と語ったのは、前出のデジタルスタジオ幹部。「デジタルバイヤーが減り、テレビバイヤーが増えるというサイクルになっており、どこもその方向へ向かうようにしている。しかし、(ストリーミングとテレビの)プレイヤーになるには、多くのデジタル専門企業にはない一定の経歴を持っている必要がある。プロジェクトの進め方に、まとめ方に、参加するスターの種類に、あるいは書いてきた脚本の数にそれが表れる。取るに足りないことに思えるが、そうした筋肉を身につけるには時間がかかるのだ」。

回復への望み



ショートフォーム動画のバイヤーが現在減少しているが、この状況が続くと誰もが確信しているわけではない。複数の情報筋が、これはひとつの段階に過ぎず、いずれ市場は再び好転すると語った。

たとえば、ベライゾンは動画への野心を維持している。ゴー90は現在の形式では続かないかもしれないが、ベライゾンはそれでも動画の購入をやっていくと見られているのだ。Facebookも、Watchの実験がよい結果を残すかもしれず、そうなれば2018年以降も、ショートフォームとロングフォーム、両方のオリジナル番組について支出を増やすことになるだろう。

「何がうまくいって何がそうでないのかを調整する時期に入っている。しかし、質の高いプレミアムなショートフォームオリジナル動画が消えようとしているわけではないというのは確かだ」と語ったのは、メディアに助言するクリエイティービー・メディア(Creatv Media)のファウンダー、ピーター・ツァーシー氏。同氏はそうしたコンテンツの制作にまだ関心のある企業として、クリプトTV(Crypt TV)やVRVなどのニッチなOTTのバイヤーを挙げる。「そしてOTTの動画の世界は競争が激化しているので、ショートフォームのプレミアムコンテンツのサプライヤーはますます重要な役割を果たすことになるだろう」。

とはいえ、多くの動画メーカーにとって不安な時代なのに変わりはない。市場に参入するバイヤーは増えるかもしれないが、シーソーやウォッチャブルと同様に、動画の取り組みがうまくいかなければ簡単に去ってしまうおそれがある。

「それは究極的には市場にとって非常に健全なことだ」と語るのは、アボブ・アベレージのハストベェット氏。「プラットフォームにオリジナル番組を提供するビジネスをしている人たちは、いまは必要以上に払ってくれるが来年にはいなくなっているかもしれない新興勢力の一団よりも、複数シーズンにわたるサポートによって成功をもたらしてくれる、少数のバイヤーたちに出会いたいところだろう」。

Sahil Patel (原文 / 訳:ガリレオ)