民進党の再生策を協議する増子輝彦幹事長(左)、大塚耕平代表(中央)ら(写真:共同通信)

年の瀬の永田町でまたまた民進党の「解党」論が浮上した。同党分裂で派生した立憲民主党・希望の党との民進系再結集のための「触媒役」を目指したものの、1%スレスレの政党支持率に不満分子の離党ドミノの動きが重なり、「解党して、新党として出直すしかない」との危機感が強まったからだ。

調整力を期待されて代表に就任した大塚耕平参議院議員も解党・新党論に傾き、13日以降、常任幹事会、両院議員総会、全国幹事会などを連続開催して協議を続ける方針だが、党内には「単なる看板のかけかえでは出直しにならない」などの批判が根強く、年内決着は「至難の業」(党長老)とみられている。

そもそも、9月末の衆院解散直前にいったん解党を決め、衆院選に国政政党として候補者を擁立しなかった時点で、民進党は「終わった政党」(自民幹部)だった。にもかかわらず、選挙後に「ゾンビ」(同)のように存続を決めたのは、同党に巨額の資金と事務局も含めた組織が残っていたからだ。いわば「廃業を決めたが、ビルも社員も貯金も残っているので営業を続けている」(民進幹部)のが実態といえる。にもかかわらず、分社化した立民・希望両党を再糾合して大野党復活を目指すのは「断末魔の悪あがき」(自民長老)としか見えず、「行き着く先は空中分解」(首相経験者)との声も出る。

「新党結成」「党名変更」「現状維持」の3択を提案

民進党議員の中でも「純粋中立派」を自任する大塚代表は、7日の記者会見で「党名も含めて新しく生まれ変わらなければまずい、という意見がある」と解党・新党論に言及した。小池百合子東京都知事が9月末衆院解散直前に希望の党結党を宣言した際、民進党は両院議員総会で解党・希望の党合流を満場一致で決めたが、選挙での希望の党の敗北で、選挙後の両院総会で存続が決まった経緯がある。ただ、国民の間には「過去の党」との印象が定着し、政党支持率も1%程度に低迷していることで、「座して死を待つわけにはいかない」(大塚代表)との危機感が解党・新党論につながったとみられる。

大塚代表ら党執行部は12日の「党の戦略・組織・運営に関する改革本部」という長い名称の会合で党再生への協議をスタートさせ、常任幹事会や両院議員懇談会での意見集約を目指している。一連の会合で大塚代表が提案したのは、(1)新党結成、(2)党名変更、(3)現状維持、の3つの選択肢だ。

現時点で約70億円とされる「党の貯金」は温存し、今後の党運営や2019年夏の参院選の選挙資金に充てる、との前提があるため、党資金の国庫返還にもつながる「解党」という文言は使っていない。

これに対し岡田克也、蓮舫両元代表らが党存続を強く主張する一方、若手からは「このままではジリ貧になるだけ」と新党結成論も出て、予想通り議論は紛糾している。「党内バラバラ」と揶揄された民主党時代からの宿痾も際立ち、決着時期を「できれば年内」として協議を続行する構えだ。

ただ、年明け以降の党運営に大きな影響を与える「政党交付金を決める所属議員数登録」の基準日は1月1日で、党内には年内の立憲民主党入りを視野に「政党交付金分割のための分党」を模索する動きもあり、執行部が調整に失敗すれば「年内再分裂」の危機も現実となりかねない。

10月の衆院選を、「小池新党」とも呼ばれた希望の党、小池氏に「排除」されたメンバーによる立憲民主党、どちらにもくみしない民進党籍を持つ無所属、という「3分裂」で戦った民進系の当選議員は、立民54人、希望51人、無所属14人の合計119人で選挙前の勢力を上回った。

公明、共産、維新がそろって議席を減らしたことも考えれば、「民進系議員への国民の期待はなお大きい」(民進幹部)ともみえる。だからこそ、選挙直後から再結集論が浮上したわけで、2019年春の統一地方選、同夏の参院選で自民・公明の巨大与党に対抗するためには「大きな塊をつくるしかない」(大塚氏)のは自明の理でもある。

「統一会派」で立民追い落としの狙いも

しかし、「3分裂に至る経緯を振り返れば、再結集はそれぞれの党の自殺行為」(立民幹部)ともなりかねない。「理念や政策を棚上げした『数の論理』による野党結集に有権者が不満を示した選挙結果」(同)との分析もあるからだ。希望の党を立ち上げた小池氏や前原誠司前民進党代表の「政権交代を目指すもう一つの保守党を」という考え方からすれば「共産党とも連携するリベラル勢力」の排除は当然で、多くの有識者も「政治理念や政策の一致を目指しての希望の党結党は間違いではなかった」と指摘する。ただ、結果的に野党乱立・多極化を招いて、自民党圧勝に貢献したことが批判と不満の対象となっているわけだ。

今後の政治日程からみて、次の国政選挙は2019年7月に予定される参院選だが、有権者が政権を選択する衆院選は3年後の2020年秋とみられている。それまでに現状の野党乱立が解消されなければ、「余程のことがない限り、自民党政権は安泰」(選挙アナリスト)というのが大方の見方だ。政権交代を目指すなら、野党は「統一候補」で戦うしか選択肢はなくなる。

そこで問題となるのが民進系3野党の主導権争いだ。もともと「自民打倒のための野党結集の軸は民進党」(小沢一郎自由党代表)だったが、現状ではどの党が「野党第1党」なのかが明確ではない。衆院は立民がわずかの差で第1党だが、参院は民進党が圧倒的第1党だ。しかも、国会運営上は「会派」が基準となるため、衆院で希望の党が民進党系議員が結成した無所属の会と統一会派を結成すれば、立民は第1党の座から追い落とされる。

民進党の一連の協議で大塚代表が「立民、希望両党への統一会派呼びかけ」を提案したのも、年明けの通常国会で希望の党との統一会派実現を狙ったともみえる。小池氏から党運営を委ねられた玉木雄一郎・希望の党代表も「(統一会派の提案は)真剣に考えなければならない」と前向きの姿勢を示した。「合流には党内の抵抗が強いが、統一会派なら実現可能」(希望幹部)という対応には、統一会派も含めた連携にも否定的な立民への対抗意識がにじむ。

一方、立民も水面下での勢力拡大を模索している。政党支持率では民進系3党の断然トップを維持するだけに、希望、民進両党に所属する「リベラル組」をターゲットに入党勧誘作戦を展開している。11日には民進党の有田芳生参院議員が大塚代表宛ての離党届けを提出した。ジャーナリスト出身で知名度も高い有田氏は「立憲民主党が最も自分の考え方に近い」として年内にも立民に入党届を出す考えだ。これに先立ち参議院の民進党会派所属の川田龍平氏も立民に入党届を提出した。

「複雑骨折は間違って治すと余計悪くなる」

さらに、参院民進党のリーダー格の小川敏夫参院議員会長も立憲民主党への合流を視野に民進党の「分党」を画策しているとされ、「数合わせには参加しない」と繰り返す枝野・立民代表もこうした動きに絡んでいるとの見方が広がる。ただ、特別国会の与野党攻防で、衆院側の野党代表として自民党と渡り合った辻元清美・立民国対委員長は、13日の講演で民進党分裂以後の野党の現状を「複雑骨折で、間違って治すと余計悪くなってしまう」と勢力争いのための離合集散の動きをけん制した。

立民を「排除」した形での希望・民進連携の動きについてほかの野党は「落ち目の三度笠同士の傷のなめ合い」(社民党幹部)と揶揄する。とくに民進党が野党再結集の軸となることについては「解体したはずの党が再結集を呼び掛けても国民の支持が得られるわけがない」(同)と冷笑する。ただ、野党第1党に必要な「資金・事務局・地方組織」の3点セットを保持するのは民進党だ。玉木・希望代表は「代表就任以来、資金集めや事務局づくりなどが最大の仕事で、政治理念や政策づくりにはまったく手が回らない」ことを認める。枝野・立民代表も同様で、大好きなカラオケも「雑用が多すぎて行く暇がない」と嘆息しきりだ。

政権交代可能な2大政党制を実現するための衆院小選挙区比例代表制導入を受けて、1996年に旧民主党が結成されて21年余。野党第1党としてのさまざまな変遷を経て2009年9月に政権交代による民主党政権を実現させたが、その後は党内抗争の果ての政権転落と党分裂で現在の混迷を招いたのが民進党(民主党)だ。

その間の多くの年数を党リーダーとして過ごした岡田元代表は5日の会見で、この一年を「ひどい以外の何物でもない。せっかく二十数年間かけて作ってきた野党第一党が空中分解してしまった」と天を仰いで自責の念を吐露した。

仏教派・大塚氏だけに「クリスマス決着」は無理筋

この岡田氏や同氏の後任代表を務めた蓮舫氏は、大塚氏が提案した「新党」や「党名変更」に強く反対している。「苦しい時にじっと我慢しないで右往左往すれば、ますます政権から遠ざかるだけ」と判断しているからだ。

たしかに、現状の再建論は「単なる看板の掛け替え」に終わる可能性は否定できない。次期国政選に向けて再結集しても、共産党との共闘や安保法制の可否といった路線対立が再燃して「ビデオテープでもう一度」(首相経験者)となるのは避けられそうもない。

大塚代表はクリスマスの25日の決着を目指しているとされるが、党内には「政界のサンタからプレゼントをもらおうというのはそもそも無理筋」(民進若手)との声が広がる。仏教に造詣が深い大塚氏は、自らのホームぺージ(耕庵)に記した「学あり、論優れども、心貧すれば、任に能わず」とする耕学、耕論、耕心の「三耕探求」がモットーだが、今回の新党結党や党名変更による民進系再結集はキリスト教と仏教の合体のような「不可能な探求」にもなりかねない。