日本ではかねてから過労死や過労自殺が問題視されてきましたが、無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』によると、欧米を中心に「つながらない権利」が浸透し始めているそうです。この動きが強い力を持つようになれば、日本でも多くの企業が「働き方」についての考えを改めることになるかもしれません。未来を大きく変える可能性を持つ「つながらない権利」とは、一体どういうものなのでしょうか。

つながらない権利

最近は、インターネットや通信技術の発達で、いろんな働き方ができるようになってきた。在宅勤務、テレワーク、多様な働き方とか、働き方改革とか、国もいろんなことを言っている。

まもなく、今年も終わる。そろそろカレンダーとともに年末のごあいさつに伺うタイミング。今年、お届けしそびれた情報を見直しするため、毎月購読している月刊誌の記事を再読していて広がった話題だ。

大塚 「ビジネスガイドに半年ほど前、『つながらない権利』って言う記事があったんですけど、読みましたぁ?」

深田GL 「あぁ、ざっとはね」

E子 「『つながる権利』じゃなくて、『つながらない権利』ってなんだろって思って読んだわ」

新米 「ですよね〜。僕もそう思って見てみました」

E子 「最近は、『勤務間インターバル制度』を導入しようって動きは出てきているわね」

大塚 「過重労働対策から、国も言ってますもんね。労災保険が原資の助成金もあります」

E子 「うん、うん。そういう意味では、日本でも勤務だけでなく、休日・夜間のメール自粛を促す企業が出てきてるってことよね」

大塚 「情報によると、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社では、2016年4月から、勤務日の午後10時以降と休日に社内メールの自粛が呼びかけられているそうです。緊急案件は対象外だそうですが」

深田GL 「24時間営業の会社は別として、うちの事務所みたいな営業時間帯の事業所は自然にそうなってるけどね」

E子 「そうね。終電までには帰ってねなんて残業どころか22時以降の残業もここ10年はないし、休日出勤もないもんね」

所長 「みんなのおかげだな。中央市場のお客様があったときは、担当者が夜中の2時や5時に電話してくれていたこともあったみたいだけどね」

新米 「夜中の2時?」

所長 「そう。その事業所では、2時が始業時間だったんだ。そのときの担当者は、早急に連絡とりたいときは、自宅からだけどその時間を待って連絡したことがあるって言ってたな」

新米 「ありゃぁ〜」

大塚 「三菱ふそうトラック・バス株式会社は、親会社であるドイツ・ダイムラー社の施策を受け、長期休暇中に電子メールを受信拒否・自動削除できるシステムを2014年12月に導入し、長期休暇中にメールを送信した相手には『いただいたメールは削除されます』というメッセージが返信されるそうですよ」

E子 「え? それって、外部からのメールも?」

大塚 「あ、システムの対象は社内からのメールに限られてるって」

E子 「そうやんね。ビックリした〜。大きい会社やから、誰が休みなのかも周知できてないことあるってことかな」

深田GL 「株式会社ロックオンでは、『山ごもり連休制度』っていう会社との連絡を9日間絶つことを認める制度があるそうだよ」

新米 「どんな制度ですか?」

深田GL 「山ごもり連休中は、社内からの電話連絡やメールなどコンタクトは一切禁止。社員のリフレッシュ休暇中は連絡を絶っても問題がないよう、業務の共有を普段から徹底することを目的にしているんだって」

E子 「業務の情報共有ができていないと、休暇は取れないもんね」

大塚 「この『山ごもり連休制度』って、リクナビNEXT主催の『第2回 グッド・アクション』において最高賞の『ベスト・アクション』を受賞したそうですよ」

新米 「ふーん、最近は、欧米を中心に、『つながらない権利』が広がっているって書いてましたけど、日本でもいろいろあるんですね」

所長 「フランスでは2017年1月1日から『つながらない権利法』が施行されたそうだね」

全員 「そうなんですってねぇ〜」

所長 「従業員50人以上の会社に対して、『完全ログオフ権(従業員の勤務時間外はメールなどのアクセスを遮断する権利)』を定義する定款の策定を義務付けているとか」

深田GL 「へぇ〜、定款に書くってことですか?」

所長 「そういうことだろうね…」

深田GL 「今のところ罰則は設けられていないけど、『つながらない権利』を侵害された従業員は、訴訟を起こすことが可能になったということみたいですね」

新米 「訴訟ができる…ね」

大塚 「フランスでは『つながらない権利法』の他にも、週の法定労働時間を35時間と設定していたり、午後9時〜翌朝6時を夜間就労として厳しく制限していたり、労働者の権利を守る規制がたくさん存在しているそうです」

E子 「ドイツのフォルクスワーゲンでは、2013年から午後6時15分から翌朝7時まで、従業員の仕事用の携帯電話にメールが転送されないシステムを導入したそうですよ」

大塚 「フォルクスワーゲンとは対象的にBMWは、2014年から、従業員に『上司との相談のうえ、職場以外の場所や勤務時間外で業務をこなすこと』を認めることを始めたそうです」

新米 「真逆ですねぇ〜」

所長 「韓国では『カカオトーク』などのSNS問題を解決しようと、国会で2017年8月に『勤労基準法改正案』の審議が始まったそうだよ」

E子 「日本でもそんな風になっていくのかなぁ」

深田GL 「日本の場合、今は、法制化されていないから、法制度の趣旨が違う部分はあるけど、同じように権利主張はできる時代は来るような気がするなぁ」

大塚 「そうかもしれませんね」

所長 「今は、労働基準法では1日8時間、週40時間を超えた労働をさせることは、『時間外・休日労働に関する労使協定』を結ばない限り罰則付きで禁止されているだろ。この趣旨や限度時間の範囲内では、例外的に時間外労働を認めるということが法制度の趣旨だよね。でも、業務時間外に対応する必要がない業務には対応しなくて良い権利は、主張できるはず」

大塚 「在宅勤務やお持ち帰り業務は、気をつけないといけないわね」

E子 「うちのお客様でも今年トラブルが発生したわよね。業務は、勝手に持ち帰らないよう把握していただかないとね」

深田GL 「判例上、職場にいなくても、電話やメールに常に対応しなくてはならない状態であれば『手待ち時間』ということになって、こうした時間は指揮命令下にいるものと見なされ、労働時間ともなるし、未払賃金となりかねないからな」

所長 「まずは、そこを周知してもらって、次なる時代に備えていただくようにしなくちゃなぁ」

新米 「『つながらない権利』か…。これからの課題ですね」

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