西武・菊池雄星【写真:編集部】

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2010年以降入団選手でチームを去ったのはわずか5人

 2008年から2016年までにドラフトで入団した59人中47人が1軍でプレーしている。現役も含めて1軍未出場は12人と少ない印象だ。今オフに戦力外となった佐藤勇(引退)、田代将太郎(ヤクルトを移籍)を含め、2010年以降に入団した選手でチームを去ったのはわずか5人だけ。かなり高確率で、ドラフト指名選手を1軍の戦力へと送り出している。

 日本ハム同様、獲得した選手をムダにせず、堅実にある程度の時間をかけて育てている印象だ。西武も育成選手での指名は少なく、獲得した支配下枠の選手をじっくりと育てているといえるのではないだろうか。それでは、西武の過去10年のドラフト実績を見ていこう。

※は現時点でのNPBでの現役選手。

○2008年
1位・中崎雄太 投 日南学園高 15試0勝0敗0S0H 防8.04
2位・野上亮磨 投 日産自動車 207試53勝56敗2S7H 防4.03 ※巨人へ移籍
3位・浅村栄斗 内 大阪桐蔭高 970試1003安115本518点64盗 .284※
4位・坂田遼  外 函館大学 255試179安21本99点1盗 .244※
5位・岳野竜也 捕 福岡大学 4試0安0本0点 0盗 打率.000
6位・宮田和希 投 甲賀健康医療専門学校 35試1勝0敗0S1H 防4.31

 1位の中崎は広島のクローザー中崎翔太の兄。昨季限りで西武を戦力外となり、栃木ゴールデンブレーブスで選手兼コーチを務めている。野上は今季11勝を挙げ、FAで巨人に移籍。浅村は強打の二塁手としてリーグを代表する打者となっている。

○2009年
1位・菊池雄星 投 花巻東高 135試59勝42敗1S0H 防2.71※
2位・美沢将  内 第一工業大学 6試1安0本1点 0盗 打率.083
3位・岩尾利弘 投 別府大学 48試3勝0敗0S5H 防6.11 2017年戦力外
4位・石川貢  外 東邦高 26試5安0本1点3盗 打率.119
5位・松下建太 投 早稲田大学 9試0勝1敗1S0H 防御率3.48
6位・岡本洋介 投 ヤマハ 125試13勝16敗1S12H 防御率4.80※

 今では押しも押されもせぬ球界屈指の左腕に成長した菊池が6球団競合の末にドラフト1位で入団した。3位の岩尾は今季限りで現役を引退し、打撃投手へと転身。6位入団の岡本は先発、中継ぎ問わずマウンドに上がっており、今季は自己最高の6勝をマークしている。

2010年指名は上位3選手が揃って活躍する“当たり年”

○2010年
1位・大石達也 投 早稲田大学 120試4勝6敗8S10H 防御率3.19※
2位・牧田和久 投 日本通運 276試53勝49敗25S54H 防御率2.83※
3位・秋山翔吾 外 八戸大学 921試1031安72本369点 85盗 .296※
4位・前川恭兵 投 阪南大高 1軍出場なし
5位・林崎遼  内 東洋大学 55試15安0本2点0盗 .203
6位・熊代聖人 外 王子製紙 406試99安0本29点10盗 .231※

 2年連続で6球団競合の末に交渉権を確定させて大石が入団。2位の牧田が球史でも指折りのサブマリン投手として名を馳せ、今オフはポスティングシステムを利用してのメジャー挑戦を目指している。NPB屈指の打者となった秋山が3位で加わっており、上位指名3人が揃って1軍の戦力となっている“当たり年”だった。

○2011年
1位・十亀剣   投 JR東日本 157試41勝33敗3S13H 防御率3.75※
2位・小石博孝  投 NTT東日本 87試1勝5敗1S3H 防御率4.94※
3位・駒月仁人  捕 塔南高 1軍出場なし※
4位・永江恭平  内 海星高(長崎)344試48安2本17点2盗 .157※
5位・田代将太郎 外 八戸大学・71試7安1本5点3盗 .103※2017年戦力外、ヤクルトへ
育1位・藤澤亨明 捕 松本大学 1軍出場なし※

 1位の十亀は先発ローテの一角を担って2015年に11勝、今季は8勝をあげている。小石も左の中継ぎとして1軍の戦力となり、永江は守備固めでの出場が多い。田代は今オフに戦力外となったが、トライアウトを経てヤクルトへの移籍が決まった。

○2012年
1位・増田達至  投 NTT西日本 268試14勝21敗59S76H 防御率2.74※
2位・相内誠   投 千葉国際高 9試0勝5敗0S0H 防御率15.00※
3位・金子侑司  内 立命館大学 461試356安11本112点122盗 .251※
4位・高橋朋己  投 西濃運輸 159試6勝5敗52S40H 防御率2.62※
5位・佐藤勇   投 光南高 7試1勝3敗0S0H 防御率5.76 2017年戦力外
育1位・水口大地 内 香川オリーブガイナーズ 76試17安0本5点5盗 .304※

 東浜(ソフトバンク)を3球団競合を外しての1位・増田は獅子のクローザーとして今季も活躍。4位の高橋も昨季、今季と故障に苦しんだが、2014、2015年は守護神を務めている。相内は現在は「誠」で登録されている。金子は2016年に盗塁王に輝き、育成の水口も支配下登録されて1軍の戦力となっている。

2013年は、未来のライオンズ打線を担う大砲2人が入団

○2013年
1位・森友哉 捕 大阪桐蔭高 324試302安35本147点4盗 .294※
2位・山川穂高 内 富士大学 142試112安39本97点0盗 .272※
3位・豊田拓矢 投 TDK 43試2勝2敗0S2H 防御率3.83※
4位・金子一輝 内 日本大学藤沢高 1軍出場なし※
5位・山口嵩之 投 トヨタ自動車東日本 1軍出場なし
6位・岡田雅利 捕 大阪ガス 173試66安1本21点0盗 打率.226※
7位・福倉健太郎 投 第一工業大学 11試0勝0敗0S0H 防御率5.85※

 1位の森は今季、故障で出遅れたものの、8月に復帰後は勝負強い打撃でチームに貢献。すでにチームの中核を担う打者となっている。2位の山川は、今季後半戦には不動の4番として君臨した。6位の岡田は炭谷銀仁朗と正捕手の座を争う存在となっている。

○2014年
1位・高橋光成 投 前橋育英高 37試12勝17敗0S0H 防御率4.07※
2位・佐野泰雄 投 平成国際大学 23試4勝2敗0S0H 防御率4.02※
3位・外崎修汰 内 富士大学 215試140安13本57点38盗 .239※
4位・玉村祐典 投 敦賀気比高卒 1軍出場なし※
5位・山田遥楓 内 佐賀工高 1軍出場なし※
育1位・戸川大輔 外 北海高 1軍出場なし※

 1位の高橋は先発として1年目から1軍で登板しており、ローテの一角を担う存在として、そろそろ一本立ちしてほしいところ。3位の外崎は、今季、外野のポジションを獲得し、侍ジャパンの一員として「ENEOS アジアプロ野球チャンピオンシップ」でMVPを獲得する活躍を見せている。

2015年
1位・多和田真三郎 投 富士大学 34試12勝10敗0S0H 防御率3.92※
2位・川越誠司   投 北海学園大学 1軍出場なし※
3位・野田昇吾   投 西濃運輸 60試1勝0敗0S5H 防御率2.63※
4位・大瀧愛斗   外 花咲徳栄高 9試0安0本0点0盗 .000※
5位・南川忠亮   投 JR四国 9試0勝0敗0S0H 防御率5.19※
6位・本田圭佑   投 東北学院大学 7試0勝1敗0S0H 防御率5.84※
7位・呉念庭    内 第一工業大学 58試33安0本15点2盗 .202※
8位・國場翼    投 第一工業大学 2試0勝0敗0S0H 防御率0.00※
9位・藤田航生   投 弘前工業高 1軍出場なし※
10位・松本直晃  投 香川オリーブガイナーズ 2試0勝0敗0S0H 防御率0.00※

 1位の多和田は先発ローテを担う存在として1軍の戦力となり、3位の野田も中継ぎ左腕としてプロ2年間で60試合に登板している。4位の大瀧は「愛斗」で登録され、将来を期待されている外野手である。サッカー日本代表選手と同姓同名として注目された本田も台頭が期待されている投手だ。

2016年
1位・今井達也 投 作新学院高 1軍出場なし※
2位・中塚駿太 投 白鴎大学 1試0勝0敗0S0H 防御率27.00※
3位・源田壮亮 内 トヨタ自動車 143試155安3本57点37盗 .270※
4位・鈴木将平 外 静岡高 1軍出場なし※
5位・平井克典 投 Honda鈴鹿 42試2勝0敗0S4H 防御率2.40※
6位・田村伊知郎 投 立教大学12試0勝0敗0S0H 防御率6.91※

 なんといっても、3位の源田だろう。ルーキーイヤーから全試合出場を果たし、文句なしの新人王を獲得した。夏の甲子園優勝投手の今井が1位だったが、右肩痛の影響などで1軍デビューはお預け。5位の平井も中継ぎ投手として1年目からフル回転した。ルーキーイヤーの今季、いきなり6人中4人が1軍デビューを果たしている。

○2017年
1位・斉藤大将  投 明治大学
2位・西川愛也  外 花咲徳栄高
3位・伊藤翔   投 徳島インディゴソックス
4位・平良海馬  投 八重山商工高
5位・與座海人  投 岐阜経済大学
6位・綱島龍生  内 糸魚川白嶺高
育1位・高木渉  外 真颯館高
育2位・齊藤誠人 捕 北海道教育大学岩見沢校

 西武は、FA宣言をした選手は引き留めず、移籍を認めている。その分、生え抜き選手を一人前に育てることで戦力を維持しているように感じる。そうした「育成の伝統」が、活きていると言えよう。(広尾晃 / Koh Hiroo)